AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science March 2, 2007, Vol.315


種の爆発に対する秩序の導入(Bring Some Order to an Explosion)

Lophotrochozoa(ロフォトロコゾア/冠輪動物)は、軟体動物、昆虫、椀足動物、bryazoan、その他いくつかの動物を含むが、カンブリアの種の爆発では大きな役割を演じた。彼らの起源や先祖間の関係は良く判ってないが、カンブリア紀の進化の速度と大きさに関係がある。鍵になるのは、典型的にはhalkieriidsやwiwaxiidsに属するBurgess Shaleに見られる謎のロフォトロコゾア (lophotrochozoans) だ。Conway MorrisおよびCaron (p. 1255)は、Burgess Shaleから得られた新規な化石種のいくつかについて記述したが、これはこれら2種を統合し軟体動物の初期の進化を意味すると思われる。(Ej,hE)
Halwaxiids and the Early Evolution of the Lophotrochozoans
p. 1255-1258.

ハリケーンの強さを洞察する(Insights into Hurricane Intensity)

ハリケーンがその寿命が尽きるまでに強度をどのように変化させていくかを予測することは困難であるが、その理由の一つはこの暴風の内部構造がどのように進化するかを予測することが困難なことにある。Houze たち(p.1235; Willoughbyによる展望記事も参照)は、このプロセスで重要な要素となっている眼の交替(eyewall replacement: 壁雲でできたハリケーンの眼が、新しく生じた小さな眼と交替すること)について検討した。彼らはハリケーンRitaにおいて、高解像の空中レーダー像と共に、風速、温度、湿度、気圧の観測データを眼の交替サイクルに沿って非常に詳しく記録し、このプロセスの概念的モデルを作り上げた。彼らはまた、ハリケーンの小規模の構造のデータが、どのように強度変化の予測精度の改善に結びつくかを示唆した。(Ej,hE)
Hurricane Intensity and Eyewall Replacement
p. 1235-1239.
ATMOSPHERE: Forecasting Hurricane Intensity and Impacts
p. 1232-1233.

基礎方程式から導いたバルクの水の理論(Water from the Ground Up)

水分子の単純な構造からは、液体の水が有する極めて複雑な相互作用は想像もできない。一般的には、液体の水の理論的解析には、実験的に得られるパラメータを、少なくとも部分的には、含むポテンシャルエネルギー関数が必要である。Bukowski たち (p. 1249; Stoneによる展望記事参照) は、実験的データを一切含まず、量子力学的相互作用の力だけから純理論的に算出されたポテンシャルエネルギー関数を導いた。この関数を利用して、彼らは水二量体の高精度の吸収スペクトルを得、かつ、動径分布関数とバルクの液体の熱力学的性質をかなりうまく再現できた。(Ej,hE,nk)
Predictions of the Properties of Water from First Principles
p. 1249-1252.
CHEMISTRY: Water from First Principles
p. 1228-1229.

先鋭な焦点を結ぶ電子(Electrons in Sharper Focus)

電磁放射線に対して負の屈折率となるメタ物質は、通常の回折限界より小さい対象を写し出すために作られていた。このような物質は、極超焦点を結ぶ“完全レンズ”が創れるはずであると考えられていた。 Cheianovたち(p. 1252;Pendryによる展望参照)は、電子流に関する完全レンズと負の屈折の原理を説明している。彼らは、一方がp-型で他方がn-型である電気的接合面を形成するグラフェンシートにより、電子の流れがpn接合を通過する際に、その流れを焦点に集める事ができることを理論的に示している。彼らは、このような効果によって電子ビームスプリッターやレンズのような電子光学分野における新規な応用を生み出せると主張している。(hk,KU)
The Focusing of Electron Flow and a Veselago Lens in Graphene p-n Junctions
p. 1252-1255.
PHYSICS: Negative Refraction for Electrons?
p. 1226-1227.

太陽を追跡するための塔(Towers to Track the Sun)

考古学的な遺跡と記載された記録や伝承記録文献の双方から、インカ人は、およそ500年以前に注意深い太陽観測を行なっていたことが判っている。しかし、もっと以前の観測活動の証拠は、これまで得ることができなかった。Ghezzi と Ruggles(p.1239; Mann によるニュース記事を参照のこと) は、2400年前まで年代を遡る13個の一連の石の塔について記述しており、これらの石がペルー沿岸の神殿の中心にある丘に沿って南北へ整列している 。彼らは、これらの塔が一年の間の日の出と日没の太陽が描く弧をマーキングしており、数日の誤差を有するカレンダーの役割を果たしていたことを示している。このように、これらの塔とその周囲の神殿は、明らかに太古の太陽観測所としての役割を果たしていた。(Wt,nk)
Chankillo: A 2300-Year-Old Solar Observatory in Coastal Peru
p. 1239-1243.

有機エアロゾルの進化(Organic Aerosol Evolution)

都市の有機エアロゾルのほとんどは、化学的に天然由来で、従って発生源が定まり、本質的に静的と考えられてきた。Robinson たち(p. 1259) は、観察とモデルを結合し、有機エアロゾルの生活史は考えれていた以上に複雑で、多くの粒子は、蒸発、光酸化、再凝集のサイクルを繰り返していることを示した。現在の有機エアロゾル分布の理論は、多くの場合観察結果と整合するが、偶然に正しい解答になる可能性もある。この改良モデルによる有機エアロゾルの挙動の理解は、測定法や排出を規制するやり方を大きく変えることになるかも知れない。(Ej,hE)
Rethinking Organic Aerosols: Semivolatile Emissions and Photochemical Aging
p. 1259-1262.

人の臭い感覚を回復させる(Rejuvenating the Human Sense of Smell)

神経前駆体からの活発な神経発生は、殆どの哺乳類の中枢神経系の別々の領域で生涯を通じて継続している。しかしながら、ヒト成人の神経発生は未だ議論の余地のある問題である。成人の神経発生の徴候は海馬において報告されているが、ゲッ歯類で報告された第2の神経原生のニッチは最近のヒトの研究では見出されていない。しかしながら、今回複数の技術を用いて、Curtisたち(p.1243、2月15日のオンライン出版;表紙参照)は、この行方不明の吻側遊走流(rostral migratory stream)を詳細に記述しているだけでなく、この遊走流が側脳室の管状の広がりの周りで組織化され、嗅球に達しているていることを示している。(KU)
Human Neuroblasts Migrate to the Olfactory Bulb via a Lateral Ventricular Extension
p. 1243-1249.

原核生物のDNA分離(Prokaryotic DNA Segregation)

原核生物のアクチン様タンパク質、ParMは動的には不安定であり、DNA分離においてある役割を果たしていると考えられている。Garnerたち(p.1270)は精製した成分を用いて、in vitroでのDNA分離に関する完全なる再構築を行った。DNAとDNA-結合タンパク質と一緒になって、ParMは双極性の紡錘を形成し、これにより方向性を持ったDNAの動きを促進し、更にin vivoでのDNAの動きが説明できる。かくして、動的なフィラメントタンパク質が原核生物におけるDNAの動きを仲介している。(KU)
Reconstitution of DNA Segregation Driven by Assembly of a Prokaryotic Actin Homolog
p. 1270-1274.

薬物、ドーパミン、それと性質(Drugs, Dopamine, and Disposition)

薬物乱用に関する個人差は異なる行動面の性格と生理学的特質を反映している。Dalleyたち(p.1268)は、対照群と比べて、生来の衝動的行為に走るラットが、コカイン投与前ですら側坐核においてドーパミンD2/3受容体が減少していることを見出した。ラットにおけるこの衝動的な性格が、結果として静脈内へのコカイン投与の割合を多くする前兆である。このように、衝動性が薬物乱用に陥る重要なメディエータであり、慢性的な薬物投与の結果ではない。(KU)
Nucleus Accumbens D2/3 Receptors Predict Trait Impulsivity and Cocaine Reinforcement
p. 1267-1270.

メタボリックシンドロームのその心臓は?(The Heart of Metabolic Syndrome?)

冠動脈疾患(CAD)の患者は、しばしば付随的に高血圧症や糖尿病、更に異常に高いコレストロールとトリグリセリド値を示す。このような危険因子を持つ多様なグループは、まとめて「メタボリックシンドローム」と呼ばれるが、しかしながらこれらの疾患を結び付けている基本的な分子的メカニズムは未だ良く理解されていない。Maniたち(p.1278)は、早発性のCADに関する稀な遺伝性のファミリーにおいてその原因となる変異を同定し、これによりメタボリックシンドロームの多くの特徴を同時分離するものである。その元凶となる遺伝子は、低密度のリポタンパク質受容体に関連したタンパク質6(LRP6)をコードしており、このタンパク質はWnt細胞シグナル伝達経路における共受容体である。(KU)
LRP6 Mutation in a Family with Early Coronary Disease and Metabolic Risk Factors
p. 1278-1282.

輸送タンパク質の再構成(Reconstituting Transport Proteins)

膜輸送タンパク質でその結晶構造がわかっているごく少数のものは、一般に、膜に対して垂直になっている軸、あるいはさらに驚くべきことに膜平面中の軸のいずれかで内部対称性を示す。第1のクラスの輸送体は、同じ膜形態を示す構造的に同じ領域を2つ含んでいて、これによって偶数(2n)個の膜貫通らせん体を生み出しているが、第2のクラスの輸送体は逆向きに配向した領域があり、奇数(2n+1)個のらせん体をもっている。細菌性薬剤流出ポンプEmrEに段階的修飾を施すことで、Rappたちは、機能的二量体が、どちらかの膜形態をもつ単量体(n個のらせん体を含む)からいかにして進化したかを示している(p. 1282、1月25日にオンライン出版; また、Poolmanたちによる展望記事参照のこと)。(KF)
Emulating Membrane Protein Evolution by Rational Design
p. 1282-1284.
BIOCHEMISTRY: A Missing Link in Membrane Protein Evolution
p. 1229-1231.

病原性への局所的影響(Local Affects on Virulence)

公衆衛生という目的のため、感染症の制御には、寄生虫の感染力と病原性が選択されていくプロセスについての明瞭な理解が必要である。1つの鍵となる仮定は、徐々に混じりあっている集団に局所的に循環している寄生虫は、感染性も病原性もより低い方に進化していくというものである。逆に、宿主-寄生虫世界がより結びつきを強め、集団がより深く混じりあうにつれて、より危険性の高い寄生虫の系統が選択されていく。 BootsとMealorはこの最初の仮定を、毛虫に感染するウイルスを用いて容易に操作できる系においてテストし、移動性のもっとも低い宿主集団がもっとも感染性の低いウイルス系統を宿す、ということを検証した(p. 1284;またBucklingによる展望記事参照のこと)。(KF)
Local Interactions Select for Lower Pathogen Infectivity
p. 1284-1286.
EPIDEMIOLOGY: Keep It Local
p. 1227-1228.

シナプス増強のバリエーション(Variation on Synaptic Potentiation)

連合性学習に結び付くシナプスの変化については、よく知られている。Lamsaたちは、ラットの海馬切片に含まれるいろいろな型の介在ニューロンにおける長期シナプス可塑性を検討した(p. 1262)。彼らは、異常な特徴を示す長期増強(LTP)の誘導ルールを発見した。知られている可塑性の形態とは対照的に、過分極でシナプス入力を対形成すると、LTPが生じるが、脱分極でそれを対形成すると、LTPが妨げられる。(KF)
Anti-Hebbian Long-Term Potentiation in the Hippocampal Feedback Inhibitory Circuit
p. 1262-1266.

インターフェロンによる妨害(Interfering with Interferon)

ウイルス感染への初期の宿主応答は、I型インターフェロン(IFN α/ β )によって制御されているが、それらはウイルス特異的な産物が検出された後のことである。それに引き続く転写反応はヤヌス・キナーゼ-シグナルトランスデューサと転写(JAK/STAT)経路の活性化因子によって仲介され、これはインターフェロンによって刺激されたある範囲の遺伝子(ISG: terferon-stimulated genes)の転写を制御するものである。IKK関連キナーゼTBK(TANK-結合キナーゼ)とIKK ε(核因子κBキナーゼの阻害薬の1つ)はまた、IFN β経路の複合的成分でもある。しかしながら、tenOeverたちは、IKK εを欠くマウスにはウイルス感染に対する感受性があるが、この感受性はIFN βの発現の損失のせいではない、ということを明らかにしている(p. 1274)。むしろ、この欠陥は、IKK εがSTAT-1のホモ二量体化をそのリン酸化によって防ぐという、予期しない下流からの効果のために生じたものである。代わりに、STAT-1は別のISG集合を転写するへテロ三量体複合体に取り込まれるのである。(KF)
in Interferon-Mediated Antiviral Immunity
p. 1274-1278.

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