AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science May 6, 2005, Vol.308


スプライシング・ダイサー(Splicing Dicer)

小さな非コーディングのマイクロRNA(miRNA)は、遺伝子機能の潜在的制御因子で あり、無脊椎動物における特定の発生過程に影響を及ぼすことが示された。魚およ びマウスにおいて、miRNAの産生における重要な酵素であるDicerのヌルアレレ(無 効対立遺伝子)により、胚は致死性となる。Giraldezたち(p. 833、2005 年3月17 日のオンライン出版)は、母性-接合体のDicer(MZ Dicer)を取り除き、Dicerリボ ヌクレアーゼIIIと二本鎖RNA結合部位を破壊する変異母性-接合体のDicerにより、 ゼブラフィッシュにおいて成熟miRNAを除去した。これらの胚はパターン化、および 細胞運命の特異化においては明白な異常を示さなかったが、しかしながら形態形 成、特に脳の形態形成においては重度の欠損を示した。この変異体に対して、発生 のあいだに制御されたmiRNAのファミリー分子を注入することにより、脳の形態形成 が回復した。(NF)
MicroRNAs Regulate Brain Morphogenesis in Zebrafish
p. 833-838.

励起子モデルが勝る(Excitons Prevail)

材料が1次元に閉じ込められたとき、その電子バンドの構造はファン・ホーヴェ特 異点と名付けられている特長を示す。この特異点は単層カーボンナノチュー ブ(SWNT)のような材料が示す急峻な吸収スペクトルを説明するために採用された。 このモデルは海のように広がった自由電子と正孔の光励起状態を予言している。し かしながら、最近、励起子モデルを支持するデータが浮上しており、そのモデルで は光吸収により励起電子が生成され、この励起電子が励起電子の後に残った正孔と 強い相関を持っている。Wangたち(p.838)は、孤立したSWNTにおける励起子モデルの 正しさを明白に証明した。彼らの実験は、励起子が1光子吸収と2光子吸収のどち らかで生成しているという選択則を利用している。2光子スペクトルは0.5 電子ボ ルトに近い励起子の結合強度と一致する。これはバルクな半導体より高い電子ボル トをもつ。(hk)
The Optical Resonances in Carbon Nanotubes Arise from Excitons
p. 838-841.

晴れた日が示す事柄(Implication of Sunny Days)

過去40年間の殆どの期間で、地球表面に届く太陽光の量、即ち日射量が大きく減少 したという直接的な、或いは間接的な証拠を示す数多くの研究が報告されている。 どの程度日射量が変化したのか、何故変化したのかはあまりよく理解されていな い。Pinkerたち(p.850;Charlsonたちによる展望記事参照、及びWielickiたちによ る関連速報参照)は、1983年から2001年に至る日射量に関する衛星記録を解析し、 その記録の最初の部分では減少を示し、1990年前後に減少傾向が逆転し、その後は さらに増加傾向が強まったと結論付けた。Wildたち(p.847)は1990年からの地表での 観測に基づいた大量の測定データを調査して、最近の上昇傾向を確認している。こ のような日差しが弱かったり、その後日差しが強かったりということは雲の被覆の 程度や大気エアロゾルの量や、或いは活火山噴火による大気の透明度の変化に起因 している可能性がある。日射量の変化は高緯度と低緯度からの無数の古記録の中に も明瞭であるが、世界の総ての所で同時に起こったものではない。この応答性に関 する特性とタイミングの差異は、その非同調性をもたらすメカニズムを解く重要な 糸口になると考えられている。Wangたち(p.854;Kerrによるニュース記事参照)は、 アジアのモンスーンの強さを示す代用特性と考えられている南中国のDongge洞窟か らの石筍の酸素同位体変化に関する正確な年代記録を示している。彼らのデータ は、完新世の始めに近い9000年前に遡のぼるもので、モンスーンの強さと太陽の出 力変化の間での重要なる相関を明らかにしている。彼らは、又、Dongge洞窟の記録 がグリーンランドから得られた気候記録といかに関連しているかを、そしてアジア のモンスーンを支配しているそのメカニズムに関する手がかりを議論してい る。(KU,Ej,nk)
Do Satellites Detect Trends in Surface Solar Radiation?
p. 850-854.
ATMOSPHERIC SCIENCE:
In Search of Balance

p. 806-807.
Changes in Earth's Albedo Measured by Satellite
p. 825.
From Dimming to Brightening: Decadal Changes in Solar Radiation at Earth's Surface
p. 847-850.
The Holocene Asian Monsoon: Links to Solar Changes and North Atlantic Climate
p. 854-857.
ATMOSPHERIC SCIENCE:
Changes in the Sun May Sway the Tropical Monsoon

p. 787.

遺伝子スクリーニングの還元主義的アプローチ(A Reductionist Approach in Gene Screening)

脊椎動物におけるWntまたはショウジョウバエにおけるWinglessなどの細胞のシグ ナル伝達経路は、これまで、少しずつ細切れの情報をつなぎ合わせることにより全 貌が明らかになってきた。技術的な進展により、現在では、そのような制御システ ムに寄与する産物を生み出す遺伝子を、より完全にプローブ化することができ る。DasGuptaたち(p. 826、2005年4月7日にオンライン出版;FearonとCadiganによ る展望記事、ならびにオンライン論文にリンクが張られているサイエンス誌のSTKE に掲載されているシグナル伝達経路の関係図を参照)はショウジョウバ エ(Drosophila)細胞において、ハイスループットのスクリーニング法を設計し、 ほぼすべての遺伝子(約22,000遺伝子)発現をRNA干渉により一つ一つ減少したさい のWinglessシグナル伝達に関する作用を評価した。同定された238個の遺伝子には、 シグナル伝達経路の既知の構成要素が約15個含まれていた。残りのグループには、 既知の機能を有するが、これまではWinglessシグナル伝達と関連づけられていな かったほぼ同数の遺伝子が含まれていた。関与する遺伝子の半数はヒトにおけるオ ルソログを有しているようであり、これらのヒト遺伝子のかなりの割合が疾患に関 連する変異を示している。(NF,KU)
Functional Genomic Analysis of the Wnt-Wingless Signaling Pathway
p. 826-833.
CELL BIOLOGY:
Wnt Signaling Glows with RNAi

p. 801-803.

流れに従わない(Not Going with the Flow)

海洋の微小な動物プランクトンは、海流の動きにかかわらず一定の深度に棲んでい る。Geninたち(p.860)は、これらの微生物が、上昇あるいは下降する海流に逆らい 毎秒10身長に達する速度で泳ぐことにより位置を保っていることを示した。高周波 数マルチビームソナーを用いて、30万匹を越える動物プランクトンの運動を個々に 追跡した。著者たちは、こうしたフィールド測定とシミュレーションモデルとを組 み合わせ、この挙動によって餌場となる密集した動物プランクトンの集積が作られ ることを示した。(TO,nk)
Swimming Against the Flow: A Mechanism of Zooplankton Aggregation
p. 860-862.

マグマの温度を維持する(Maintaining Magma Temperatures)

地球最古の岩石は約40億年前の年代までしかないが、それらの中の数個には堆積層 の循環したジルコン(zircon)を含んでいる。これらの鉱物は、44億年前あるいは地 球の年代に近い過去の初期マグマの中で形成され、そして初期地球の環境の手がか りを提供する。WatsonとHarrison(p.841)は、ジルコンに含有するチタニウ ム(titanium)から、マグマの温度を突き止める方法を開発して、実験データとすで に判明している、或いは独自に補正された温度を持つマグマの調査を用いて、この 温度計を補正した。彼らは、水分が豊富なマグマほどより低温である傾向があるこ とを発見した。この発見を太古のジルコンに適用し、太古のジルコンは今日と同じ ような温度と水分含有量を持つマグマから形成されたことを示した。このように、 発生期の地球(nascent Earth)は今日のマグマと比べて熱くはない花崗岩マグ マ(granitic magma)を生成していたと考えられる。(TO)
Zircon Thermometer Reveals Minimum Melting Conditions on Earliest Earth
p. 841-844.

熱いのが好きな奴もいる(Some Like It Hot)

酵素の高効率は工業用触媒として魅力的である。そのためには、多くの用途で、高 温度で機能し、活性を保った耐熱性酵素を設計する必要があるが、これはきわめて 困難な目標である。すなわち、選択圧力によって分かった耐熱性酵素は110℃までの 変性温度(denaturation temperature)を持ち、それらのタンパク質は中温度から高 温度を好む細菌に特徴的な位相構造を示している。耐熱性の鍵となるメカニズム は、コンピュータデザイン手法で得られた構造を補足する、タンパク質コア内部の アミノ酸の相互作用の最適化に依存しているように見える。Korkegianたち(p. 857) は、コンピュータによる計算によって、触媒作用効率を保ったまま、顕著に耐熱性 を持つシトシン 脱アミノ酵素 (CD)の3つの変異構造を突き止めた。CDは、活性を 持った2量体であり、複雑な折り畳み挙動を示すため、有望なモデル系である。細菌 を再設計して、この構造を持たせた酵素は、活性酵素に必要とされる条件下で、よ り大きな温度依存性の成長を示した。(Ej,hE)
Computational Thermostabilization of an Enzyme
p. 857-860.

燃料電池の改質(Reforming Fuel Cells)

燃料電池のための水素は、少なくとも短期的には、改質と呼ばれる過程を経て、炭 化水素を源として得られる水素から、結局はもたらされることとなろう。この過程 は、熱が必要であるため、もし、このステップが車両に「搭載」された形で完結で きるのならば、燃料電池の反応で供給される熱を利用して、効率を上げることが可 能となる。しかしながら、炭化水素の処理方法として、このような方法が可能な固 体酸化物膜の燃料電池ではニッケル陽極をもちいており、この電極は未反応炭化水 素付着膜の「コークス化」現象により不活性化されやすい。 Zhan と Barnett (p.844, 2005年3月31日のオンライン出版) は、陽極上に配置された改質 層(CeO/RuO)を用いた固体酸化物燃料電池の作成と操作について記述している。この 改質層は、イソオクタン燃料が陽極に到達する前に COとH2とを生成す る。彼らは、パワー密度として 0.3〜0.6W/cm2 の出力密度を達成して いる。(Wt,KU)
An Octane-Fueled Solid Oxide Fuel Cell
p. 844-847.

完全な対合のために(Swapping Partners for Perfect Pairing)

減数分裂は、真核細胞における特殊な"二段階の"細胞分裂であり、結果として二倍 体の親細胞から一倍体の(生殖)細胞を形成する。相同染色体は、第一分裂中に対 合しなければならず、その結果として相同染色体を2つの娘細胞に均等に分離するこ とができる。TsubouchiとRoeder(p. 870)はここで、予想に反して、染色体の非相 同的な対合が、減数分裂初期に形成されることを示した。減数分裂が進行するにつ れて、非相同的な対合は、相同的な対合に転換されていき、それにより染色体の正 確な分離が保証される。(NF)
A Synaptonemal Complex Protein Promotes Homology-Independent Centromere Coupling
p. 870-873.

空間的記憶マップ(Spatial Memory Maps)

アトラクター・ネットワークは、記憶の神経機構についての主要な仮説とされてき た。ラットが2つの類似の環境を探索するとき、場所細胞と呼ばれるニューロンがそ れらを区別することを学習する(これが再マップ化として知られるプロセスであ る)。Willsたちは、感覚性入力の変化がゆっくりとした段階的なものであるという 条件下で、1つの(アトラクター)状態からもう1つの状態への首尾一貫した完全な移 行が可能である証拠を提示している(p. 873; またPoucetとSaveによる展望記事参照 のこと)。ラットはまず、色と質感、匂い、さらに形状の異なる2つの環境を探索 し、細胞が再マップ化された後で、単一の次元(形状)においてのみ異なる環境に移 された。中間的形状の環境についての場所細胞表現は、初めの2つの形状のどちらか の(アトラクター)表現に進化した。同時に記録された細胞すべては、中間的形状の 機能として整合するように発火パターンを変えた。アトラクター・ダイナミクスの 存在を示すこの直接的証拠は、コンテクストー依存性の記憶における異なったコン テクストの表現のモデルを提示する助けとなるものである。(KF)
Attractor Dynamics in the Hippocampal Representation of the Local Environment
p. 873-876.
NEUROSCIENCE:
Attractors in Memory

p. 799-800.

環境の感知(Environmental Sensing)

カンジダ種は、酵母EPA遺伝子によってコードされた特異的接着性分子を介して宿主 の上皮性細胞に結合する、ヒトにとって重要な病原体である。EPA遺伝子のほとんど は、サブテロメア領域にコードされていて、Sir3仲介染色質サイレンシングによっ て抑制されている。これは、補酵素ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチ ド(NAD^+)の存在に依存する機構である。Domergueたちは、EPA6サイレンシングが特 異的に尿路感染において解除されるが、血管中の感染ではそうならない、というこ とを発見した(p. 866;2005年3月17日のオンライン出版)。驚くべきことに、他の酵 母と違ってカンジダglabrataはトリプトファンからNAD^+を製造することができず、 前駆物質であるニコチン酸の供給を宿主に頼っている。この病原体はこの制約を利 用して自分のいる環境を感知している。尿路ではニコチン酸がほとんど存在しない ので接着遺伝子の抑制が解除され、その細胞は特異的に尿路の上皮性細胞に付着で きるのである。(KF)
Nicotinic Acid Limitation Regulates Silencing of Candida Adhesins During UTI
p. 866-870.

標的と伝達物質とシナプス(The Target, the Transmitter, and the Synapse)

顕著な重要さがあるにも関わらず、神経伝達物質の遊離確率は、中枢シナプスで直 接決定されたことはなかったし、その制御にいかなる因子が関与しているかもわ かっていない。KoesterとJohnstonは、シナプス後カルシウム過渡電流から演繹され た遊離確率が、同じ細胞につながるシナプス間では類似しているが、別々の細胞間 では違っていることを明らかにしている(p. 863;2005年3月17日にオンライン出 版、また、Thompsonによる展望記事参照のこと)。特異的シナプス結合における遊離 確率のこの正規化は、新皮質のシナプス結合における遊離部位の付加がシナプスの 可変性を減らすだけでなく、標的となったニューロン区画のいずれについても同じ 比率で情報を提供することになる、ということを示すものである。(KF,KU)
Target Cell-Dependent Normalization of Transmitter Release at Neocortical Synapses
p. 863-866.
NEUROSCIENCE:
Matching at the Synapse

p. 800-801.

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