AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science September 18, 1998, Vol.281


ブラックホールの源に到着して (Getting to the Source of Black Holes)

超長基線電波干渉系(VLBI)ネットワークの一環である、径8m電波 望遠鏡1台と、地上に設置された超長基線電波干渉系 (VLBI)ネット からの電波望遠鏡40台とからなる宇宙干渉計計画では、以前の電波 干渉計より解像度が3倍良く、直径で 25,000 km の仮想望遠鏡が構 成される。この国際的な計画において、すべての望遠鏡で銀河系外電 波天体からの電波信号を同時に記録し、電波源の中心核近くの統合さ れ一貫した電波映像を作るためには、5つの追跡基地と3つのデータ 相関を取る装置が必要である。Hirabayashi たち(p.1825; Reidによ る展望も参照のこと) は、すでに、4つの電波源について、特別に詳 細な映像を得ている。それらは、螺旋状によじれ、中心核から遠く離 れる方向にたわんだ形のジェット状構造を示している。これらのジェッ トは、その電波源の中心核にある重く回転しているブラックホールに 付随する不安定性か歳差運動あるいはその両方に関連している。 (Wt,Nk)
[訳註] この宇宙超長基線電波干渉系(VLBI)プロジェクト(VSOP)は、 日本の電波望遠鏡衛星「はるか HALCA (the Highly Advanced Laboratory for Communications and Astronomy)」を用いた国 際共同計画である。この計画では、地球を回る「はるか」と、日本、 U.S.A.、ヨーロッパ、オーストラリアなど世界の各地の電波望遠鏡を 結ぶことにより、その電波望遠鏡間の基線(Base Line)を25,000km にとることができる。このため、いままで見ることのできなかった高 分解能でクエーサーなどの中心核(ブラックホールと考えられている) の構造の解明が可能となる。

古代の漁場(Early Fishing Sites)

新世界の最古の古代インディアン遺跡から、彼らはもっぱら狩猟に 頼った生計を維持していたことを示していたが、多くの海岸にある 遺跡からより詳細の様子が明らかになった。Sandweissたち (p.1830)とKeeferたち(p.1833)は、海洋性の生計経済を維持して いた強い証拠のあるペルーの海岸の2つの古代インディアンの遺跡 について記述した(Pringleのニュース解説参照)。その遺跡はおよそ 12000年前のもので、新世界で最も古いものであり、海洋性の生計 を維持していた他の遺跡に比べて非常に古いものである。一つの遺 跡は初期の幼稚な網をもっていたらしい証拠があった。両方の遺跡 には内陸からもたらされた石の加工品が含まれていた。(Na)

惑星本体を変える(Changing the Bulk of the Planets)

C1炭素質コンドライト隕石中の非揮発性元素の存在量は、全ての地球 型惑星が原始太陽系星雲から形成され、引き続き進化した全体組成を あらわすものとされてきた。Bertka とFei (p. 1838)は、マース・ パスファインダーによって測定された精密な慣性モーメントと、最近 実施された火星中心核の相に関する高圧実験から、火星本体の組成を 決定した。それによると、C1コンドライトによる集積成長モデルには うまく当てはめることが出来なかった。彼らは代案として、太陽系星 雲において、鉄/珪素比は太陽からの距離に応じて減少しており、 従って惑星ごとに異なった鉄/珪素の割合で集積成長したのではない か、と推測している。以前提案されたこの仮説が、C1コンドライト仮 説に比べて最新の火星のデータに良く合致するとすれば、我々の属す る内側太陽系惑星分化と核形成モデルは、現在、好まれているC1コン ドライト仮説による単一の鉄/珪素比に対して、異なる惑星間での鉄 /珪素比の変動を説明するように改定される必要があろう。 (Ej,hE,Nk,Tk)

火災のパワー則 (Fire Power)

地震とか、天体の衝突による爆発口の形成といったいくつかの現象は、 大きさと頻度に関して明瞭なパワー則の関係を示している。この関係 は、ある小さな事象の出現がより大きな事象の出現を予測するのに用 いられる。Malamudたち(p. 1840)は、いくつかの大きなデーターベ ースを調べ原生林の火災もこのような関係(森林火災の予測と管理に 用いることが出来る発見である)を示すことを見出した。その挙動は、 又 森林火災を単純なセルラー・オートマトンによるコンピュータモデ ルで近似しても得ることができる。(KU)

プラズマ乱流制御の手がかり (Clues to Controlling Plasma Turbulence)

星は、強い磁場中に閉じ込められ、核融合反応を起こす熱く激しく対流 するプラズマから形成されている。このモデルは、また、制御された核 融合炉開発の多くの試みの基礎となっている。一つの主要な問題は、閉 じ込められたプラズマ中の乱流の制御である。乱流は、閉じ込めを妨げ、 反応を抑えてしまう。Lin たち (p.1835;Burellによる展望も参照のこ と) は、超並列コンピュータによるシミュレーションを用いて、乱流の 特性と、そのような流れの中で乱流を制御する方法を探索した。その結 果は、乱流輸送を規制する小規模な帯状の流れ(zonal flow)がどのよう にに発展するかを示しており、乱流を最小化する方法を示唆している。 (Wt,Nk)

多くの分子を一つにする (One Out of Many)

異なる一個の分子(ゲスト)の付加によってもたらされる二個の同一分 子(ホスト)の複合体形成は,今日良く知られている。ホスト分子の数が 多くなると、多くの成分の整列がエントロピー的に不利になるため更に 困難になる。Martinたち(p. 1842)は、四個の同一分子を用いて、ジク ロルメタン中に懸濁しているアダマンタン(C10H16)を封入し、溶媒和 化できることを示している。ホストとゲスト分子間の水素結合のような 弱い相互作用とホスト分子のわん曲形状はこのような集合体を作るため に注意深く設計されねばならない。(KU)

体液性移植拒絶反応を克服する (Overcoming Humoral Transplant)

移植用のヒトの臓器の不足から、生理学的にヒトに類似のブタが臓器ド ナーとして真剣に考えられている。しかしながら、移植を成功させるた めの主要な障壁は、ブタの細胞の特定の炭水化物成分(抗原決定基Gal)に 対する抗体がヒトの体内で自然に生産されることで発生するドナー臓器 の体液性拒絶反応である。これらの抗体は類似の正常な細菌叢内の抗原 決定基にさらされることで生産されると考えられている。マウスモデル で、Bracyたちは(p.1845)、受容マウスの骨髄細胞から炭水化物を生成 する酵素GTを生産することで、この障壁に打ち勝った。受容マウスは常 在菌叢から定常的に細菌にさらされているにも関わらず、自然の抗体を 生産することを停止した。もし、同様の結果がヒトのシステムでも得ら れるなら 、このアプローチは異物移植の主要な障壁を取り除くだろう。 (Na)

ALSにおけるSOD役割の再検査(Reexamining SOD's Role in ALS)

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発生に関与している遺伝子がスーパーオキ シドジスムターゼ(SOD)という酵素の変異体をコードする。この発見は、 ALSの特徴である運動ニューロンの神経変性が異常な酵素活性と活性酸 素産生に関係しているという仮説を導いた。Bruijnたち(p 1851;表紙参 考)は、この仮説に反論する証拠を報告している。内在性SODを完全に欠 乏しているマウスとSOD濃度が正常の6倍であるマウスは皆、変異体酵素 の存在下で同一の病理を表している。この結果は、SOD活性の交換に 基づく治療がALSの処置に無効であることを示唆している。(An,SO)

速度の復元(Recovering Velocity)

動いている視覚的刺激を検知することは、刺激の動きによるコントラスト の変化と純粋に局所的なパターンによる変化とを識別するという難題であ る。Single と Borst(p.1848)は、電気的活性の指標として、クロバエ 科のハエにおける単一感覚性ニューロンの樹状突起(dendrites)の樹状部 (Arbor)中にある、カルシウムの細胞内濃度を測定した.彼等は、両方 のタイプのコントラスト変化に応じて、個々の樹状突起中のカルシウムは 変動していることと、さらに樹状突起と細胞体での間の調整(integration) が、動きの全方向を保持しながら局所的パターンによる反応を効果的に無 効にしていることを見つけた。さらに、この調節効率を最大にするために、 扇形の樹状突起の樹状部を一定の方向に向ける。すなわち、垂直方向の動 きに高感受性のニューロンは背ー腹側軸に沿って扇を並べ、一方、水平方 向に高感受性のニューロンはこれと直行するように扇形樹状部を並べる。 (TO)

減数分裂の細胞周期に入る(Entering the Meiotic Cell Cycle)

減数分裂(染色体数を減少する配偶子の形成)中のDNA複製を制御する機構 の方が有糸分裂のS期の始まりを制御する機構より理解されていない。 Dirickたち(p 1854)は、S. cerevisiae酵母において、有糸分裂の調節機 構と同様に、減数分裂のS期の始まりがB型サイクリンClb5とClb6を必要 とすることを見出した。しかし、減数分裂においては、関連しているサイ クリン依存リン酸化酵素Cdc28よりむしろIme2というタンパク質リン酸 化酵素が必要であった。Ime2は、Sic1というサイクリン依存リン酸化酵 素阻害薬の分解に必要であった。この結果は、減数分裂の細胞周期は、B サイクリン依存リン酸化酵素複合体の役割が保存された有糸分裂の細胞周 期から進化したことを示唆している。しかし、Ime2タンパク質リン酸化 酵素は、Cdc28複合体を、有糸分裂細胞周期のG1からS期への遷移におけ るSic1分解を制御するG1特異的サイクリンで機能的に交換したのかもし れない。(An)

Fertilinと精子の機能(Fertilin and Sperm Function)

哺乳類の受精プロセスにおける多機能蛋白質である、fertilinは、アクロ ソーム(精子の頭部前半にある先体)が反応する精子と卵の結合に関係す ると考えられていた。Fertilinが欠乏しているマウスを用いて、Choたち (p. 1857)はFertilinの機能がより多様であることを示した。Fertilinは、 卵の外側の皮膜である透明帯との結合にも作用している。さらに加えて、 fertilinが欠乏した精子は、卵管への通り道を作ることが出来ない。一時 的な接着相互作用(Temporary adhesive interactions)が、卵管での遊 走プロセスに関っているのかもしれない。(TO)

細胞死においてASK1を活性化(Activating ASK1 in Cell Death)

細胞死受容体Fasが2つの独立のアポトーシス経路を活性化する。その 2つのうちのより確定的である経路は、caspase 8とタンパク質分解酵 素カスケードを活性化し、もう一方の経路は、Daxxアダプタタンパク 質を用い、何とかしてJNKというタンパク質リン酸化酵素を活性化し、 JNKのリン酸化活性は、特定の細胞におけるアポトーシスに必要であ る。Changたち(p 1860)は、DaxxがASK1というアポトーシス信号制 御リン酸化酵素の自己抑制を解除することを発見した。ASK1は、リン 酸化酵素カスケードの第一メンバーである。著者は、DaxxがASK1の アミノ末端領域に結合することによって、ASK1をFas受容体複合体に 運ぶことを仮説している。この段階は、リン酸化酵素活性の遮断を解 除し、ASK1によるリン酸化が最終的にJNKの活性化と細胞死を引き 起こす。(An)

デンドライトを推進(Promoting Dendrites)

ニューロンは、シナプス活動に応答して電気信号を前に伝達するだけで なく、情報伝達の形態が新しくなったり変化したりするが、これに適応 するように神経の成長を再調整しながら応答している。ラットやアフリ カツメガエルにおいて確認されているタンパク質のCPG15は、シナプス 活性に応答して誘導される。Nediviたち(p .1863)は、プロジェク ション・ニューロン(投射神経)において、このタンパク質を過剰発現 することによってデンドライトの成長が促進されること、しかし、イン ターニューロン(介在ニューロン)には何の効果も示さない事を示した。 このCPG15タンパク質は、細胞間の情報伝達のメカニズムに機能してい るように見える。(Ej,hE)
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