AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science April 5, 2002, Vol.296


穀物と共に(Going With the Grain)

別々の二つの研究機関がイネゲノムに関する高品質なドラフト配列(draft sequence、正 式版ではない配列).を報告してるが、この報告からこの重要な食糧穀物の農業上が発展が 促進されることが期待される。Yuたち(p. 79)はイネのindica種の配列を、Goffたち(p. 92)はイネのjaponica種の配列を決定している。配列比較によって、この代表的な二つの イネの系統がどのように分岐してきたかが明らかにされるであろう。イネゲノムは、又 、小麦やとうもろこしといった関連する穀物のより大きなゲノムを研究するための有用な ロードマップを与えるものである〔シロイヌナズナの相補DNAクローンに関するSeki(p. 141)の論文も参照 〕。関連した内容には、イネゲノム研究の重要な側面についての要約 が述べられているが、その中では、折り込みのチャートやデータの幾つかにアクセスが可 能な協定を論じた論説、及び最終的で完全な配列決定までイネゲノム配列決定の継続を呼 びかけた編集者へのレターを含んでいる。展望記事において、RonaldやLeung と同様に Bennetzenはゲノム科学と農業科学に関してその意味するところを論じており、Cantrell とReevesは、イネゲノムの配列決定が世界的な食糧保全を促進させる面でのその関連性を 論じ、Serageldinは世界的な経済発展と食糧保全間の相互の影響に関して論じている。ニ ュース解説では、多くの様々なイネゲノム配列研究機関が行ってきたことの背景や、Goff たちの論文のデータ公表に導くCelera-type の協定、及びYuたちの論文を著した中国グル ープのプロファイルに関して論じている。(KU)
A Draft Sequence of the Rice Genome (Oryza sativa L. ssp. indica)
   Jun Yu, Songnian Hu, Jun Wang, Gane Ka-Shu Wong, Songgang Li, Bin Liu, Yajun Deng, Li Dai, Yan Zhou, Xiuqing Zhang, Mengliang Cao, Jing Liu, Jiandong Sun, Jiabin Tang, Yanjiong Chen, Xiaobing Huang, Wei Lin, Chen Ye, Wei Tong, Lijuan Cong, Jianing Geng, Yujun Han, Lin Li, Wei Li, Guangqiang Hu, Xiangang Huang, Wenjie Li, Jian Li, Zhanwei Liu, Long Li, Jianping Liu, Qiuhui Qi, Jinsong Liu, Li Li, Tao Li, Xuegang Wang, Hong Lu, Tingting Wu, Miao Zhu, Peixiang Ni, Hua Han, Wei Dong, Xiaoyu Ren, Xiaoli Feng, Peng Cui, Xianran Li, Hao Wang, Xin Xu, Wenxue Zhai, Zhao Xu, Jinsong Zhang, Sijie He, Jianguo Zhang, Jichen Xu, Kunlin Zhang, Xianwu Zheng, Jianhai Dong, Wanyong Zeng, Lin Tao, Jia Ye, Jun Tan, Xide Ren, Xuewei Chen, Jun He, Daofeng Liu, Wei Tian, Chaoguang Tian, Hongai Xia, Qiyu Bao, Gang Li, Hui Gao, Ting Cao, Juan Wang, Wenming Zhao, Ping Li, Wei Chen, Xudong Wang, Yong Zhang, Jianfei Hu, Jing Wang, Song Liu, Jian Yang, Guangyu Zhang, Yuqing Xiong, Zhijie Li, Long Mao, Chengshu Zhou, Zhen Zhu, Runsheng Chen, Bailin Hao, Weimou Zheng, Shouyi Chen, Wei Guo, Guojie Li, Siqi Liu, Ming Tao, Jian Wang, Lihuang Zhu, Longping Yuan, and Huanming Yang
p. 79-92.
A Draft Sequence of the Rice Genome (Oryza sativa L. ssp. japonica)
   Stephen A. Goff, Darrell Ricke, Tien-Hung Lan, Gernot Presting, Ronglin Wang, Molly Dunn, Jane Glazebrook, Allen Sessions, Paul Oeller, Hemant Varma, David Hadley, Don Hutchison, Chris Martin, Fumiaki Katagiri, B. Markus Lange, Todd Moughamer, Yu Xia, Paul Budworth, Jingping Zhong, Trini Miguel, Uta Paszkowski, Shiping Zhang, Michelle Colbert, Wei-lin Sun, Lili Chen, Bret Cooper, Sylvia Park, Todd Charles Wood, Long Mao, Peter Quail, Rod Wing, Ralph Dean, Yeisoo Yu, Andrey Zharkikh, Richard Shen, Sudhir Sahasrabudhe, Alun Thomas, Rob Cannings, Alexander Gutin, Dmitry Pruss, Julia Reid, Sean Tavtigian, Jeff Mitchell, Glenn Eldredge, Terri Scholl, Rose Mary Miller, Satish Bhatnagar, Nils Adey, Todd Rubano, Nadeem Tusneem, Rosann Robinson, Jane Feldhaus, Teresita Macalma, Arnold Oliphant, and Steven Briggs
p. 92-100.
Functional Annotation of a Full-Length Arabidopsis cDNA Collection
   Motoaki Seki, Mari Narusaka, Asako Kamiya, Junko Ishida, Masakazu Satou, Tetsuya Sakurai, Maiko Nakajima, Akiko Enju, Kenji Akiyama, Youko Oono, Masami Muramatsu, Yoshihide Hayashizaki, Jun Kawai, Piero Carninci, Masayoshi Itoh, Yoshiyuki Ishii, Takahiro Arakawa, Kazuhiro Shibata, Akira Shinagawa, and Kazuo Shinozaki
p. 141-145.

ねじれる太陽(Sun Twists)

太陽の11年周期の磁気活動変化は太陽黒点密度の変化だけでなく、太陽表面に発生するプ ラズマの帯の回転率の緯度による変化にもあらわれる。Vorontsovたちは(p. 101、Toomre による展望も参照)、太陽圏観測衛星(SOHO: Solar andHeliospheric Observatory)により 観測された太陽内部の音響重力波データを用いて、これら太陽内部の地域的な帯の動きを 6年間にわたり追跡した。太陽の対流ゾーン全体が、この帯の差動回転率と緯度による変 化に関与している。これらの測定結果は、観測された太陽表面の特徴及び太陽磁場と、対 流ゾーンの基部に存在すると考えられている発電機構との関係を明確化する知見を与える だろう。(Na)
SOLAR PHYSICS:
Enhanced: Order Amidst Turbulence

   Juri Toomre
p. 64-65.
Helioseismic Measurement of Solar Torsional Oscillations
   S. V. Vorontsov, J. Christensen-Dalsgaard, J. Schou, V. N. Strakhov, and M. J. Thompson
p. 101-103.

小惑星から身をかわす(Dodging Asteroids)

小惑星の軌道に揺動を与えるプロセスは非線型な特性を持っているため、通常、数十年以 上先の小惑星の軌道を予言することは困難である。Giorgini たち(p.132; Kerr によるニ ュース解説を参照のこと) は、小惑星 29075 (1950DA) は、ある特別な場合を与えている ことを認識していた。数十年にわたって集められた、広範な電波域と光学域のデータ、揺 動を減少させる傾いた軌道、以前は認識されていなかった、それの軌道の不安定さを調節 する重力的共鳴が、数百年を超える正確な軌道予測を可能としている--この軌道には、 2880年3月に起こるかも知れない地球との衝突も含まれている。吸収した太陽エネルギ ーの小惑星表面からの非等方な熱の再輻射(Yarkovsky 効果)は、長期間ではその軌道を著 しく変える可能性があるため、軌道シミュレーションの最大の不確実さは、29075 の未知 の表面特性に関係している。Brevia において、Spitale (p.77) は、潜在的には、小惑星 の表面を変化させることで小惑星による危険を緩和することができ、Yarkovsky 効果は地 球との衝突を避けるに十分であることを示している。(Wt)
Asteroid Hazard Mitigation Using the Yarkovsky Effect
    Joseph N. Spitale
p. 77.

アフリカの内部へ(Into Africa)

Johnsonたち(p.113; Bakerによる展望記事参照)により集められた、マラウィ湖における 生物起源による二酸化珪素の集積の記録は、11000年前から25000年前の期間に北半球の寒 冷な気候条件と、赤道下のアフリカのマラウィ湖付近を吹く北風が原因でもたらされる珪 藻の高い生産量との関係を示している。マラウィ盆地を吹くより頻繁な北風は、熱帯収束 帯がより北方へ移動した結果であったかもしれない。この解析は、この堆積のNb-Ti率が 根拠となっている。この比率は、生物による二酸化珪素の集積率と連動して大まかに変化 し、マラウィ湖の北部地方から来る火山灰の量によって支配されている。(TO)
PALEOCLIMATE:
Trans-Atlantic Climate Connections

   Paul A. Baker
p. 67-68.
A High-Resolution Paleoclimate Record Spanning the Past 25,000 Years in Southern East Africa
   Thomas C. Johnson, Erik T. Brown, James McManus, Sylvia Barry, Philip Barker, and Françoise Gasse
p. 113-132.

コロイドを制御する。(Controlling Colloids)

分子によるガラス状態や結晶形成に関する考察には、より容易に可視化ができるコロイド 粒子の類似プロセスを研究したり操作したりすることによって得られる(Frenkelによる展 望参照)。ある物質の様々なアモルファス状態が,水で観測されたと同じように異なる密度 を持つことが見出されている。Phamたち(p. 104)はシミュレーションと理論と実験を組み 合わせて、コロイドの異なる二つのガラス相が粒子間力の特性に依存して形成されること を確認している。コロイドの高濃度において、粒子は互いに密に詰まり、反撥力に基づい たガラスを形成する。非相互作用の高分子を加えると、その構造を拡げるような付加的反 撥力をもたらし、ガラスを溶融させる。しかしながら、更に高分子を加えるとコロイド粒 子間に引力が作用して別のガラス相を形成する。大きな(L)コロイドと小さな(S)コロイド の二成分結晶において、原子的構造に類似な結晶構造,例えばAlB2の構造に 類似のLS2構造が得られる。濃厚な系でS:L のサイズ比の接近した領域での研 究により、Volikovたち(p. 106)は一層毎のデポ技術を用いて、コロイド結晶を作ってい る。彼らは、単にLS2とLS構造を複製しただけでなく、処理により原子的類似 体を持たないLS3構造を得た。二つの材料から結晶を組み立てることにより 、彼らは選択的に小さなコロイド粒子を取り除いた後に、六方晶系の疎に充填した結晶を 作り上げた。(KU)
Multiple Glassy States in a Simple Model System
    K. N. Pham, A. M. Puertas, J. Bergenholtz, S. U. Egelhaaf, A. Moussaid, P. N. Pusey, A. B. Schofield, M. E. Cates, M. Fuchs, and W. C. K. Poon
p. 104-105.
Layer-by-Layer Growth of Binary Colloidal Crystals
    Krassimir P. Velikov, Christina G. Christova, Roel P. A. Dullens, and Alfons van Blaaderen
p. 106-109.
COLLOIDAL SYSTEMS: Playing Tricks with Designer "Atoms"
    Daan Frenkel
p. 65-66.

鳥類、胆汁、そして繁殖(Birds, Bile, and Breeding)

鳥類は生理的あるいは環境からの合図によりいつが産卵の最もよい時期であるかを決める が、学習も重要な役割を果たしている。Griecoたち(p.136; Withgottによるニュース記事 参照)は、オランダのある森にいるアオガラ(blue tits)を調査して、メスが経験する1年 間の食料の供給は、次の年の産卵日に影響を与えることを発見した。巣ごもりの期間に食 料の入手可能性が増加することで、次の年には遅れて産卵することになる。ウミヤツメ (sea lampreys)のメスは、相手となるオスがすでに築いている巣にたどり着くために、遠 路を海流に逆らって旅しなければならない。メスは、オスが放つ化学的な目じるしを辿る が、ステロイドも含んだ魚類の性フェロモンは短い範囲でした通用しない。Liたち (p.138)は、ウミヤツメのオスは、胆汁酸を放つ彼らの位置と生殖能力とをメスにこうし た遠い回遊の距離を隔てて伝えることが出来ることを明らかにした。(TO)
Bile Acid Secreted by Male Sea Lamprey That Acts as a Sex Pheromone
   Weiming Li, Alexander P. Scott, Michael J. Siefkes, Honggao Yan, Qin Liu, Sang-Seon Yun, and Douglas A. Gage
p. 138-141.
ANIMAL BEHAVIOR:
Last Year's Food Guides This Year's Brood

   Jay Withgott
p. 29-31.
Evidence for the Effect of Learning on Timing of Reproduction in Blue Tits
   Fabrizio Grieco, Arie J. van Noordwijk, and Marcel E. Visser
p. 136-138.

Cdc13は折り畳みに関与する(Cdc13 Joins the Fold)

真核細胞の染色体末端は、テロメアと呼ばれる特殊な核タンパク質複合体によりキャップ されている。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)で使用されるテロメア一本鎖(ss) DNA結合タンパク質であるCdc13は、他の生物におけるテロメア末端結合タンパク質とはそ のアミノ酸配列において無関係である。Mitton-Fryたち(p. 145)は、Cdc13 DNA結合ド メインおよびテロメアssDNAを含有する複合体の溶液構造を決定し、そして繊毛虫のテロ メア末端結合タンパク質とはその一次配列において配列相同性がないにもかかわらず、 Cdc13が、DNA結合に対して、繊毛虫のテロメア末端結合タンパク質の場合と同一の構造モ チーフ--いわゆる"OB折り畳み構造"(オリゴヌクレオチド/オリゴヌクレオチド結合折り 畳み構造)--を使用することを見いだした。(NF)
Conserved Structure for Single-Stranded Telomeric DNA Recognition
   Rachel M. Mitton-Fry, Emily M. Anderson, Timothy R. Hughes, Victoria Lundblad, and Deborah S. Wuttke
p. 145-147.

クロマチンアセチル化の起源を探る(Tracking the Origins of Chromatin Acetylation)

クロマチン構造の修飾は、真核生物における遺伝子発現の制御において中心的な役割を果 たしており、その一方で古細菌においては、遺伝子制御は細菌様の単純なリプレッサーに より行われていると考えられている。酵母のクロマチン動態において中心的な働きをする 、NAD(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)依存的なタンパク質脱アセチル 化活性を有するSir2は、原核生物、古細菌そして真核生物にわたって高度に保存されてい る。Bellたち(p. 148)は、古細菌のSulfolobus solfataricusから得たSir2が、クロマ チンタンパク質AlbaのDNA結合活性を、そのアミノ末端のリジン残基のうち2つを脱アセチ ル化することにより、修飾すること(上昇させること)を示す。この工程は次に、in vitroにおいてAlbaが転写を抑制する能力を促進する。これらの結果から、Sir2ファミリ ータンパク質が転写に対してどのように影響を与えているかについてのパラダイムが提供 され、そしてアセチル化によるクロマチン構造の制御が古細菌および真核生物の共通の祖 先において生じたことが示唆される。(NF)
The Interaction of Alba, a Conserved Archaeal Chromatin Protein, with Sir2 and Its Regulation by Acetylation
   Stephen D. Bell, Catherine H. Botting, Benjamin N. Wardleworth, Stephen P. Jackson, and Malcolm F. White
p. 148-151.

情報伝達の内外(The Outs and Ins of Signaling)

細胞接着の中心となるインテグリンは、αとβの膜貫通サブユニットからなる細胞表面分 子である。その細胞外領域は、アルギニン・グリシン・アスパラギン酸(Arg-Gly-Asp)ト リペプチドのモチーフを含む外部リガンドと結合し、これによって多くの細胞表面受容体 に共通する標準的な「外から内へ」の情報伝達を果している。「外から内へ」とは、細胞 内領域へ伝達された内部信号が外部領域のリガンド結合の適格性を変化させることである 。Xiongたち(p 151)は、インテグリンαV-β3の細胞外部分とα環状ペプチドの複合体の 構造を発表している。Arg-Gly-Asp残基による接触は、αとβのサブユニットの相対配向 の立体配置の変化を起こす。(An)
Crystal Structure of the Extracellular Segment of Integrin ヲチVヲツ 3 in Complex with an Arg-Gly-Asp Ligand
   Jian-Ping Xiong, Thilo Stehle, Rongguang Zhang, Andrzej Joachimiak, Matthias Frech, Simon L. Goodman, and M. Amin Arnaout
p. 151-155.

ダメージコントロール(Damage Control)

損傷した組織の修復が成功するかどうかは、細胞外基質の代謝回転で生成した生成物の除 去に依存する。Tederたち(p 155)は、この過程に重要であるのはCD44であることの直接証 拠を提供している。CD44は、マトリックスタンパク質 hyaluronanの受容体である。通常 は2週間内で解決する肺損傷のモデルでは、CD44発現を欠乏したマウスは、傷害した部位 において持続的な炎症細胞と低分子量のhyaluronan断片によって引き起こされる致死的肺 炎症が発生した。この媒介物の正常な除去がトランスフォーミング増殖因子-βの活性化 に関与し、その原因のほとんどは肺の実質細胞ではなく、造血由来細胞におけるCD44発現 であった。(An)
Resolution of Lung Inflammation by CD44
   Priit Teder, R. William Vandivier, Dianhua Jiang, Jiurong Liang, Lauren Cohn, Ellen Puré, Peter M. Henson, and Paul W. Noble
p. 155-158.

インターカレーションされた C60 の構造(Structure of Intercalated C60)

最近、haloform でインターカレーションされた C60 において発生する 117K の電界誘導型超伝導が観察されたことにより、C60は銅塩の超伝導体にもっと も近い競争相手となった。C60 格子へより大きな原子を添加し、その結果を 説明するために提案された直感的な描像は、Fermi レベルにおける電子密度の増加に関係 しているものである。その結果、それは、格子の膨張を伴うはずのものである。 Dinnebier たち (p.109) は、この単純なシナリオに疑問を投げかけている。彼らは 、X線散乱から、格子は確かに膨張しているが、そうなっているのは面間の間隔が拡大し ただけであることを示している。面内の構造はほとんど同じであり、これは超伝導のメカ ニズムとしてより複雑な描像が求められていることを示唆している。(Wt)
Structure of Haloform Intercalated C60 and Its Influence on Superconductive Properties
   Robert E. Dinnebier, Olle Gunnarsson, Holger Brumm, Erik Koch, Peter W. Stephens, Ashfia Huq, and Martin Jansen
p. 109-113.

形質発現の比較(Comparing Expressions)

シロイヌナズナ(Arabidopsis)のゲノムのコミュニティの重要な資源について、Sekiたち (p. 141).が報告している。シロイヌナズナの発現された遺伝子全部を同定する努力に際 して、著者たちは150,000種以上の相補的DNAをクローン化し、これらの3’末端ESTを 14,668の非冗長なcDNAグループに分類した。これは全シロイヌナズナ遺伝子全体の予測遺 伝子の約60%に達する。更に、非冗長な14,034のcDNAグループから5' ESTを取り出し、プ ロモータデータベースを構築した。これらのデータベースとゲノム全体の解析から得られ る発現予測を比較することによって、これらの予測アルゴリズムが実際に転写された遺伝 子とどの程度一致するか評価することができる。(Ej, hE)
Functional Annotation of a Full-Length Arabidopsis cDNA Collection
   Motoaki Seki, Mari Narusaka, Asako Kamiya, Junko Ishida, Masakazu Satou, Tetsuya Sakurai, Maiko Nakajima, Akiko Enju, Kenji Akiyama, Youko Oono, Masami Muramatsu, Yoshihide Hayashizaki, Jun Kawai, Piero Carninci, Masayoshi Itoh, Yoshiyuki Ishii, Takahiro Arakawa, Kazuhiro Shibata, Akira Shinagawa, and Kazuo Shinozaki
p. 141-145.

アウターリミッツ(Outer Limits)

異質染色質との会合を介しての、DNAとの制限された接触性は、遺伝子制御の重要な機構 である。発芽酵母においては、遺伝子の抑圧もまた、核の周縁部において生じる。しかし 、同様の機構がより高等な真核生物にも存在するかどうかははっきりしない。2次元およ び3次元の蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH: fluorescence in situ hybridization)を用いて、Kosakたちは、B細胞免疫グロブリン(Ig)遺伝子が、非B細胞に おいては核の周縁部と優先的に結びつくが、B細胞においては中心部に配置される、とい うことを観察した(p. 158)。こうした核における位置の違いがIg遺伝子の再編成と発現を 調節しているという考えは、核の周縁部からの移動がIg遺伝子の再編成を活性化すると知 られている信号を拒絶してきた細胞に限られているという観察結果によって支持された 。さらに、大きなIg重鎖の座位のコンパクションは、それが中心部に位置するときに生じ るのであり、このことはV(D)J再編成の間にVH遺伝子セグメント同士が非常に近くにある 必要があるということと一致する。(KF)
Subnuclear Compartmentalization of Immunoglobulin Loci During Lymphocyte Development
   Steven T. Kosak, Jane A. Skok, Kay L. Medina, Roy Riblet, Michelle M. Le Beau, Amanda G. Fisher, and Harinder Singh
p. 158-162.

カリフォルニア海流とDevils Holeと更新世気候(The California Current, Devils Hole, and Pleistocene Climate)

Herbertたちは、現在カリフォルニア海流が支配している海域の海洋表面温度(SST)が過去 の5度の氷河最盛期後の退氷の1万年から1万5千年前に温まったということ、しかし現在の カリフォルニア海流の南では退氷前の温度上昇がなかったということ、を発見した (2001年7月6日号の記事 p. 71)。このことから、彼らは、この海域における早い時期の温 暖化は、地球規模での変化を表しているのではなく、Laurentide氷床の成長によってカリ フォルニア海流が弱まったことを示しており、Devils Holeの記録は、「氷河時代の軌道 ('Milankovich') 理論に対する根本的な難題にはなっていない」と結論した。Winogradは コメントを寄せ、さまざまな緯度における退氷前の温暖化の証拠を引いて、「カリフォル ニア海流SSTとLaurentide氷床とを結び付ける興味をそそる考え」は、その研究が Milankovich理論に含まれる矛盾を解決すると「断言できるものではなく、疑問点が多い 」と、断じている。Herbertたちは、これに応えて、自分たちの「広域的な気候のプロセ スは重要であり、それは保存された古気候記録に表れているという結論」を支持するいく つかの議論を提供している。これらコメント全文は、
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/296/5565/7a で読むことができる。(KF)
Technical Comments
The California Current, Devils Hole, and Pleistocene Climate
   Isaac J. Winograd, T. D. Herbert, J. D. Schuffert, D. Andreasen, L. Heusser, M. Lyle, A. Mix, A. C. Ravelo, L. D. Stott, and J. C. Herguera
p. 7.

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