AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science June 7, 2002, Vol.296


速報(Brevia)

ハワイガンの遺伝的多様性は先史時代にすでに減少(Prehistoric Decline of Genetic Diversity in the Nene) Paxinos(p. 1827)による分子データの解析によると、ハワイガンの遺伝的多様性は、ポリ ネシア人の集団がハワイ島に拡大した頃から、大きく減少していた。ハワイ諸島にポリネ シア人が拡大する前の900年以上前には、ハワイガンは諸島のいたるところに存在した 。900〜350年前、ポリネシア人の人口が拡大するにつれ、ハワイガンの遺伝子多様性は急 激に縮小したことが骨に残された遺伝子の分析から推察できる。実際、人間が9つの島の 内、5つの島において、人間の居住地域が拡大した上記期間に、ハワイガンは死滅してい た。クックが到着した1778年には、ハワイガンはハワイ島にしか見られなかったし、20世 紀中ごろには、個体数は30羽以下にまで減少した。(Ej)
Prehistoric Decline of Genetic Diversity in the Nene
   Ellen E. Paxinos, Helen F. James, Storrs L. Olson, Jonathan D. Ballou, Jennifer A. Leonard, and Robert C. Fleischer
p. 1827.

一撃で断ち切れて(Off in a Shot)

走査プローブ顕微鏡は、分子の表面からの脱離の間に起こる一連のステップ全体を精密に 描きだす可能性がある。しかしながら、脱離は、しばしば、分子の拡散速度の大きい温度 で生ずる。特に、分子種の再結合が脱離に先行する場合には、そうなりやすい。そして 、これらの拡散は上記の描像を不明瞭にしてしまう。Durr たち (p.1838) は、近傍のサ イトの拡散を加速せずに、脱離を加速するために、単一ショットのレーザーパルスを用い て、Si(001) 表面上の水素分子を局所的に加熱した。従来の方法によるこの系の加熱の間 には、離脱する水素原子の対は同じ二量体に由来し、二つのダングリング状態のシリコン の軌道はπ結合に類似の結合を形成する。しかしながら、レーザーパルス実験の後は、ダ ングリングボンドは隣接する二量体にわたり対を形成する。 脱離は二量体間の反応を通じて起きている可能性があり、これは脱離過程に対する既知メ カニズムと一致していると思われる。(Wt)
Probing High-Barrier Pathways of Surface Reactions by Scanning Tunneling Microscopy
   M. Dürr, A. Biedermann, Z. Hu, U. Höfer, and T. F. Heinz
p. 1838-1841.

仕事に対して等価的なこと(Equal to the Task)

可逆過程は熱力学者の活動をより簡潔にさせるが、しかし、その実験は結論を出すことに 多大の待ち時間をかけることが要求される。1997年にJarzynskiは、たとえ不可逆な行程 が平衡状態からはずれても、不可逆過程においてなされる仕事を平衡あるいはシステムの 可逆な自由エネルギー差に関係させるという注目すべき等価的現象を引き出した。捕らえ たことは以下のようであった。より多く不可逆行程が計測されればされるほど、合理的な 標準偏差を得るための試行回数はより多くなる。最近、Liphardtたち(p. 1832; Egolfに よる展望を参照)は、RNAが畳み込まれた形態と、畳み込まれていない形態との間にある RNAの単一分子の数百倍の広がりにまで達する、“Jarzynskiの等価”の実験的検証につい て報告している。(hk)
STATISTICAL MECHANICS:
Far from Equilibrium

   David A. Egolf
p. 1813-1815.
Equilibrium Information from Nonequilibrium Measurements in an Experimental Test of Jarzynski's Equality
   Jan Liphardt, Sophie Dumont, Steven B. Smith, Ignacio Tinoco Jr., and Carlos Bustamante
p. 1832-1835.

ニューロンによる義肢の制御ループを閉じる(Closing the Loop in Neuroprosthetic Control)

神経細胞の研究者たちは、義肢の動きを、運動皮質ニューロンからの信号によって制御し ようと試みてきた。この研究は、大部分オープンループ方式であり、皮質による命令の動 きを義肢を見ることが出来なかった。Taylor たち(p.1829; および KonigとVershureによ る展望記事参照)は、課題の遂行結果を義肢を着けている人が実時間で視覚的フィードバ ックを受けるクローズドループ方式の概念を開発し、これによって運動課題の遂行精度は ずっと高精度になることを見つけた。運動ニューロン群からの信号記録は、訓練中に方向 選択性が再調節される。この発見は、正常な腕の動きと同等の精度、ロバスト性、速度で 、脳による仮想的動きが制御できる可能性があることを示している。(Ej,hE)
NEUROSCIENCE:
Neurons in Action

   Peter König and Paul F. M. J. Verschure
p. 1817-1818.
Direct Cortical Control of 3D Neuroprosthetic Devices
   Dawn M. Taylor, Stephen I. Helms Tillery, and Andrew B. Schwartz
p. 1829-1832.

コロイドによる液体流の制御(Colloidal Control of Fluid Flow)

マイクロフルイディクス系において、流体の流れと混合を制御するために多くの方法が開 発されてきた。しかしながら、この種の方法の多くは電気機械的ポンプや、或いは親水性 と疎水性表面の組み合わせといった流体や表面の持つある固有の性質に依存している 。Terrayたち(p.1841:Burnsによる展望参照)はコロイド粒子を用いて、数マイクロメータ ーの大きさのポンプとバルブを作ることにより道具箱に新たな道具セットを付け加えてい る。このポンプは光学的なトラップにより制御され,前もってプログラムされたパターン によって循環し、ポンプを形成している個々のコロイド粒子を制御する。バルブは受動的 であれ、能動的であれ光学的トラップにより制御される。(KU)
ANALYTIC CHEMISTRY:
Everyone's a (Future) Chemist

   Mark A. Burns
p. 1818-1819.
Microfluidic Control Using Colloidal Devices
   Alex Terray, John Oakey, and David W. M. Marr
p. 1841-1844.

幹細胞を掴まえる(Getting a Grip on Stem Cells)

幹細胞の微小域環境、すなわちニッチは、幹細胞が局在するためにも、幹細胞を補給する ための手がかりを得たり、幹細胞を特異的発生経路に向けるための手がかりを得るために も重要である。Song たち (p. 1855) は、ショウジョウバエの卵巣中の生殖系統の幹細胞 が、どのようにして自分たちのニッチを保持しているのかを調べた。その結果、生殖系統 幹細胞をそのニッチに補給し、隣接するキャップ細胞に固着させることに、E-カドヘリン 仲介の細胞接着がかかわっており、このために生殖系列細胞が分化しないでいることが分 かった。このような接着機構は他の幹細胞の微小域環境にも存在するのかも知れない 。(Ej,hE)
Germline Stem Cells Anchored by Adherens Junctions in the Drosophila Ovary Niches
   Xiaoqing Song, Chun-Hong Zhu, Chuong Doan, and Ting Xie
p. 1855-1857.

氾濫玄武岩の影響範囲が倍に広がる(Big Bad Flood Basalts)

ロシアSiberian Trapsの洪水(氾濫)玄武岩地域における火山活動はペルム紀と三畳紀の 境目の頃に発生し、硫酸や二酸化炭素などのガスを大量に放出し、この期間における大量 絶滅の主要な原因であった可能性が高い。Reichowたちは(p. 1846、Renneによる展望記事 も参照)、シベリア盆地西部のボーリングで入手したサンプルの年代と化学組成を 40Ar/39Ar年代測定法により確定し、この西部の玄武岩がはるか 東方のSiberian Trapsの氾濫玄武岩と対比されることを発見した。この新しい対応関係の 発見により、シベリア氾濫玄武岩の影響範囲と環境に対する影響が従来考えられていたも のの2倍に広がる。(Na,Fj,Og)
GEOLOGY:
Enhanced: Flood Basalts--Bigger and Badder

   Paul R. Renne
p. 1812-1813.
40Ar/39Ar Dates from the West Siberian Basin: Siberian Flood Basalt Province Doubled
   Marc K. Reichow, Andrew D. Saunders, Rosalind V. White, Malcolm S. Pringle, Alexander I. Al'Mukhamedov, Alexander I. Medvedev, and Nikolay P. Kirda
p. 1846-1849.

硫化物から鉱石へ((From Sulfide to Ore)

銅(Cu)や金(Au)鉱床の経済的に価値ある濃度が、酸性のシリカリッチな火成岩に至る中間 生成体の熱水変質により作られる。Halterたち(p.1844)は高感度質量分析装置を用いて 、アルゼンチンのBajo de la Alumbera Mine鉱床からの鉱石における初期熔融含有物中の CuとAuの濃度を測定した。その結果は、金属は最初硫化物熔融体中に濃縮しており、その 後に二次的な熱水変質により遊離して、鉱床中に濃縮されることを示している。(KU,Og)
The Origin of Cu/Au Ratios in Porphyry-Type Ore Deposits
   Werner E. Halter, Thomas Pettke, and Christoph A. Heinrich
p. 1844-1846.

 これがなければ葉を生成できない(Can't Leaf Without Them)

植物間の進化の関連性を調べる時、葉の形が重要である。単葉と複葉、つまり小葉や分裂 のない葉とそれらのある葉、が複数の植物の分類にわたって見られる。Bharathanたち(p 1858;表紙参照)は、様々な分類群の植物の茎頂成長点におけるKNOXIホメオボックス遺伝 子の発現を分析した。KNOXI発現のパターンは、第一の単葉と複葉になる成長点において 異る。またKNOXI発現パターンは、単葉と思われる葉は実は、以前に複葉であった葉の第 二の進化の結果であることを明確にした。(An)
Homologies in Leaf Form Inferred from KNOXI Gene Expression During Development
   Geeta Bharathan, Thomas E. Goliber, Christopher Moore, Sharon Kessler, Thinh Pham, and Neelima R. Sinha
p. 1858-1860.

CNS軸索再生を評価する(Assessing ing CNS Axon Regeneration)

中枢神経系(CNS)のニューロンは、末梢神経系のニューロンと比較すると、障害を受けた 後の自己修復の能力がはるかに弱い。その原因は、環境や周辺のグリアの種類などの差に よることにあるのかもしれないが、ニューロン自体にあるのかもしれない。Goldbergたち (p. 1860;McKerracherとEllezamによる展望記事参照)は、軸索再生能力を研究するために 、CNSの一部である網膜神経節細胞(RGC)をラットから単離した。胚性ラットから単離した RGCsは、初期出生後ラットと比較すると、軸索再生能力が非常に強かった。軸索再生能力 の減少は、RGC軸索が標的に着き軸索成長から樹状突起同化作用に切り換える成長時と相 関した。成長モードの切り換えは、内因性細胞の寿命には関係がなかったが、むしろ隣接 した網膜細胞から発生した信号から生じた。(An)
DEVELOPMENT:
Putting the Brakes on Regeneration

   Lisa McKerracher and Benjamin Ellezam
p. 1819-1820.
Amacrine-Signaled Loss of Intrinsic Axon Growth Ability by Retinal Ganglion Cells
   Jeffrey L. Goldberg, Matthew P. Klassen, Ying Hua, and Ben A. Barres
p. 1860-1864.

免疫の動画化(Animated Immunity)

免疫応答に必要な複雑な細胞間相互作用に関する我々の現在の知見は、その多くが、in vitro操作から、または固定した組織内での現象の断片から得られたものである。3通の報 告が、生きた組織内部での免疫細胞応答のリアルタイム解析について、ここで記載してい る(von Andrianによる展望記事を参照)。2光子技術を使用して組織化されたリンパ組織 中でのT細胞およびB細胞の移動を比較して、Millerたち(p. 1869)は、B細胞に比べて 、T細胞がかなり遠くまで、そしてより速い速度で、広い範囲を移動していることを見い だした。この調査的な行動は、抗原を含ませた場合、集束クラスター化(focused clustering)に向けて転換する。Stollたち(p. 1873)は、改変1光子共焦点イメージン グを使用して、リンパ節中でのナイーブT細胞と樹状細胞(DC)上の抗原との相互作用を 研究した。免疫シナプスの形成および結果として起こりうる活性化T細胞の離脱 (departure)を伴う、長期間の連絡が、抗原を負荷したDCの存在下で観察された 。Boussoたち(p. 1876)は、2光子イメージングを使用して、胸腺細胞の、再集合させた 胸腺器官培養中の胸腺ストロマ細胞との相互作用を研究した。胸腺細胞のポジティブ選択 の結果として生じる認識現象は、胸腺細胞の運動性を促進し、そして胸腺細胞-胸腺スト ロマ細胞接触の期間を増加させた。(NF)
Dynamics of Thymocyte-Stromal Cell Interactions Visualized by Two-Photon Microscopy
   Philippe Bousso, Nirav R. Bhakta, Richard S. Lewis, and Ellen Robey
p. 1876-1880.
Dynamic Imaging of T Cell-Dendritic Cell Interactions in Lymph Nodes
   Sabine Stoll, Jérôme Delon, Tilmann M. Brotz, and Ronald N. Germain
p. 1873-1876.
Two-Photon Imaging of Lymphocyte Motility and Antigen Response in Intact Lymph Node
   Mark J. Miller, Sindy H. Wei, Ian Parker, and Michael D. Cahalan
p. 1869-1873.
IMMUNOLOGY:
T Cell Activation in Six Dimensions

   Ulrich H. von Andrian
p. 1815-1817.

形はあるが、機能はわからない(Form But No Function)

リンパ管は、免疫染色により腫瘍中で検出されたが、転移性癌細胞が腫瘍内リンパ管を経 由してリンパ節に至るかどうかについては知られておらず、腫瘍細胞転移におけるこれら の構造の役割については議論のあるところである。転移のマウスモデルに対して精密な機 能的アッセイを行って、Paderaたち(p.1883;GershenwaldとFidlerによる展望記事を参 照)は、腫瘍の中心領域はリンパ系についての分子マーカーにより染色されるものの、そ の管には機能がないことを示す。リンパ血管形成を刺激する血管内皮増殖因子- C(VEGF-C)の過剰発現により、腫瘍辺縁およびリンパ転移のリンパ表面領域が増加する が、これらの腫瘍は機能的リンパを含まない。この結果から、リンパ転移は、腫瘍辺縁の リンパ管を通じてのみ行われるようであり、この特徴は、癌治療に対して 重要な意味を持っている可能性がある。(NF)
CANCER:
Targeting Lymphatic Metastasis

   Jeffrey E. Gershenwald and Isaiah J. Fidler
p. 1811-1812.
Lymphatic Metastasis in the Absence of Functional Intratumor Lymphatics
   Timothy P. Padera, Ananth Kadambi, Emmanuelle di Tomaso, Carla Mouta Carreira, Edward B. Brown, Yves Boucher, Noah C. Choi, Douglas Mathisen, John Wain, Eugene J. Mark, Lance L. Munn, and Rakesh K. Jain
p. 1883-1886.

細胞中の酸素(Oxygen in the Cell)

酸素に対する、或いは酸素不足に対する細胞の応答は癌や循環器病、或いは発作といった 病気にとって重要である。Minたち(p.1886)はa von Hippel-Lindau tumor suppressor(pVHL)-ElonginB-ElonginC複合体に結合している低酸素―誘導性転写制御因 子(HIF)からの20残基ペプチドの1.85Å分解能での構造を決定し、この応答性へのキーと なる相互作用に関する洞察を得ている。その構造では、ヒドロキシプロリンが相互作用の 特異性と親和性に関する中心的な役割を果たしており、腫瘍変異体におけるホットスポッ トであるpVHL中の一つのサイトに結合していることを示している。この構造は循環器病や 発作の治療に有用な薬剤を作るさいの基礎を与えるものである。(KU)
Structure of an HIF-1-alpha-pVHL Complex: Hydroxyproline Recognition in Signaling
   Jung-Hyun Min, Haifeng Yang, Mircea Ivan, Frank Gertler, William G. Kaelin Jr., and Nikola P. Pavletich
p. 1886-1889.

漬けペンリソグラフィーによってDNAパターン形成(DNA Patterning with Dip-Pen Lithography)

原子間力顕微鏡 (AFM)による基板上への分子のパターニングは、漬けペン方式のナノリソ グラフィーとも呼ばれているが、通常は小さな分子と金の基板を利用している。Demers たち(p. 1836) は、DNAでも、適当な誘導体化が可能であれば、100ナノメートル以下のサ イズで金やシリカ上にパターンを形成できることを示した。どちらの場合も窒化ケイ素 AFMチップがシラン化された。金の場合はDNAはヘキサンチオール基を持つように修飾され た。シリカの表面はメルカプトプロピルトリメトキシシラン (mercaptopropyltrimethoxysilane)で処理され、アクリルアミド基がDNAの5’末端に付 加された。(Ej,hE)
Direct Patterning of Modified Oligonucleotides on Metals and Insulators by Dip-Pen Nanolithography
   L. M. Demers, D. S. Ginger, S.-J. Park, Z. Li, S.-W. Chung, and C. A. Mirkin
p. 1836-1838.

はっきりとしたスーパープルームの境界(A Sharp Boundary on a Superplume)

南部アフリカの直下にあると予想される上部マントルでは、地震波のS波速度が平均的な マントルの値よりも遅いスーパープルームが地震波トモグラフィーの手法により視覚化さ れた。このスーパープルームは、液状の鉄からなる外核と下部マントルの珪酸塩鉱物との 間の相互作用により生じた熱的あるいは化学的な異常により生成されたものと考えられて きた。Niたち(p.1850)は、下部マントルの底部に近いスーパープルームの構造を明らかに 出来るほどの分解能を持つ、一連のSKS波を用いた解析により、スーパープルームが側方 に明確な不連続面(幅が約50キロメートル)を持ち、アフリカプレートが移動する北東方向 に傾いているというモデルを提唱した。鮮明な不連続面が存在することから、プルームは 熱的異常というより化学的異常によって作られていると考 えられる。プルームが傾斜していることは、化学的組成の異常ではマントル対流に関して 安定な構造を維持することができないこと、そして熱的浮力によりプルームが少しばかり 持ち上げられていることを示唆している。(TO,Fj,Og)
Sharp Sides to the African Superplume
   Sidao Ni, Eh Tan, Michael Gurnis, and Don Helmberger
p. 1850-1852.

隕石中にある恒星周辺の塵(Circumstellar Dust in Meteorites)

もっとも原始的な隕石の1つである炭素質コンドライト中にある炭化珪素の粒子は、恒星 周辺雲あるいは超新星から排出されたものに由来すると考えられている。Murchison隕石 から得られた炭化珪素の粒子を透過電子顕微鏡で詳細に調べることで、Daultonたちは 、立方系および六方晶系の2つのポリモルフがあることを明らかにした(p. 1852)。炭化 珪素は多くのポリモルフを形成することができるのだが、これら特定のポリタイプ(同質 異像)は、比較的低温、低圧で形成する。さらに加えて、ナノメートル・スケールでの二 次イオン質量分析によってこれらの粒子の炭素および窒素の同位体分析すると、これらの 粒子は漸近巨星枝炭素星(asymptotic giant branch carbon star; AGB炭素星)の周辺の星 周辺雲において形成したことが示された。恒星近傍の高温度領域で最初に立方 系の粒子が形成し、六方晶系の粒子は恒星からやや離れた低温度の領域で後になって(と きには立方系の粒子への成長を過ぎて)形成したのである。(KF,Nk)
Polytype Distribution in Circumstellar Silicon Carbide
   T. L. Daulton, T. J. Bernatowicz, R. S. Lewis, S. Messenger, F. J. Stadermann, and S. Amari
p. 1852-1855.

海馬の苔状線維LTPの再評価(Reassessing Hippocampal Mossy Fiber LTP)

海馬にある苔状線維-CA3シナプスの長期増強(LTP)の発現は、シナプス前現象であるとい うことは、一般に合意されるようになってきた。そのLTP誘導部位については、しかし 、まだ議論の余地がある。Contractorたちは、細胞外リガンド適用だけでなく、ペプチド と抗体の細胞内注入をも用いて、そのLTP誘導におけるGRIPタンパク質とephrinB受容体と のシナプス後相互作用の役割を実証した(p. 1864)。彼らのデータは、ephrinB受容体- Bephrinリガンド相互作用という逆行性情報伝達経路が、神経伝達物質遊離確率の長期変 化のシナプス前発現とシナプス後誘導とを結びつけている、ということを示唆するもので ある。(KF)
Trans-Synaptic Eph Receptor-Ephrin Signaling in Hippocampal Mossy Fiber LTP
   Anis Contractor, Cheryl Rogers, Cornelia Maron, Mark Henkemeyer, Geoffrey T. Swanson, and Stephen F. Heinemann
p. 1864-1869.

敗血症における情報伝達(Signaling in Sepsis)

活性化したタンパク質Cは、正常な場合は、敗血症において保護的な役割を果たしている が、その機構はいまだ知られていなかった。Riewald たちは、 トロンビン受容体(タンパ ク質分解酵素によって活性化される受容体、すなわちPAR1)がタンパク質Cの情報伝達の標 的であるということを見出した(p. 1880)。この機構は、敗血症における宿主防御システ ムを制御する免疫修飾的ケモカイン(chemokine)の情報伝達経路について洞察を与えてく れるものである。(KF)
Activation of Endothelial Cell Protease Activated Receptor 1 by the Protein C Pathway
   Matthias Riewald, Ramona J. Petrovan, Aaron Donner, Barbara M. Mueller, and Wolfram Ruf
p. 1880-1882.

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