AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science December 20, 2002, Vol.298


短信(Brevia)

深海性ラン藻類による新第三紀生物の鉱物化(Neoarchean Biomineralization by Benthic Cyanobacteria) 始生代のラン藻類は、酸素を製造するだけでなく鉱物化を促進する作用でも興味深い生物 である。南アフリカのPrieskaで採集されたチャート内に封入されたドロマイト中に包皮 の中の微細な針が保存されていた。この微小化石は、Kazmierczak and Altermann (p. 2351)によって25億年も古いことが示された。(Ej,hE)
Neoarchean Biomineralization by Benthic Cyanobacteria
    Józef Kazmierczak and Wladyslaw Altermann
p. 2351.

ゼオライトの安定な半導体類似物(Stable Semiconducting Analogs of Zeolites)

マイクロ多孔性ゼオライト酸化物は一般的には絶縁物であるが、シリコン(Si)あるいは アルミニウム(Al)の代わりに中核原子としてたとえばインジウム(In)とゲルマニウム (Ge)および錫(Sn)のような陽イオンを用いるイオウとセレンをベースとする類似化合 物は、珍しい電気的特性と光物理的特性をもてる半導体である。しかしながら、ナノ多孔 性類似物は、しばしばたとえば触媒作用のような用途には不安定な熱的特性のために利用 が制限されていた。Zheng たち (p. 2366) は、これを四価や三価の陽イオンと混合する と、少なくとも380℃の高温まで安定性が保たれることを見つけた。(hk,Tk)
Microporous and Photoluminescent Chalcogenide Zeolite Analogs
    Nanfeng Zheng, Xianhui Bu, Bing Wang, and Pingyun Feng
p. 2366-2369.

LDL受容体の2種類の外観(Two Looks at the LDL Receptor)

低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)はコレステロール恒常性に中心的役割を演じており 、この遺伝子の変異は家族性高コレステロール血症の原因となる。この受容体は中性pHで LDLを結合し、内部移行の後、エンドソームでの低いpHでLDLを遊離する。引き続いてリポ タンパク質は受容体が再循環している間に分解する。Rudenkoたち(p. 2353; Innerarityによる展望記事参照)は、pH5.3でLDL-Rの細胞外の構造を3.7オングストローム の分解能で決定した。このリガンドの結合領域は、上皮増殖因子(EGF)前駆物質の相同領 域上にアーク状に折り畳まれ、分子内相互作用を促進するが、これは可逆性pH制御による 結合とつじつまが合う。この相互作用はエンドソーム中で起きると思われ、その結果結合 LDLを置換する。LDL-Rのような多領域タンパク質は、翻訳期間中にアミノ末端からカルボ キシ末端へと領域が1つずつ折り畳まれると考えられる。Jansensたち(p.2401)はコンフ ォメーション特異性のエピトープの産生を解析し、新生分子のジスフィド結合形成パタ ーンを観察し、LDL-Rの畳み込みを調べた。その結果各領域は翻訳の期間中に別々に折り 畳まれ、異なる領域は翻訳後に、期待される手順からはずれて折り畳まれるように見える ことを見つけた。(Ej,hE)
Microporous and Photoluminescent Chalcogenide Zeolite Analogs
    Nanfeng Zheng, Xianhui Bu, Bing Wang, and Pingyun Feng
p. 2366-2369.
STRUCTURAL BIOLOGY
LDL Receptor's b-Propeller Displaces LDL n

    Thomas L. Innerarity
p. 2337-2339.
Structure of the LDL Receptor Extracellular Domain at Endosomal pH
    Gabby Rudenko, Lisa Henry, Keith Henderson, Konstantin Ichtchenko, Michael S. Brown, Joseph L. Goldstein, and Johann Deisenhofer
p. 2353-2358.

紛らわしいメッセージ(A Mixed Message)

Gruber たち (p.2374; Quay による展望記事を参照のこと) は、Bermuda 近くの18年間の 海洋炭素サイクルの一連の結果について報告している。それによると、海洋表面温度と冬 季混合層の深さの変化により、そこにおける CO2 取り込み量が大きく変化す ることを示している。これらの物理的特性は、北大西洋振動(North Atlantic Oscillation) と密接に関連しているため、著者たちは、すべての亜熱帯北大西洋におけ る炭素サイクルは、一年を通じて50%ほども変動している可能性があることを示唆してい る。(Wt)
CLIMATE CHANGE:
Ups and Downs of CO2 Uptake

    Paul Quay
p. 2344.
Interannual Variability in the North Atlantic Ocean Carbon Sink
    Nicolas Gruber, Charles D. Keeling, and Nicholas R. Bates
p. 2374-2378.

地球初期の大気(Reducing Schemes)

初期の地球の大気には自由酸素が少ないことを示す地質学的な根拠はあるが、地球の歴史 における酸素含有量を直接示す証拠は発見されていない。2つのレポートが、先カンブリ ア時代のイオウ同位体元素のより詳しい記録を活用し、初期の地球の酸素とイオウ化合物 の含有量を推測している(Wiechertによる展望参照)。それらによると24億年前以前の地球 にはわずかに痕跡を示すだけの酸素しか存在しなかった。通常、同位体の割合は質量に依 存するが、オゾンの存在しない高高度の大気中で現在起きるイオウ質量依存性のない光化 学的分別などの例外があることが知られている。大気中の酸素不足を反映するイオウの質 量非依存の割合の影響が始生代の地殻内の岩石から発見された。Farquharたちは(p. 2369)、地底深くのマントルで生成された古代のダイアモンドの包有物中のイオウの質量 に依存しない同位体元素の影響についての証拠について報告している。これらのデータに よると、これらのダイアモンドは古生代の地球大気の様々な反応に関連する物質を取り込 んで、その後マントル深く沈みこんだ、という直接的な証拠を提供している。古生代の硫 化物を含んだ岩石は現代の硫化物に比較し、バクテリアの働きを反映する同位体元素であ る34Sがほとんど減少していない。Habichtたちは(p. 2372)、培養実験により 得られた同位体元素データをもとに古生代の海洋の硫酸塩濃度が200μモル以下であり 、従来考えられていたよりかなり少ないことを示している。同じデータによると、当時の 大気の自由酸素含有量は非常に少ないが、同時に、当時蔓延していたメタン生成微生物の 活動により生成された温室効果ガスのメタンが大量に含まれていたことも示唆している 。(Na,Tk)
Calibration of Sulfate Levels in the Archean Ocean
    Kirsten S. Habicht, Michael Gade, Bo Thamdrup, Peter Berg, and Donald E. Canfield Kelley
p. 2372-2374.

そのチューブに命名する(Name That Tube)

単壁カーボンナノチューブは、一枚のグラファイトシートをチューブ状に巻き上げるとき の角度(n,m)を指定する命名法により、記述することができる。各(n,m) の組み合わせに 対して、チューブの特性は変化する。Bachilo たち(p.2361) は、それらの吸収、蛍光 、ラマンスペクトルに基づいて半導体的ナノチューブに対する固有の特徴を同定した。著 者たちは、最近のナノチューブの励起状態に関する単一電子理論について疑問を提示する とともに、ナノチューブ合成の理解に助けとなる可能性のある解析的方法を与えている 。(Wt)
Structure-Assigned Optical Spectra of Single-Walled Carbon Nanotubes
    Sergei M. Bachilo, Michael S. Strano, Carter Kittrell, Robert H. Hauge, Richard E. Smalley, and R. Bruce Weisman
p. . 2361-2366.

我々はどこから来たの?(Where We Come From)

人間の集団中の遺伝子の偏差分布を理解することは、集団が文化的なものであれ地域的な ものであれ、進化や臨床医学の研究に欠かせない。Rosenbergたち.(p.2381; King と Motulskyによる展望記事も参照)は、短いタンデム型反復多形性を利用して、全大陸の 1056人を特徴付けた。その結果、集団同士の偏差はわずかで、バラツキの90%以上は特定 集団の偏差内に納まった。また、全ての個人について、他の情報を加味しないで主要な地 理的グループ分けが可能となるようなクラスタリングアルゴリズムを開発した。(Ej,hE)
HUMAN GENETICS:
Mapping Human History

    Mary-Claire King and Arno G. Motulsky
p. . 2342-2343.
Genetic Structure of Human Populations
    Noah A. Rosenberg, Jonathan K. Pritchard, James L. Weber, Howard M. Cann, Kenneth K. Kidd, Lev A. Zhivotovsky, and Marcus W. Feldman
p. 2381-2385.

顔を保護している筋肉(Muscles That Save Face)

脊椎動物の頭部と胴体部の筋肉は様々な遺伝的経路によって特殊化されているが、頭部の 筋肉形成を制御している転写因子よりも骨格筋の形成に関与した転写因子に関してはるか に多くの事が知られている。Luたち(p. 2378)は、マウスにおいて転写因子、MyoRと capsulinに関する遺伝子を不活性化すると、顔面筋肉の特異的な部分集合部が欠落するこ とを示している。(KU)
Control of Facial Muscle Development by MyoR and Capsulin
    Jian-rong Lu, Rhonda Bassel-Duby, April Hawkins, Priscilla Chang, Renee Valdez, Hai Wu, Lin Gan, John M. Shelton, James A. Richardson, and Eric N. Olson
p. 2378-2381.

ガスが起動する転写制御(Gas-Driven Transcriptional Regulation)

哺乳動物の細胞における遺伝子発現は環境や代謝のあるきっかけにより制御されているが 、このきっかけを感知して応答する分子メカニズムに関しては殆んど知られていない 。Dioumたち(p. 2385;BoehningとSnyderによる展望と11月22日号のRutterによるPrize Essay参照)は、概日性リズムの制御に関連する転写因子、NPAS2(NeuronalPAS domain protein 2)の研究において興味深いメカニズムの一つを発見した。NPAS2は補欠分子族と してヘムに結合し、次にそのヘムがガス制御センサーとして機能することが示された。精 製タンパクを用いた実験によって、このセンサーにおける有効なリガンドとして一酸化炭 素(CO)が同定された。COにさらされると、DNA結合活性をもった転写因子を与えるタンパ ク質、BMAL1とNPAS2の二量体化が阻止された。(KU)
CIRCADIAN RHYTHMS:
Carbon Monoxide and Clocks

    Darren Boehning and Solomon H. Snyder
p. 2339-2340.
NPAS2: A Gas-Responsive Transcription Factor
    Elhadji M. Dioum, Jared Rutter, Jason R. Tuckerman, Gonzalo Gonzalez, Marie-Alda Gilles-Gonzalez, and Steven L. McKnight
p. 2385-2387.

ACTィブ輸送による転写制御(Transcriptional Regulation via ACTive Transport)

キネシンと呼ばれる分子は、染色体、オルガネラおよびメッセンジャーRNAの細胞内での 移動に重要である。Machoたち(p. 2388)はここで、精巣-特異的キネシン、KIF17bが 、コアクチベーターであるACTの輸送において機能することができ、そして転写活性に影 響を及ぼすことができることを示す。ACTは、哺乳動物精子細胞中でのCREM-媒介性転写の コアクチベーターである。KIF17bは、核からACTを排除することにより、ACT-依存性転写 の用量-依存的な阻害剤として作用する。この研究は、生殖細胞遺伝子発現を制御する分 子メカニズムを取り扱い始めている。(NF)
CREM-Dependent Transcription in Male Germ Cells Controlled by a Kinesin
    Betina Macho, Stefano Brancorsini, Gian Maria Fimia, Mitsutoshi Setou, Nobutaka Hirokawa, and Paolo Sassone-Corsi
p. 2388-2390.

代謝はうまくいっているかね?イエス・Sir2!(Coordinate Metabolism? Yes, Sir2!)

ほ乳動物の心臓の損傷は、損傷を受けた心筋の再生を引き起こさず、線維性瘢痕形成を引 き起こす。Possたち(p. 2188;ScottとStainierによる展望記事を高度に保存された Sir2ファミリーのタンパク質は、真核細胞における染色体安定性および細胞老化に、そし て真核細胞および古細菌の両方における遺伝子サイレンシングの制御に関与している 。Sir2は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)--依存性脱アセチル化酵素活 性を有し、そしてその基質には、ヒストンおよび腫瘍抑制分子p53が含まれる。Staraiた ち(p. 2390)は、Salmonella entericaのアセチル-CoA合成酵素(Acs)が、活性部位に おけるリジン残基-609のアセチル化により翻訳後にスイッチ・オフされることが示される 。Sir2ホモログであるCobBは、アセチル-CoA合成酵素の活性を、この残基を脱アセチル化 することによりスイッチ・オンする。これらのタンパク質が保存性であることから、リジ ンのアセチル化が原核細胞および真核細胞における共通の制御機構であることが示唆され 、後者においてはこのことが、ヒストンのアセチル化と細胞の生理学的状態との間のつな がりをもたらしている。(NF)
Sir2-Dependent Activation of Acetyl-CoA Synthetase by Deacetylation of Active Lysine
    V. J. Starai, I. Celic, R. N. Cole, J. D. Boeke, and J. C. Escalante-Semerena
p. 2390-2392.

光合成の付加初期段階(Additional Early Steps in Photosynthesis)

カロテノイドは、光のエネルギーを吸収し、クロロフィルへ効率的に移動させることによ って、光合成で利用できる波長の範囲を広げる。以前からカロテノイド光物理学は、S2と S1という2つの一重項の低励起状態として解釈されていたのである。しかし、最近の理論 的および実験的の研究によれば、中間励起状態もエネルギー移動に関与することが示唆さ れた。Cerulloたち(p. 2395)は、超高速分光学を用い、短期励起状態(Sx)を同定した 。Sxは、S2とS1の状態の間の内部変換を仲介する。(An)
Photosynthetic Light Harvesting by Carotenoids: Detection of an Intermediate Excited State
    G. Cerullo, D. Polli, G. Lanzani, S. De Silvestri, H. Hashimoto, and R. J. Cogdell
p. 2395-2398.

並んでいる酸素(Oxygen in a Line-Up)

低次スペース内に分子を拘束すると、分子の物理的性質と反応性を変化させることが可能 となる。これに関して、不対電子から発生する磁性および光物理学的性質のため、酸素は 特に面白い候補である。Kitauraたち(p. 2358)は、銅錯体高分子の細孔における一次元鎖 にO2を閉じ込めたことをX線回折による証拠で報告した。(An)
Formation of a One-Dimensional Array of Oxygen in a Microporous Metal-Organic Solid
    Ryo Kitaura, Susumu Kitagawa, Yoshiki Kubota, Tatsuo C. Kobayashi, Koichi Kindo, Yoshimi Mita, Akira Matsuo, Michihiro Kobayashi, Ho-Chol Chang, Tadashi C. Ozawa, Megumi Suzuki, Makoto Sakata, and Masaki Takata
p. 2358-2361.

情報の切り換え(Switching Signals)

B細胞は、分泌する抗体のクラスを変えることで違った反応を示すのだが、このクラス切 り換えは、B細胞表面においても見出される。B細胞表面では、膜結合型抗体がありふれた 情報伝達要素と協力して、B細胞受容体(BCRs)を形成するのである。こうした伝達モジュ ールはどのBCRでも同一であるのだが、1つの受容体、免疫グロブリンG(IgG)含有BCRだけ は、他のものとは違う情報伝達能力をもっている。Wakabayashiたちは、その能力が、B細 胞活性化を下方制御することが知られている膜貫通タンパク質、CD22の選択的活性化を介 して生じることを発見した(p. 2392)。IgG-BCRの連結によって、CD22に依存した効率的な 脱リン酸酵素SHP-1の補充と、細胞外情報制御キナーゼ(ERK1とERK2)およびカルシウム情 報伝達の抑制とが、どちらも誘発されなくなるのである。自分自身をCD22の抑制性効果か ら保護することで、IgG-BCRは、IgG+記憶B細胞の応答性を増強するだけでなく、効率的な クラス切り換えをも制御しているのかもしれない。(KF)
A Distinct Signaling Pathway Used by the IgG-Containing B Cell Antigen Receptor
    Chisato Wakabayashi, Takahiro Adachi, Jürgen Wienands, and Takeshi Tsubata
p. 2392-2395.

統合失調症は染色体1qに結びついているか(Is Schizophrenia Linked to Chromosome 1q?)

Levinsonたちは、統合失調症の779家族について多施設での調査を行ない、染色体1qへの 遺伝連鎖の証拠がないということを見出した(2002年4月26日号の報告 p. 739)。これは 、この病気にこの領域が関係するとした幾つかの報告とは逆の結果である。Macgregorた ちとBassettたちは、それぞれ別のコメントで、座位の多様性によって多岐にわたる結果 は説明できるとし、また連鎖が再現できなかったことは、統合失調症の遺伝学についてよ り、むしろさまざまな研究法の相対的な利点について多くを示すものだと主張している 。Levinsonたちは、統合失調症に関係する遺伝子は1qに存在するかもしれないが、古典的 な多様性では病気の事例のかなりの部分を説明できない、と応じている。彼らはさらに 、統合失調症に関わる複数の相互作用座位の場所を突きとめるために、大規模な多施設で の連鎖研究が重要であるということを強調している。これらコメント全文は、次の場所で 読むことができる。(KF)
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/298/5602/2277a
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