AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science June 21, 2002, Vol.296


速報(In Brevia)
外向性は、笑顔への扁桃体の応答で分かる(Amygdala Response to Happy Faces as a Function of Extraversion)

認知神経科学では長い間人の行動と脳の活性との関連を捜し求めてきた。人の表情は大別 して、怒り、恐れ、悲しみ、喜び、があるが、脳の扁桃体はこれらの表情の中で、喜びの 表情に最も強く、かつ普遍的に応答していることがCanliたち(p. 2191)のMRIを利用した 脳の活性部位の研究で判明した。(Ej)
Amygdala Response to Happy Faces as a Function of Extraversion
   Turhan Canli, Heidi Sivers, Susan L. Whitfield, Ian H. Gotlib, and John D. E. Gabrieli
p. 2191.

乱れているがコヒーレント(Disordered but Coherent)

通常、強磁性を非磁性なイオンで希釈すると強磁性磁化配列が乱れ、結果として、低温で 長距離に渡りコヒーレント性がほとんどないガラスのような(アモルファス)状態で凍結 するはずである。これに代わりにGhoshたち(p. 2195)は、磁極が不揃いな磁石が低温で通 常のガラスとはかなり異なった特性をもつコヒーレント性を現すことを発見している。緩 和率は実際急峻になっており、このことは“結合(カップリング)した発振素子の分布を 持つ系”として振舞うことを暗示している。(hk)
Coherent Spin Oscillations in a Disordered Magnet
   S. Ghosh, R. Parthasarathy, T. F. Rosenbaum, and G. Aeppli
p. 2195-2198.

地下の石筍に閉じ込められた8200年前の冷却現象(Weather Caught Underground)

およそ8200年前に劇的に発生した冷却現象は、北米Laurentide氷床の溶解の進行と淡水流 入の増加による北大西洋熱塩循環の乱れが関連している。Baldiniたち(p. 2203)は、この 冷却現象が急激に始まり、途中で短期間の緩和現象が生じ、季節性が強調され、突然終了 したことを示す、アイルランド南西部で発掘された石筍から得た8200年前の冷却現象前後 の高精度な微量元素の記録を示している。(Na,Og)
Structure of the 8200-Year Cold Event Revealed by a Speleothem Trace Element Record
   James U. L. Baldini, Frank McDermott, and Ian J. Fairchild
p. 2203-2206.

片道の旅(One-Way Trips)

オールトの雲は(Oort cloud)は、太陽系の外側の軌道を回っている約一兆個の彗星からな る球形状の領域であり、そこから1年に約12個の割合で彗星が太陽系内に送り込まれてく る。しかし力学的モデルでは、実測されるよりも多く彗星が太陽系に戻ることを示してい る。Levisonたち(p.2212; Baileyによる展望記事参照)は、新たなシミュレーションと観 測と組み合わせて、これらの戻ってくるはずだった彗星のほとんどが破壊されているので あり、宇宙風化作用より黒化しているのではない(そのため観測されない)ことを示した 。このように、太陽系に戻ってくるオールト星雲の彗星は、カイパーベルト(海王星の外 側に横たわる短周期彗星の源)起源の従兄弟たちと異なり、破壊されやすい。そのカイパ ーベルトでは、相対的に戻ってくる物体の数がより多く観測されてきた。(TO,Nk)
PLANETARY SCIENCE:
Where Have All the Comets Gone?

   Mark E. Bailey
p. 2151-2153.
The Mass Disruption of Oort Cloud Comets
   Harold F. Levison, Alessandro Morbidelli, Luke Dones, Robert Jedicke, Paul A. Wiegert, and William F. Bottke Jr.
p. 2212-2215.

ひっきりなしに凝縮物質に積み込む(Loading Condensates Continuously)

ボース-アインシュタイン凝縮物質に関する研究分野において、長いあいだ続いている目 標のひとつは、連続ビームの原子レーザーを実現することであった。原子レーザーは、パ ルスモードで作動させられるか、初期に蓄積された原子が枯渇するまで動作する。問題は 、微妙な凝縮自体を破壊することなく、技術的に困難な課題である蓄積を一杯にすること を克服することである。Chikkatur たち (p.2193; Pfau による展望記事を参照のこと) は、その蓄積容器として光学的に補足された凝縮物質と、また、別の凝縮物質からその蓄 積容器に「ひとすくい」の凝縮した原子を移動するための光学的ピンセットとを用いるこ とにより、その蓄積容器の中に100万個以上の原子を維持することができている。(Wt)
ATOM OPTICS:
Continuous Progress on Atom Lasers

   Tilman Pfau
p. 2155-2156.
A Continuous Source of Bose-Einstein Condensed Atoms
   A. P. Chikkatur, Y. Shin, A. E. Leanhardt, D. Kielpinski, E. Tsikata, T. L. Gustavson, D. E. Pritchard, and W. Ketterle
p. 2193-2195.

抗体は膜に利き手を与える(Antibodies Give Membranes a Handedness)

医薬品は、いくつかのキラルな構造を有する場合には、しばしばそのうちの1つだけが薬 効を示すため、これらの鏡像異性体を分離する必要性が高まってきた。連続的に分離する 手段の1つが膜を利用する方法である。Leeたち(p. 2198)は、直径20 nm の円筒状の孔を 有するアルミナ膜を用いて、シリカのナノチューブをこの孔の中に化学合成し、鏡像異性 体の1つに特異的に結合する抗体をナノチューブ内壁にくっつけると、医薬品分子のRR型 からSS型を分離することができるようになる。抗体の結合力、即ち膜の通過流量は有機分 子のジメチルスルホキシドを緩衝液に加えることで調整することができる。(Ej,hE)
Antibody-Based Bio-Nanotube Membranes for Enantiomeric Drug Separations
   Sang Bok Lee, David T. Mitchell, Lacramioara Trofin, Tarja K. Nevanen, Hans Söderlund, and Charles R. Martin
p. 2198-2200.

満ち溢れる火星の湖(Martian Lake Runneth Over)

火星探査レーザー高度計からのデータを用いて、Irwinたち(p.2209)は、900キロメートル の長さと8-15キロメートルの幅を持つMa'adim Vallisは、おそらく巨大な湖が溢れたこと によって形成されたと結論付けた。その湖の境界上で突破した水が急速にその谷を切り裂 き、大量の水が幾つかの大きな衝突クレータに流れ込んだ。この谷は、30億年以上前のも ので、巨大湖の所在していたことは、そこでは表面水がMa'adim Vallisの発達に重要な役 割を果たしていて、火星の水循環で起こりうる激しさと複雑さを示している。(TO,Tk)
A Large Paleolake Basin at the Head of Ma'adim Vallis, Mars
   Rossman P. Irwin III, Ted A. Maxwell, Alan D. Howard, Robert A. Craddock, and David W. Leverington
p. 2209-2212.

尻尾で分子を揺する(Shaking Molecules by Their Tails)

振動エネルギーが分子のひとつの部分に預けられると、それらは結局は再配分される。し かし、その実際の過程を観察することは難しかった。Wang たち (p.2201) は、超高速分 光法で十分な分解能を達成し、さまざまな液相のアルコールを経由する振動エネルギーの 移動を観察した。彼らは、O-H の伸縮振動を励起し、そして、CH3 グループに到達する前 の CH2 あるいは CH グループへのエネルギー移動--それらは、上昇も下降もあるのだ が--を見ることができた。(Wt)
Watching Vibrational Energy Transfer in Liquids with Atomic Spatial Resolution
   Zhaohui Wang, Andrei Pakoulev, and Dana D. Dlott
p. 2201-2203.

膜内のペプチドを切断(Cutting Peptides s Inside Membranes)

シグナルペプチドは、複数の機能をもつことができる。シグナルとペプチドは膜に移行し 、細胞膜タンパク質と分泌タンパク質の生合成に必要である酵素で切断されて、機能的に 重要なペプチドを放出するものもある。Weihofenたち(p. 2215)は、この見つかりにくい シグナルペプチドプロテアーゼ(SPP)を同定した。これは現在増加中のマルチパース膜内 切断プロテアーゼファミリに属するが、このファミリの初メンバーがプレセニリン (presenilin)であった。WolfeとSelkoeによる展望記事において、SPPの特徴づけがプレセ ニリンのタンパク分解活性に関する論議を鎮める可能について議論している。(An)
Identification of Signal Peptide Peptidase, a Presenilin-Type Aspartic Protease
   Andreas Weihofen, Kathleen Binns, Marius K. Lemberg, Keith Ashman, and Bruno Martoglio
p. 2215-2218.

RNAは平面状に作られる(RNAs Made Mainly in the Plane)

ポリオウイルスやC型肝炎ウイルスのような(+)鎖RNAウイルスのRNA複製は、宿主細胞の細 胞質膜の表面で行われる。ポリオウイルスRNA合成は、ウイルスにコードされるRNA依存性 RNAポリメラーゼによって触媒される。Lyleたち(p. 2218)は、精製したポリメラーゼがオ リゴマー形成することによって平面あるいは管状のアレイを形成するが、このアレイが至 適なRNA結合と伸長に相関している。細胞のポリオウイルス感染によって生成した小胞の 構造は、小胞膜をポリメラーゼのシートで被覆した状態と一致した。二次元の酵素アレイ がウイルスのRNA複製に表面触媒作用の有利さを与えるのかもしれない。(An)
Visualization and Functional Analysis of RNA-Dependent RNA Polymerase Lattices
   John M. Lyle, Esther Bullitt, Kurt Bienz, and Karla Kirkegaard
p. 2218-2222.

混ぜ合わせ(Mixing It Up)

オスの生殖細胞の減数分裂の間、相同染色体は対合し、そしてゲノム内容を交換し、子孫 の遺伝的変動性を可能にする。Lynnたち(p.2222)は、ヒト精母細胞を、免疫蛍光顕微鏡 を用いて研究し、そしてオスの中でのそしてオスの間での組換えの速度において実質的な バリエーションを見出した。さらに、著者たちは、このバリエーションと物理的構造体で ある対合複合体の長さの相違との間の関係が、物理的距離よりも遺伝的距離に依存するこ とを同定した。この知見は、ヒトおよびマウスの両方において一致しており、そして異数 性に関与するメカニズムをよりよく理解することを可能にするだろう。(NF)
Covariation of Synaptonemal Complex Length and Mammalian Meiotic Exchange Rates
   Audrey Lynn, Kara E. Koehler, LuAnn Judis, Ernest R. Chan, Jonathan P. Cherry, Stuart Schwartz, Allen Seftel, Patricia A. Hunt, and Terry J. Hassold
p. 2222-2225.

ヒトのバリエーションの基盤(The Substructure of Human Variation)

推定1000万の共通するヒト1ヌクレオチド多型(SNP)のうちのおよそ400万のものが、す でにデータベースに登録されているため、共通の遺伝的バリエーションを研究することは ますます実際的になっている。このような個体群中の個々の染色体に関する変異体の組み 合わせをハプロタイプと呼ぶ。Gabrielたち(p. 2225)は、アフリカ人、アジア人、コ ーカソイド人およびアフリカ系アメリカ人から採取したサンプルにおいて、51個の常染色 体領域(ヒトゲノムの13メガ塩基を含む領域)にわたって、全ゲノム範囲の調査を行った 。彼らは、ほとんどのヒトゲノムはハプロタイプブロックから構成されており、そのブロ ックは、その全体にわたって歴史的にほとんど組換えが生じておらず、そして平均して 3〜5つの共通のハプロタイプが、それぞれの個体群サンプルのすべての染色体のうち 90%を占めている、と結論付けている。(NF)
The Structure of Haplotype Blocks in the Human Genome
   Stacey B. Gabriel, Stephen F. Schaffner, Huy Nguyen, Jamie M. Moore, Jessica Roy, Brendan Blumenstiel, John Higgins, Matthew DeFelice, Amy Lochner, Maura Faggart, Shau Neen Liu-Cordero, Charles Rotimi, Adebowale Adeyemo, Richard Cooper, Ryk Ward, Eric S. Lander, Mark J. Daly, and David Altshuler
p. 2225-2229.

ストレスと戦う植物(Plants Coping with Stress)

多くの動物の病気の原因となる細菌の多くは広範な生態系を通して進化してきたと思われ る。従って、他の場所を探すことで代用となる取り組みやすい病気メカニズムのモデルが 見つかる可能性がある。Hogan と Kolter (p. 2229)は2つの通常的に共生する日和見感 染症の病原体である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:細菌)と鵞口瘡カンジダ (Candida albicans:真菌)の変異を選択する間に広範囲の拮抗性相互作用を見つけた 。緑膿菌はカンジダ菌のフィラメント上にバイオフィルムを発達させ、ついにはカンジダ 菌を殺してしまう。細菌が付着するためには、IV型線毛(pili)として知られている粘着性 病原性因子が必要である。襲撃されると真菌は酵母様の形態に変化し、細菌には浸透不能 のように見える。(Ej,hE)
Pseudomonas-Candida Interactions: An Ecological Role for Virulence Factors
   Deborah A. Hogan and Roberto Kolter
p. 2229-2232.

建設と破壊(Building Up and Tearing Down)

ホルモンが一旦取り除かれるとホルモン誘導は急速に停止するがその理由はわかってない 。Freeman と Yamamoto (p. 2232; Marxによるニュース記事も参照)は、分子シャペロン が、プロモータ上に形成し遺伝子発現を誘発する大きなマルチサブユニット複合体を分解 することを示した。著者たちはキメラの構築物を使って生体内でシャペロン濃度を局所的 に高め、シャペロンp23がプロモータ領域に局在するときには転写が下方制御されること を示した。従って、シャペロンは転写複合体の構築と分解の両方にかかわっているものと 思われる。(Ej,hE)
GENE TRANSCRIPTION:
Demolition Crew Gets a Hand From Chaperones

   Jean Marx
p. 2125.
Disassembly of Transcriptional Regulatory Complexes by Molecular Chaperones
   Brian C. Freeman and Keith R. Yamamoto
p. 2232-2235.

ハンチントン病における転写性機能障害(Transcriptional Dysfunction in Huntington's Disease)

ハンチントン病(HD)の神経変性特徴は変異によって生じるが、この変異はハンチンチンタ ンパク質中のポリグルタミン経路の拡張を誘発する。変異ハンチンチンは、ニューロンの 生存に大切な遺伝子の転写を妨害すると信じられている。Dunahたち(p. 2238; および Frieman とTjianによる展望記事参照)は、変異ハンチンチンは転写活性化因子Sp1と、そ の補助因子のTAFII130によって仲介される転写を妨害することを報告した。HD遺伝子組み 替えマウス由来の培養線条体細胞中でSp1とTAFII130を同時発現すると、変異ハンチンチ ンによって引き起こされた転写ブロックを回復した。可溶性変異体のハンチンチンは、前 症候性HD及び症候性HDの患者から取った死後の脳組織中のDNAにSp1が結合するのを防いだ が、このことは変異性ハンチンチンで生じた転写機能障害がHDの初期症状であることを示 している。(Ej,hE)
Sp1 and TAFII130 Transcriptional Activity Disrupted in Early Huntington's Disease
   Anthone W. Dunah, Hyunkyung Jeong, April Griffin, Yong-Man Kim, David G. Standaert, Steven M. Hersch, M. Maral Mouradian, Anne B. Young, Naoko Tanese, and Dimitri Krainc
p. 2238-2243.

海馬の場所細胞とその回路網(Hippocampal Place Cells and Their Circuitry)

海馬の領域CA1にある錐体細胞は、場所特有の活性を示すことがある。たとえば、それら は、動物が迷路の特定の場所にいることを認識したときに優先的に発火することがあるの である。こうした場所細胞の特定の発火特性を決定する入力は何なのだろう? Brunたち は、海馬の領域CA3からCA1へのすべての接続を切断した(p. 2243)。場所の領域と場所認 識行動は、それによっても大部分変化を受けず、嗅内皮質からの直接の入力があれば空間 的認識記憶にはじゅうぶんであるということが示された。しかし、これらの動物における ナビゲーションの学習は妨害された。ナビゲーション記憶は、つまり、CA3領域とCA1領域 の相互作用が損なわれていないことに依存しているのである。(KF)
Place Cells and Place Recognition Maintained by Direct Entorhinal-Hippocampal Circuitry
   Vegard H. Brun, Mona K. Otnæss, Sturla Molden, Hill-Aina Steffenach, Menno P. Witter, May-Britt Moser, and Edvard I. Moser
p. 2243-2246.

一つの源から生じた花崗岩(Single-Sourcing Granite)

ある種の花崗岩の同位体組成上の差異は、融けた花崗岩マグマを産み出した母岩石の差に 帰せられてきた。共通の岩石を溶融させる実験によって、KneselとDavidsonは、Sr濃度と 87Sr/86Srの割合の双方が、溶融の際に水が存在したかどうかだ けでなく、圧力や温度、実験の持続時間に依存して変わる、ということを見出した(p. 2206)。彼らは自分たちの結果をヒマラヤにおいて生成した多様な花崗岩に適用し、これ らさまざまな岩石が、同じ1つの岩石から、液体が豊富な条件下や乾燥状態での溶融を経 て生成された可能性があることを示している。(KF,Og)
Insights into Collisional Magmatism from Isotopic Fingerprints of Melting Reactions
   Kurt M. Knesel and Jon P. Davidson
p. 2206-2208.

生殖細胞におけるX不活性化(X-Inactivation in Germ Cells)

体細胞中におけるX染色体の遺伝子量補償(遺伝子発現の減少)の機構については多くのこ とが知られているが、生殖細胞におけるX染色体の抑制(repressed)状態ないし凝縮 (condensed)状態の基礎をなす機構についてはほとんど知られていない。Fongたちは、線 虫(C.elegans)のタンパク質MES-4(これは生殖系列の発生に必須のものである)が、排他 的に常染色体に結合する、進化的に保存されてきたSET領域タンパクをコードしており 、それらをサイレンシングから保護している、ということを明らかにしている(p. 2235)。X染色体からMES-4を排除するには、X不活性化に必要なpolycombグループのタンパ ク質であるMES-2とMES6、さらにはMES-3の活性が必要である。(KF)
Regulation of the Different Chromatin States of Autosomes and X Chromosomes in the Germ Line of C. elegans
   Youyi Fong, Laurel Bender, Wenchao Wang, and Susan Strome
p. 2235-2238.

熱帯性の雲と照射における変化(Changes in Tropical Clouds and Radiation)

地球の気候は放射エネルギーの収支、すなわち吸収された日射と宇宙空間へのエネルギ ーの放射のバランス、によって影響を受けている。ChenたちおよびWielickiたちは、人工 衛星からの20年以上のデータを解析し、現在の気候モデルでは容易に説明のつかない、熱 帯のエネルギー収支における10年単位の大きな変化を報告した(2002年2月1日号の報告 p. 838およびp. 841)。Trenberthは、提示された結果は「現状の気候観察システムの足りな い点を明らかにしている」とコメントしながらも、不正確な衛星の較正やサンプリング ・エラー、雲量の記録に変化を持たせることで、信頼できない時系列データと誤った解析 結果を生むことになっている可能性があると言及している。これに応えて、Wielickiたち は、較正エラーでは自分たちの観察結果は説明できないし、また、さらなる研究とより正 確な気候観察およびモデリングのシステムが実際必要ではあるが、「照射の絶え間ない変 化と独立に観察された気候パラメータについて矛盾のない10年単位の変化を支持する現実 の証拠が存在する」と論じている。これらコメント全文は、以下で読むことができる 。(KF)
www.sciencemag.org/cgi/content/full/296/5576/2095a
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