AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science January 25, 2008, Vol.319


宇宙塵の起源を吟味する(Dissecting Stardust Origins)

最近、スターダスト探査計画は、ある知られた彗星から採取された試料を初めて持ち帰った。これらの試料は、惑星間塵(interplanetary dust particles:IDPs) に似ている可能性があると考えられていた。というのは、惑星間塵もまた彗星を起源とし、地球の成層圏やそのほか極地方の氷の中といった場所で採取されたと考えられているからである。Ishii たち (p.447; Kerr によるニュース解説を参照のこと) は、スターダスト探査計画からのケイ酸塩と IDPからのケイ酸塩鉱物の粒子とを、直接比較して、上記の考えは正しくないことを示している。代わって、Stardust 飛行からの試料は隕石からの粒子に似ている。これらの発見は、小惑星と彗星との間にはある連続性があることを示唆していること、そして、少なくともこの彗星は、外部太陽系からの物質を多くは有していないこと、更にIDP は太陽系のなかでもっとも始原的な残存物質の可能性を示唆している。(Wt,tk,nk)
Comparison of Comet 81P/Wild 2 Dust with Interplanetary Dust from Comets
p. 447-450.

偶数と奇数のスピン操作(Spinning Odds and Evens)

電子スピンの総量が反応経路の途中で変化しなければならない場合には、通常反応全体の完了には非常に長い時間がかかる。Burgert たち(p. 438)は、このスピン保存則は、直接的に〜10から20個のアルミ原子からなる一連の微小な陰イオン金属クラスターにも当てはまることを示した。以前の研究では、Aln-クラスターと酸素の反応性においてクラスター原子数が偶数と奇数とで反応率が交互に上下するという奇妙な現象観察されていた。著者たちは、このクラスターにHを付加したり、O2分子の励起状態を変えたりして、両者のスピン状態を変化させ、クラスター反応においてもスピン選択則が反応率に大きな影響を有することを示す質量分析データを得た。(Ej,hE,nk)
Spin Conservation Accounts for Aluminum Cluster Anion Reactivity Pattern with O2
p. 438-442.

ダングリングボンドのダイナミクス(Dynamics of a Dangling Bond)

機能材料と機能デバイスの開発と最適化のためには、物質のキャリア輸送特性の特徴を十分に解析することが大切である。デバイス構造のサイズが小さくなるにしたがって、マクロ的な解析技術はもはや有効でないかもしれない。Bertheたち(p.436,12月13日にオンライン出版)は、シリコン(Si)における局在化した状態、つまりダングリングボンドによる非弾性トンネリング電子の輸送について調査し、局所的なミクロな環境がその輸送特性をどのようにして変化させているかを観察している。(hk,KU)
Probing the Carrier Capture Rate of a Single Quantum Level
p. 436-438.

地殻に関する問題(Core Problem)

マントルについての地球化学に関する主要な問題の一つは、マントル由来の物質中に外核の同位体、あるいは、化学物質の痕跡を見つけることである。ハワイの岩石中のオスミウムの同位体比の異常は、マントル深部プルームによって核から地表へと物質が昇ってくる可能性を支持する議論に利用されてきた。しかし、この解釈には異論が多く、これを支持する他の証拠が少ない。Luguet たち(p. 453; および、Meibomによる展望記事参照)は、これに代わってOs比の異常は核から漏れ出たと考える必要性はないことを実証した。硫化物によって Pt-Os 及び Re-Os系の分配に影響を及ぼし、その結果マントル内でOs比の異常が生じる。(Ej,hE,nk)
Enriched Pt-Re-Os Isotope Systematics in Plume Lavas Explained by Metasomatic Sulfides
p. 453-456.

反応器の中を見る(A Look Inside Reactors)

多くの工業的に重要な化学反応は固体触媒が詰め込まれた中をガス状の化合物が流れる系で行われる。このような不均一な環境の最適化には、流れのパターンの詳細なマッピングや、反応部位の分布を知ることからの恩恵は大きいが、多くの場合、十分な感度のプローブが無いのが現状である。Bouchard たち(p. 442)は、 H2のパラ 核スピン異性体の信号増強によって、普通は液体試料が必要な磁気共鳴画像法が、マイクロリアクターのガス-固体界面という希薄な環境下でも利用できることを示した。彼らは、プロピレンからプロパンへの水素添加を検出し、正確に時間制御したパルス列との連携によるρ-H2を用いることで、流れの速度と活性化した触媒密度のプロファイルを直接可視化した。(Ej,hE,KU,nk)
NMR Imaging of Catalytic Hydrogenation in Microreactors with the Use of para-Hydrogen
p. 442-445.

短波長のフォトニクス (Short-Wavelength Photonics)

レーザーダイオード出力波長の青−紫外域への短波長化により、Blue-rayディスクのような高密度記録媒体を実現可能にした。これら技術の根幹であるレーザーダイオードはGaNバルク結晶から通常作られる。Matsubaraたち(p.445, 12月20日のオンライン出版)は、既に赤外域での面発光レーザーを実現したフォトニッククリスタル技術を用いて、青−紫外域まで短波長化できることを示した。波長および偏光モードをコントロールできるため、さらなる高密度記録が期待できる。(NK)
GaN Photonic-Crystal Surface-Emitting Laser at Blue-Violet Wavelengths
p. 445-447.
   

マントル軟化の兆し(Soft Mantle Signature)

下部マントルは600キロから約2900キロの深さに広がっており、この大部分においてperovskite と ferropericlaseの2つの主要鉱物を含んでいる。両鉱物ともいくらかの鉄を含み、1300キロ以下の深さにおいては、鉄のスピン対が変化してこれら鉱物の物性が変化する。Crowhurst たち(p. 451)は、高圧でferropericlaseの遷移している期間に渡ってその剛性を測定した。遷移の間、深さが増すに従って地震波伝播速度の意味で鉱物は柔らかくなり、鉄含有量が増加するに従ってより顕著になる。これらのデータは、この深さの地震波には、はっきりした相転移の特徴がないこと、および、より下部マントルでの地震波の特徴を説明する助けになるかも知れない。(Ej,hE,og)
Elasticity of (Mg,Fe)O Through the Spin Transition of Iron in the Lower Mantle
p. 451-453.

メスの好みが変わる(The Inconstant Female)

メスの選択が性的な自然淘汰により進化を促進すると考えられている。メスは、常にオスの形質に関して不変的な好みを示すものと推定されてきた。Chaine and Lyon(p.459; 表紙参照)はホオジロ鳥における長期にわたる性の選択に関する研究から、数年という長さで見ると、オスの形質に関するメスの好みは揺れ動くことを見出した。この発見は、性的な自然淘汰のもとでの形質の安定性と多方向に渡るオスの性的装飾の進化と言う二つを説明する。短期間での表現型の選択に関する解析では、性的な自然淘汰に関する方向性を見誤る可能性があり、このことは以前の矛盾した知見を説明するものであろう。(KU,nk)
Adaptive Plasticity in Female Mate Choice Dampens Sexual Selection on Male Ornaments in the Lark Bunting
p. 459-462.

速い周期と遅い周期(Fast and Slow)

遺伝子転写の間、幾つかの活性化タンパク質が、〜30秒周期(速い周期)或いは〜30分周期(遅い周期)でもってプロモータに周期的に結合している。Karpovaたち(p.466)は、これらの異なる周期性が別々のものであるが、しかしながら同じ転写活性化因子が二つの周期的活性化において同時に同一のプロモータに作用していることを示している。速い周期は転写開始に関与しており、一方遅い周期は開始に関与するたくさんのプロモータを調節しているらしい。(KU)
Concurrent Fast and Slow Cycling of a Transcriptional Activator at an Endogenous Promoter
p. 466-469.

T細胞活性化におけるタンパク質Homerの役割(Homering in T Cell Activation)

免疫系において、T細胞はT細胞受容体(TCR)と同時刺激の細胞表面の受容体、中でも最も顕著なるCD28から生じるシグナルによって刺激される。CD28のシグナルはその後に続く免疫応答に大きく影響する--CD28の無いときのTCRの刺激は不応答の、永久的な不活性状態になる。Huangたち(p.476)は、T細胞に対する別の経路が細胞質の二つの足場タンパク質、Homer2とHomer3によって調整されているという証拠を与えている。このタンパク質が無いと、主要なサイトカイン転写制御因子NFAT(nuclear factor of activated T cells)の未知の活性化やサイトカイン発現の上昇、および明瞭なるT細胞反応を引き起こす。このように、ダイナミックな決定メカニズムにより、T細胞が活性化するか、或いは不活性となるかどうかが決められる。(KU,so)
NFAT Binding and Regulation of T Cell Activation by the Cytoplasmic Scaffolding Homer Proteins
p. 476-481.

タンパク質Auroraの活性化(Activating Aurora)

真核生物における細胞分裂には、その多くの成分の厳密なる空間的、時間的な制御が必要となる。染色体のパッセンジャ複合体(CPC)の成分であるAurora Bキナーゼは、娘細胞への染色体分配の制御において決定的な役割を果たしている。Aurora B自身の活性はどのように制御されているのか?Rosasco-Nitcher(p.469)は、Aurora Bがタンパク質テレオファゼディスク60-kD(TD-60)により幾つかのレベルで制御されていることを示している。TD-60は、Aurora Bと同じく細胞分裂中に内部セントロメアで見出されている。TD-60との相互作用により、CPCをセントロメアに運び、そして微小管との結合によりAurora Bを活性化する。更に、Aurora Bは前もってリン酸化された基質にのみ作用し、このリン酸化は、又、TD-60によって増強される。このように、TD-60の作用は、高レベルのAurora Bの活性がセントロメアでのみ起こるように保証するものであろう。(KU)
Centromeric Aurora-B Activation Requires TD-60, Microtubules, and Substrate Priming Phosphorylation
p. 469-472.

酵母は変化にどう応答するか(How Yeast Responds to Change)

環境のモル浸透圧濃度の変化に対して、酵母細胞が急速に適応応答できるその起源は、これまではっきりしていなかった。Mettetalたちはこのたび、細胞外のモル浸透圧濃度の増加が高いモル浸透圧濃度のグリセリン・シグナル経路を活性化していて、これが特定の標的遺伝子の転写を変化させている、ということを示している(p.482; またLipanによる展望記事参照のこと)。イオン強度を増しつつ培地のパルスに対する細胞応答を測定することによって、著者たちは、この制御系の動力学についての予測モデルを開発することができた。浸透圧ショックへの応答の核心にあるとしばしば示唆されてきた遺伝子発現の変化ではなく、むしろ、この速い応答は実際にグリセリン輸送の変化を含む非転写性の応答によって支配されているのである。(KF)
The Frequency Dependence of Osmo-Adaptation in Saccharomyces cerevisiae
p. 482-484.

問題の根(Root of the Problem)

土壌には、大気に含まれる炭素の3倍以上、また地表レベルより上にある陸生バイオマスの含む炭素の4倍もの炭素が含まれている。地表以下にある炭素のうち、もっとも大量にあるタイプの1つが、微細な根に含まれるものである。細根組織の寿命がどのくらい長いかを理解する問題は、植物生理学の領域においての明らかな重要性は別として、今後のより暖かい、より二酸化炭素の多い世界で、土壌がどのくらい効率的な炭素貯蔵庫になりうるかを理解するためにも重要である。Strandたちは、微細な根の炭素の保持時間を決定するために用いられている2つの違った技術について検討した(p. 456)。1つの方法は、炭素の同位体組成の分析に基づいたものであるが、炭素の代謝回転を体系的に少なめに見積もってしまうし、もう1つは、カメラで直接根を観察するもので、代謝回転を多めに見積もってしまう。この2つのアプローチは違ったプロセスを測定しているので、折り合いが付かないのである。(KF,nk)
Irreconcilable Differences: Fine-Root Life Spans and Soil Carbon Persistence
p. 456-458.

サイレンス、反復、サイレンス(Silence, Repeat, Silence)

ゲノムにみられる反復配列は、トランスポゾンを活性化する故に、潜在的に危険な組換えを促進し、これは、又、自分自身が挿入された遺伝子を破壊して変異の原因となる。そうした望ましくない要素は、DNAメチル化と不活性異質染色質への封入によって不活性化されている。Sazeたちは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)におけるスクリーニングによって、DNAメチル化と異質染色質の近くの遺伝子への入り込みを防ぐ仕組みを同定した(p. 462)。1つの遺伝子、BONSAIメチル化の増加(IBM)と呼ばれるものがこの経路で作用していて、これがヒストンH3リジン9(H3K9)脱メチル化酵素を表しているらしい。IBMはH3K9メチル化を除去することによってサイレンシング標識の伝播に抗していて、これが根底にあるDNAメチル化を導いている可能性がある。(KF,KU)
Control of Genic DNA Methylation by a jmjC Domain-Containing Protein in Arabidopsis thaliana
p. 462-465.

わからないことを知ること(Knowing the Unknowns)

ある遺伝子を別の遺伝子と比較して、2つの遺伝子が同じ祖先に由来するものであるかどうかを決定することは難しい。その比較がいっぺんに何千もの遺伝子、あるいはゲノム全体にわたる場合には、それぞれの比較の結果が大きく異なるので、なおさら難しいことになる。Wongたちは、膨大な自動化されたゲノム進化の研究を分析し、根底にある比較プロトコルが、遺伝子の並びの不確定さについての見積もりを排していることによってまずいことになっている、ということを示唆している(p. 473; またRokasによる展望記事参照のこと)。ゲノム全体にわたる比較は、もし不確定さの尺度が分析の一部に含まれていれば、いまよりずっと価値をもちうるのである。(KF)
Alignment Uncertainty and Genomic Analysis
p. 473-476.

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