AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science April 18, 2003, Vol.300


ゼオライトの有機化学的側面(The Organic Side of Zeolites)

周期的に並んだカゴとチャンネルをもった結晶質のミクロ多孔性のアルミノケイ酸塩であ るゼオライトは、触媒や吸着剤、更にイオン交換剤として広範囲な用途が見い出されてい る。結晶化の方法を最適化することにより、Laiたち(p. 456:表紙、及びDavisによる展望 記事参照)は、特別に工夫されたチャンネルを持つゼオライトの膜を成長させた。この膜 は、いまだ工業的に重要な、かつ困難なプロセスであるキシレンの様々なアイソマーを分 離することが出来る。ゼオライトに有機官能基を付与して化学修飾する試みは、通常、構 造欠陥をつくったり、大きなペンダントグループをもつ内部通路を塞いでしまう 。Yamamotoたち(p. 470:Jonesによる展望記事参照)はハイブリットゼオライトを合成し 、そこでは分子内に必要なSi-CH2-Siの架橋グループを有するビス(トリオキ シシリル)メチレンを出発物質として用いることにより、メチル基(CH2-)が格 子状に周期的分布する酸素原子を置換する。(KU,Tk)
MATERIALS SCIENCE:
Zeolites Go Organic

   Christopher W. Jones
p. 439-440.
Organic-Inorganic Hybrid Zeolites Containing Organic Frameworks
   Katsutoshi Yamamoto, Yasuyuki Sakata, Yuki Nohara, Yoko Takahashi, and Takashi Tatsumi
p. 470-472.
MATERIALS SCIENCE:
Enhanced: Distinguishing the (Almost) Indistinguishable

   Mark E. Davis
p. 438-439.
Microstructural Optimization of a Zeolite Membrane for Organic Vapor Separation
   Zhiping Lai, Griselda Bonilla, Isabel Diaz, Jose Geraldo Nery, Khristina Sujaoti, Miguel A. Amat, Efrosini Kokkoli, Osamu Terasaki, Robert W. Thompson, Michael Tsapatsis, and Dionisios G. Vlachos
p. 456-460.

赤道付近のCO2供給源(Low-Latitude CO2 Source)

複数のモデルによる研究で、最終氷期末におけるCO2濃度上昇は高緯度地方の 海洋プロセスの変化が原因であることを示唆している。しかしながら、現代では太平洋の 赤道付近が大気へのCO2の最大の供給源である。PalmerとPearsonは (p.480)、太平洋赤道付近西方のプランクトン有孔虫のホウ素同位元素成分を測定した結 果、この地方が16,000年前から14,000年前には、CO2の大気への重要な供給地 だったことを発見した。この知見は、この期間にラニーニャ現象が頻繁に発生していたこ とを示唆している。(Na)
A 23,000-Year Record of Surface Water pH and PCO2 in the Western Equatorial Pacific Ocean
   M. R. Palmer and P. N. Pearson
p. 480-482.

ポリマ溶液でのY字形(The Y's of a Polymer Solution)

親水性と疎水性のセグメントが交互につながる両親媒性の二元ブロックコポリマーの希薄 溶液において、コポリマーは濃度や温度、及びブロックの分子量に依存して様々な構造形 態を形成する。このような形態は弱い溶媒とポリマー、及びポリマーとポリマーの相互作 用に由来し、新しい事例が見い出されている。水溶液中におけるポリブタンジエン‐ポリ (エチレンオキシド)の二元ブロックポリマーの相の研究において、JainとBates(p. 460)は、界面剤(ポリエチレンオキシド部分)の臨界分子量以上で、Y字形連結体や末端キ ヤップ形、及び融合したループ状ネットワーク形を含む数多くの異常な形態を観察してい る。(KU)
On the Origins of Morphological Complexity in Block Copolymer Surfactants
   Sumeet Jain and Frank S. Bates
p. 460-464.

ナノチューブの中にナノチューブを合成する(Synthesizing Nanotubes in Nanotubes)

円筒形のチューブの内部に球形の物体を充填する課題において、その充填率は2つの球の 直径の比率に依存している。Mickelsonたち(p.467;表紙参照)は、窒化ホウ素のナノチュ ーブの内部にC60フラーレン分子を充填し、そしてC60がチューブ に閉じ込められたことにより、自然な状態よりもさらに互いに近接しあいその結果奇妙な 充填構造が作られる。C60分子は融合されて、絶縁体の窒化ホウ素外被の内部 に導体ナノチューブを形成する。(TO)
Packing C60 in Boron Nitride Nanotubes
   W. Mickelson, S. Aloni, Wei-Qiang Han, John Cumings, and A. Zettl
p. 467-469.

キラウエア火山の下にある深い断層(Deep Fault Beneath Kilauea)

ハワイのキラウエア火山における地震は、マグマの動きで引き起こされる火山性なのか 、あるいは比較的薄い海洋地殻上の火山性荷重(volcanic load)に拠る構造性なのか ?Wolfeたち(p.478)は、火山性なのかあるいか構造性なのかを、深度13キロメートルの下 において改善した再配置と発震機構(focal-mechanism)分析手続きを用いて明らかにした 。彼らは、活動的で深度約30キロメートルであり低い傾斜角で海に向かって傾く断層面を 発見した。その断層は横方向に大きく拡がっていて(laterally quite extensive)、岩石 圏における地殻変動(tectonism)と関係している。この深い断層が解明されると、プレ ートの力や変形のメカニズムの理解がより精密になる可能性がある。(TO)
Mantle Fault Zone Beneath Kilauea Volcano, Hawaii
   Cecily J. Wolfe, Paul G. Okubo, and Peter M. Shearer
p. 478-480.

DNAメチル化は腫瘍サプレッサーとなる(DNA Methylation as Tumor Suppressor)

ヒトのガンではゲノム全般にわたってDNAメチル化の度合いが低下しており、この後成的 変化がガンの因果則を表しているように見える(Lengauerによる展望記事参照)。Gaudetた ち(p. 489)はDNAメチル化のレベルが極めて低い遺伝子組換えマウスを作った。生後 4〜8ヶ月以内に、この変異マウスは高頻度でトリソミー(細胞中に過剰の染色体が存在す る)を示す攻撃的T細胞リンパ腫が発生した。肉腫を遺伝的に発生させやすくさせたマウ スモデルを使った関連の研究において、Edenたち(p. 455)はゲノムのメチル化を抑制する と腫瘍の発生が加速され、これらのマウスから得られた低メチル化細胞では、正常にメチ ル化された対照細胞に比べて染色体の欠失度合いが大きいことが示された。このように 、ゲノム全体にわたる低メチル化によってガンが生じやすくなるが、これは染色体の不安 定化によるものと思われる。(Ej,hE)
Chromosomal Instability and Tumors Promoted by DNA Hypomethylation
   Amir Eden, François Gaudet, Alpana Waghmare, and Rudolf Jaenisch
p. 455.
Induction of Tumors in Mice by Genomic Hypomethylation
   François Gaudet, J. Graeme Hodgson, Amir Eden, Laurie Jackson-Grusby, Jessica Dausman, Joe W. Gray, Heinrich Leonhardt, and Rudolf Jaenisch
p. 489-492.
CANCER:
An Unstable Liaison

   Christoph Lengauer
p. 442-443.

強靭なるチタン合金(Tough Titanium Alloys)

体心立体構造相の安定性に関する三つの「マジック」判定基準を満足させることで 、Saitoたち(p. 464:Shifletによる展望記事参照)は、チタンをベースとした合金を考 案した。この合金は、低モジュラスと同様に大きな強度や弾性、及びに塑性を含む驚くほ ど多面的な「超」の特性をもつことを示している。この合金は、又、温度不変の膨張 (“Invar”挙動)と弾性(“Elinvar”挙動)をも示している。変形には転位を必要とせず 、変形は欠陥面に沿って生じる。(KU,Tk)
「訳注」Elinbar:Elastic Invariableの略で弾性率の温度変化が非常に小さく、圧力計な どの計測機に使われる(理化学辞典第五版より)
MATERIALS SCIENCE:
The More Elements, the Merrier

   Gary Shiflet
p. 443-444.
Multifunctional Alloys Obtained via a Dislocation-Free Plastic Deformation Mechanism
   Takashi Saito, Tadahiko Furuta, Jung-Hwan Hwang, Shigeru Kuramoto, Kazuaki Nishino, Nobuaki Suzuki, Rong Chen, Akira Yamada, Kazuhiko Ito, Yoshiki Seno, Takamasa Nonaka, Hideaki Ikehata, Naoyuki Nagasako, Chihiro Iwamoto, Yuuichi Ikuhara, and Taketo Sakuma
p. 464-467.

その点に至る(Come to the Point)

成層圏に見い出される硫酸塩エアロゾルの層は、大気のダイナミクスと化学現象において 重要な役割を果たしているのだが、その起源ははっきりしていない。バイオマスの燃焼が 大気中のカルボニル硫化マイクロ波補助の化学蒸着技術を用いて、Zhang たち (p.472) は、非常に先細の多壁カーボンナノチューブを合成した。円錐体の根元は内部が空洞の 20〜数十ナノメートル径であるが、ナノメートルスケールの先端に向け先細となっている 。これらのチューブは容易に装着できるため、原子間力顕微鏡の先端として、また、電界 放出体として有用となる可能性がある。(Wt)
Tubular Graphite Cones
   Guangyu Zhang, Xin Jiang, and Enge Wang
p. 472-474.

減数分裂のための染色体分離の変化(Changing Chromosome Separation for Meiosis)

配偶子を生成するプロセスである減数分裂においては、1回のDNA複製の後に2回の染色体 分離が起こる;第一減数分裂においては、娘染色分体ではなく相同染色体が分離する。染 色体分離を制御する機構は修飾されなければならず、その結果、娘動原体がまずコ-オリ エンテーション(同一の紡錘体から放射する微小管に対する付着)を行うことができ、そ してその後娘染色分体を結合させているコヒーシン複合体を引き離すことができる 。LeeとAmon(p. 482)は、出芽酵母Polo-様キナーゼCdc5が減数分裂コヒーシンのリン酸 化および染色体からの除去の補助となり、そして減数分裂Iの間の娘動原体コ-オリエンテ ーションのために必須であることを報告する。さらに、コ-オリエンテーションに必須な タンパク質であるMam1が、動原体へのその動員のためにCDC5機能に依存している。(NF)
Role of Polo-like Kinase CDC5 in Programming Meiosis I Chromosome Segregation
   Brian H. Lee and Angelika Amon
p. 482-486.

アミロイドタンパク質の抗体ブロック(Antibody Blocking of Amyloid Proteins)

アルツハイマー病(AD)に関与するβ-アミロイド(Ab)およびその他のアミロイドタン パク質の毒性は、結果として生じた不溶性フィブリルではなく、可溶性オリゴマー中間体 と関連していることを示唆する証拠が、徐々に増えている。Kayedたち(p. 486)は 、Abペプチドの可溶性オリゴマーに対する抗体であってこの種の毒性および α-synucleinやプリオンペプチドを含む多数のその他のアミロイド生成性タンパク質の可 溶性オリゴマーの毒性をブロックするものを作製した。初期ADを有する患者から採取した 死後脳組織の免疫学的染色により、可溶性Abオリゴマーの分布がアミロイドプラークの分 布とは異なることが示された。(NF)
Common Structure of Soluble Amyloid Oligomers Implies Common Mechanism of Pathogenesis
   Rakez Kayed, Elizabeth Head, Jennifer L. Thompson, Theresa M. McIntire, Saskia C. Milton, Carl W. Cotman, and Charles G. Glabe
p. 486-489.

飛んでいるハエを捉える(Flight Caught on the Fly)

昆虫の飛行に関する最近の研究のほとんどは、紐でつないだ虫を使って集めたデータに基 づいている。自由飛行の際の機動的な飛行の空気動力学を研究するために、Fryたちは 、ショウジョウバエの自然な探索行動を対象に調べた(p. 495)。ショウジョウバエは、サ ッカードと呼ばれる急激な方向転換を交えた一連の直線飛行によって周囲の環境を探索し ている。そうした飛行中にハエは、50ミリ秒以下の時間で向きを90度変えるのである。こ うした飛行は、酢で縁取られた視覚的標的に向けてハエをおびきよせることで、1秒間 5000フレームのレートで赤外線ビデオで撮影されたのである。ビデオの再生によって、ハ エが、ごくわずかな羽の動きの変化によって方向転換に必要なトルクを生み出しているこ とがわかった。さらに、その実験で、昆虫の飛行動力学を支配しているのは摩擦ではなく 慣性であることが示されたのである。(KF)
The Aerodynamics of Free-Flight Maneuvers in Drosophila
   Steven N. Fry, Rosalyn Sayaman, and Michael H. Dickinson
p. 495-498.

初期における雑音汚染の影響(The Early Effects of Noise Pollution)

高等動物の視覚系に関する研究のかなり多くのものによって、ニューロン接続の出生後の 成熟と洗練には、正常な環境において与えられるようなはっきりした両眼刺激が必要であ るということがわかっている。聴覚皮質の発達に関するパラメーターが何であるのかは 、さほどはっきりしていないが、ChangとMerzenichは、興味をそそる状況を提示している (p. 498)。彼らが発見したのは、連続的な雑音環境においてラットの乳児を養育すると 、ニューロンのチューニングと全体のサイズという点で聴覚皮質が未成熟なままになって しまう影響がある、ということである。さらに、そうした環境で育った成体のラットは 、純音の聴覚性環境へ戻されると、正常な場合よりも何週間も後であるにもかかわらず成 熟と同様のプロセスを引き起こすことから、潜在的な可塑性を保っているらしい。(KF)
Environmental Noise Retards Auditory Cortical Development
   Edward F. Chang and Michael M. Merzenich
p. 498-502.

インシュリン受容体と視覚の発達(Insulin Receptors and Visual Development)

ショウジョウバエでは、インシュリン受容体(DInR)がからだ全体で発現している。Songた ちは、このたび、視覚系の発達においてDInRがいかに機能しているかを分析した(p. 502; またDicksonの展望記事参照のこと)。軸索が網膜から脳にある最終ターゲットまで伸びて いく際、視葉を横切るレチナール接続の綿密な分布を介して、非常によく構造化されたマ ッピングができあがるのである。DInRあるいはそのアダプタ・タンパク質Dockが変異によ って壊されると、網膜視蓋の軸索接続もまた阻害されるのである。つまり、ショウジョウ バエにおいては、インシュリン受容体の無数にある機能の一つは、Dockの助けを借りて 、眼から脳へのニューロン接続の正常な発生を仲介するのである。(KF)
DEVELOPMENT:
Wiring the Brain with Insulin

   Barry J. Dickson
p. 440-441.
Axons Guided by Insulin Receptor in Drosophila Visual System
   Jianbo Song, Lingling Wu, Zun Chen, Ronald A. Kohanski, and Leslie Pick
p. 502-505.

超輻射で新しい光を放つ(Shedding New Light on Superradiance)

超放射は、通常励起原子の集団から光が集団的に放射される散乱プロセスであると言われ ている。すなわち各々の原子から自然に放たれるフォトンは同位相である。しかしながら Schnebleたち(p. 475)は、アインシュタイン縮合物から短パルスの散乱を観測し、これら の時間スケールにおいてその物質波増幅率が減衰されることを発見した。このようにこの ケースにおいて光は原子の格子から散乱されるだけではなく、原子もまた光格子から散乱 される。(hk)
The Onset of Matter-Wave Amplification in a Superradiant Bose-Einstein Condensate
   Dominik Schneble, Yoshio Torii, Micah Boyd, Erik W. Streed, David E. Pritchard, and Wolfgang Ketterle
p. 475-478.

フォークヘッドタンパク質によるRNAポリメラーゼのリン酸化(Phosphorylation of RNA Polymerase with Forkhead Proteins)

翼状-らせん(winged-helix)フォークヘッド(Fkh: forkhead)タンパク質は、細胞周期制御 や細胞死、細胞分化などのいくつかの細胞プロセスにおいて機能する転写因子である 。Fkhタンパク質は遺伝子のプロモータ領域と会合し、転写の活性化と抑制のどちらにお いても機能するのである。Morillonたちは、酵母のフォークヘッドタンパク質Fkh1pと Fkh2pが転写の引き伸ばしにも関与しているが互いに対立する機能をもっている、と報告 している(p. 492)。RNAポリメラーゼ分子のカルボキシ終端領域のリン酸化状態に影響を 与えることで、Fkh2pが引き伸ばしを促進する一方、FKH1pはポリメラーゼの静止を促進し 、プレ・メッセンジャーRNAの3'端形成に関与しているのである。(KF)
Regulation of Elongating RNA Polymerase II by Forkhead Transcription Factors in Yeast
   Antonin Morillon, Justin O'Sullivan, Abul Azad, Nicholas Proudfoot, and Jane Mellor
p. 492-495.

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