AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science April 27, 2001, Vol.292


炭そ病解毒薬(Anthrax Antidote)

炭そ病にたいして有効な予防ワクチンはあるけれども、この病気は自然界では珍らし く軍関係者を除くと広範囲な利用はなされていない。しかしながら、もし炭そ病に関 連したテロリスト事件が起こると、緊急の大量使用に治療ワクチンが間に合う必要が ある。Sellmanたち(p.695;OlsnesとWescheによる展望参照)は、多成分の炭そ菌の キーとなる分子の変異体をつくることによって炭そ病治療法の原材料を開発した。こ れは優性ネガティブ変異体で、感染防御抗原と呼ばれる七つのサブユニット成分中に たった一つの変異体サブユニットを組み込むことで、細胞膜を通過する活性成分の転 移を抑制することによって全毒素の細胞活性をブロックすることを意味する。本物の 炭そ菌成分を与えられたネズミは2時間以内に死ぬが、しかし優性ネガティブ変異体 菌を与えられたネズミは実験の終りまで症状もなく生き延びていた。(KU)

銀河系ハローを覗き込む(Glimpsing Our Galaxy's Halo)

われわれの銀河系のハローは、大部分はダークマターからなっていると考えられてい る。このダークマターの存在は、明るく観測可能な銀河系内の天体に対する重力的な 影響から検知されているが、これ以外は、このダークマターの特性は明らかではな い。最近の研究は、冷たい白色矮星がハローの一要素である可能性が指摘されてき た。この白色矮星は、もはや核融合によりエネルギーを発生しておらず、いまや冷却 して視野から姿を消しつつある小さくて極限的に高密度な星である。Oppenheimer た ち (p.698; Sincell による3月23日のニュース記事を参照のこと) は、南銀極(South Galactic Cap)近傍の領域をサーベイし、大きな空間的速度を有する極端にかすかな 古い白色矮星の総数を観測した。その空間的速度は、これらの明るくない星が銀河ハ ローの一部であることと矛盾していない。さらに、この数はハロの"ダークマター"の およそ2%を占めている。(Wt,Nk)

南太平洋におけるマントル流(Mantle Flow in the South Pacific)

南西太平洋にあるフィジーやトンガの火山島は複雑なプレート境界上に位置してい る。太平洋プレートは、トンガ海溝とLau背弧(backarc)海盆が広がりつつあるすぐ西 の海溝とに沿って、インド-オーストラリアプレートの下に沈み込みつつある。Smith たち(P.713)は、これらの島の下にあるマントルの流れの方向を推定するために、地 上のローカルな観測点からその海床までの地震波データを用いた。マントル流は、 フィジーから Lau背弧海盆に向かって北から南の方向に、そしてトンガから Lau背弧 海盆の方向へ東から西へと流れている。Lau背弧海盆の広がりに沿って、マントル流 が上昇しているが、それはサモアホットスポットプルームがその海盆に入り込んでい るからである。(TO)

強いレーザ場での選択的結合切断(Selective Bond Breaking with Strong Laser Fields)

結合選択的な光化学は長年研究されてきたが、ゴールには到っていない。困難さの一 つは、光励起状態が予想出来ないぐらい急速にそのエネルギーを再分布するからであ る。Levisたち(p.709;HurleyとCastlemanによる展望参照)は、「強いレーザ場」 ("strong‐field")のパルスの位相と振幅を調整する閉ループフィードバックアルゴ リズムによって、異なる反応物が選択的に得られることを報告している。非常に強い レーザパルス(1013W/cm2)において、分子の様々な固有状態 は多光子吸収によって共鳴-イオン化(resonance‐ionized)する;その状態はレーザパ ルスによってつくられた強い電場で生じるシュタルクシフト(Stark shifting)によっ て共鳴する。パルス形状を「調整」("training")することにより、彼らは、例えばア セトフェノンを解離してC6H5COとCH3を作らせ、 或いは再配置してトルエンとCOを作ったり、そのどちらでもコントロールしてつくる ことが出来る。(KU)

古代ペルーの初期の都市(Early Cities of Preceramic Peru)

アメリカ大陸で最初の大規模な定住地はおよそ5000年前のペルー海岸近くのものと思 われている。これらの定住地では、灌漑と集中的な耕作が行われ、記念碑建造や都市 計画も行われ初めていた。Shady Solisたちは(P. 723、Pringleのニュース記事も参 照)、ペルーSupe渓谷の最も古く、恐らく最大規模の定住地であるCaralで行った放射 性同位元素による年代測定データを示している。この年代測定データは約4500年前ま で遡る。Caralは内陸で、Supe渓谷にある12個所以上の同様の定住地と同様に、アメ リカ大陸の複雑社会の始まりでもありそうだ。(Na)

カーボンナノチューブをえり分ける(Sorting Out Carbon Nanotube Conductivity)

カーボンナノチューブは、多壁型(multiwalled MWNT)か、単一壁型(single-walled SWNT) かにかかわらず、金属性と半導体性のチューブの混合物として造られる。二つ の報告は、構造が導電性にどのように影響し、金属あるいは半導体の特性を選択する ためにどのように変化させることができるかを研究している( Dresselhaus の展望記 事を参照のこと)。SWNT の"ひじ掛け椅子"と"ジグザグ"配置の両方とも、金属性であ ると考えられてきたが、化学結合における歪みを考察した最近の理論的研究は、その 解釈に疑いを投げかけている。Ouyang たち (p.702) は、ひじ掛け椅子型およびジグ ザグ型の単一および束となった SWNT の低温走査型トンネル顕微鏡によるスペクトル を取り、ジグザグ型は真の金属ではなく、チューブの直径に依存したフェルミレベル においてエネルギーギャップを示すことを明らかにした。デバイスへの応用にとっ て、電極を接続するナノチューブの導電性を制御する方法は有利であろう。Collins たち (p.706) は、空気中でチューブに高電流を流すという極端な方法により、MWNT の最外層あるいは SWNT の特定のチューブだけを選択的に除去し、金属性あるいは半 導体性のどちらかの接点を取りうることを示している。電界効果型ナノチューブトラ ンジスターの配列全体は、このような方法で作成された。(Wt)

ミトコンドリアの死のメッセージを制御する(Managing Mitochondrial Mortality Messages)

タンパク質のBAKおよびBAXは、「BH3領域のみ(BH3-domian-only)」のタンパク質ファ ミリーのプロ・アポトーシスメンバーの一員である。こう呼ばれているのは、BAKと BAXが、BCL-2タンパク質ファミリーと、BCL-2相同な4つの領域の中で、3番目の領 域だけを共有しているからである。M. C. Weiたち(p. 727)は、このBAKとBAXがミト コンドリアに作用するアポトーシス信号の門番として機能している証拠を示した。細 胞表面上の死の受容体(death receptors)からの信号によってtBID(もう1つのBH3領 域のみファミリーメンバーの1つ)の活性化を促し、これによってチトクロームcをミ トコンドリアから放出させ、引き続き細胞死を起こす。BAKかBAXの一方だけが欠如す る細胞では依然としてtBIDに感受性を持っているが、この両タンパク質とも欠如する 細胞ではtBIDで誘導されるアポトーシスが生じなかった。原形質膜、核、そして、小 胞体からの多様な信号はすべて、BAKやBAXの存在が必要であり、従ってミトコンドリ アに集中する信号を通して細胞死を促進しているように見える。(Ej,hE)

RNAを1分子ずつ引き剥がす(Ripping Up RNA, One Molecule at a Time)

1つの分子の折り畳みの分析によって、全体的測定では不可能な、生物学的な力や折 り畳みの様子を洞察することが可能になる。溶液中の全体的測定では、多種混合した り、多数の折り畳み経路が存在することによって紛らわしいことが多い。RNAの折り 畳みの研究において、Liphardtたち(p. 733;および、Fernandez たちによる展望記事 参照)は、2つのポリエチレンビーズの間で大きく複雑になりつつある3種のRNAを 個々につなぎ留めた。1つのビーズはオプティカルトラップに捕獲され、もう1つの ビーズは圧電素子のアクチュエータつながれ、これはRNAを剥ぎ取るのに利用され る。最小RNAのヘアピンは、これはバルクでの予想のようにゆっくり解き放たれるの ではなく、予想外に同時にバラバラになった。また、2つの小さなRNAは、一定の力 が掛けられたとき、畳み込まれた状態と、解かれた状態の間を繰り返し「ホップ」し た。小さなRNAと異なり、最大のRNAは「脆性」構造を有しており、機械的変形に耐性 を持つがある限界点を越えると「割れる」。(Ej,hE)

体細胞を幹細胞に(Turning Somatic Cells into Stem Cells)

幹細胞は、変性疾患での組織修復のためや遺伝子治療において大きな可能性を提供 するが、しかしそれぞれの患者から幹細胞を単離する必要があるという、限界が存在 する。Wakayamaたち(p. 740)は、クローニングの研究および幹細胞の研究において 一歩前進した。彼らは、それ自体体細胞の核移植により作製されたマウス未分化胚芽 細胞から、胚性幹細胞(ES細胞)を作製し、これをntES細胞と命名した。ntES細胞は 完全な発生能力を有しており、分化したニューロンや配偶子(卵子、精子)を含む 様々な細胞型に分化した。そして、ntES細胞の核を核移植に使用して、生存可能なク ローンを作製した。この仕事により、複合的な遺伝子変異体からのES細胞株の作製が 可能になり、そしてヒトの医薬に対しても重要な用途がもたらされるだろう。(NF)

鎖状のウィルスコーティング(Creating a Catenated Viral Coat)

多くのウィルスは、ウィルス前駆体から感染性ビリオンへの成熟の過程で立体構造 的変化を行う。Conwayたち(p. 744)は、バクテリオファージHK97における前駆体カ プシド(Prohead-II)から成熟カプシド(Head-II)へのトランジションの概要をこ こで提供する。立体構造的変化は、主として、2つのモチーフが再構築(リフォール ディング)されるのに伴って、約40度のドメイン回転が起こることにより引き起こさ れる。拡張されかつ薄い成熟カプシドは、界面で覆い隠された表面領域が増加するこ とにより、そして結果として鎖状トポロジーを引き起こす架橋により、安定化され る。パッケージングが起こる間、DNAと負に荷電したProhead IIの内部表面との間で の反発によりトランジションが引き起こされる。(NF)

DNA試験の結果(Submitting to DNA Testing)

Wistar研究所が開発した経口ポリオワクチン(OPV)は、中央アフリカで100万人以 上のヒトに投与されている。このワクチンはサル免疫不全ウィルスに感染したチンパ ンジー腎臓で作られたものでありこのためAIDSの全世界的流行が引き起こされた、と 主張されてきた。Poinarたち(p. 743;Cohenによるnews storyを参照)は、ポリメ ラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、Wistar研究所によって提供されたサンプル中に チンパンジーDNAが存在するかどうかを試験した。彼らの結果から、ワクチン生成の ために使用された霊長類はマカク属のサルであることがわかり、AIDSの起源について のOPV仮説を支持する結果は何らでていない。(NF)

チベットの下にある弱い層(Weak Layers Beneath Tibet)

チベット高原、その南端にヒマラヤを含む厚い大陸地殻の広大な地域は、アジアとイ ンドの衝突によって作られた。W. Weiたち(p.716)は、北から南へ高原を越えて地球 磁場の調査を幾度か行い、地殻のレオロジー(rheology)を決定し、その構造的進化を 解明した。彼らは高原南部の地殻に高い導電率の浅い地層にを発見し、それを流体状 か、部分溶解、あるいはその双方が原因であるとした。高い導電率の深い層が高原北 部下のマントルにおいて推定され、それは部分的な溶解によると思われる。従って、 この大きな高原は全面的に広がる脆弱な層の上に載っており、それが地表に現れる地 熱活動や火山性堆積物の原因となっているのである。(TO,Nk)

ポリメラーゼの停止の原因を探索する(Probing Polymerase Pausing)

RNA基部ループ、あるいはヘアピンとも言うが、の構造は、RNAポリメラーゼ(RNAP)に よる転写の一時停止や終結に関わっている。このヘアピンがどのようにして機能する かを説明するモデルが色々と提案されてきた。その中のいくつかのモデルでは、RNAP は剛体としてモデル化され、ヘアピン形成が、新たに合成されたRNAを酵素の活性部 位から引き離す役割を果たす。他のモデルでは、ヘアピンはRNAのコンフォメーショ ン変化を起こす。架橋分析と変異原性(mutagenesis)から、Toulokhonovたち(p.730) は、転写停止を引き起こす転写物中のヘアピンは、RNAの出口のチャネルに伸びてい るRNAのフラップの1部分に接触していることを結論付けた。このようにヘアピンは RNAPのコンフォメーションの変化を誘導し、この変化がヌクレオチドの添加を阻止 し、その結果転写を停止させる。(Ej,hE)

オゾンを制御する(Controlling Ozone)

都市のオゾンを制御するためには自動車による発生源を制限することでかなり成功し てきたが、実際のところ、田舎においても、発電所が発生するNOxや、植 生が発生する揮発性の有機炭化水素によっても、大量の対流圏のO3発生 の2大原因に成りうる。Ryersonたち(p. 719)は、測定機器を搭載した航空機の測定 によってこれらへの依存性を定量化し、O3のプルーム発生が発電所での NO発生と地理的場所の2つの主要要因への寄与率を定量化した。もし、 これら2つのNO発生源の濃度と場所が考慮されれば、NOの 総量のみを規制するのに比べて、対流圏のO3規制の効果は大きく前進す る。(Ej,hE)

筋肉細胞が動く(Muscle Cells on the Move)

ショウジョウバエの発生初期において、リガンドのSlitと、これに対応する受容体の Roboは、軸索が初期の経路を見つけるためのガイド信号を提供することで有名であ る。Kramerたち(p. 737)は、Slit/Roboの組は、以前考えられていた以上に可変性が あることを示した。筋肉細胞もまた、筋肉の組織化初期において、Slit/Roboチーム の指示に従って移動する。応答に従って、反発から誘引に転換する;すなわち、始め Slitによって中央線部で反発していた筋肉細胞が、後には特定の付着部位において Slitによって誘引される。(Ej,hE)
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