AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science March 13, 1998, Vol.279


火星探査機(Mars Global Surveyor)

1997年9月から1998年2月、火星探査機(Mars Global Surveyor) の火星大気制動飛行中、及び評価試験軌道上で行われた、空間的に は限定されているが、興味深い測定内容が、一つの概要(Albeeたち、 p.1671)と5つのレポートの主題である。加速度計(Keatingたち、 p.1672)で火星の熱圏(110〜170Kmの上空の大気)の密度、温度、 圧力を測定した。これらの測定は、円軌道を達成するための大気制 動操縦計画作成に必須であり、観測された地域的な粉塵嵐が全火星 規模の熱圏応答を生じさせ、火星熱圏のある地点とその反対側との 両端点で観測される密度異常は、火星地形を発振源とする惑星大気 波により生じている可能性がある。磁気計(Acu-aたち、p.1676)で は火星スケールの磁場を観測できなかった。しかしながら、小規模 の磁場の異常が外殻(地殻)の堆積している火星のもっとも古い地 表(多数のクレータのある)で集中的に観測されることから、火星に は進化の早い時期には磁場が存在していたらしい。熱放射赤外線分 光光度計(Christensenたち、p.1692)は地表の物質、大気中の粉 塵、雲、CO2ガスと水蒸気のスペクトルデータを送り返した。スペ クトルの入手された地域では豊富な輝石とかなりの斜長石が存在す るが、炭酸塩、橄欖石、粘土鉱物、石英などは反射率の低い地表に 限定される微量な成分である。レーザー高度計(Smithたち、p.186) で18周回分の北半球の地形測定を行った。Ares Vallis海峡は従来 見積もられていたよりもかなり深いことがわかり、ずっと迅速な水 の放出があって、おそらくはより豊富な水量があったのだろう。1台 の狭視野角度で高解像度なカメラと2台の広角カメラ(Malinたち、 p.1681、表紙参照)は惑星の詳細な画像と全体の画像を提供した。 風で侵食された地形の砂丘、砂板、砂礫は数mのスケールで見られる、 一方、Valles Marineris渓谷の壁には頂上から底面まで、層状の堆 積が明らかにされた。複雑で、ある場合には交差している風成の地形 は、風の方向、強さやこれらの地形の年代の鍵を与えている、もしか したら、これらは、火星の季節的な変化に関係しているのかもしれな い。(Na,Nk)

古代の集落(Earlier settlements)

いくつかの大規模な集中的考古学サイトは、米国南西部とメキシコ 北部の組織的な農耕社会の起源として認識され、古くは、およそ 1200年前にさかのぼるが、多くの部分は900年前から600年前に 溯ると考えられていた。これらの集落は、「塹壕の切り立った丘」 (cerros de trincheras)として知られており、多くは、数百mの 規模で、丘陵の大規模なテラス、住居を取り囲む塹壕や他の居住 構造で著名である。HardとRoney(p.1661、p.1651のSmithの 注解参照)はメキシコ、チワワの大規模なcerros de trincherasに ついて、およそ3000年前まで年代が溯ることを描写した。この年 代はこの地域に最初にトウモロコシが導入された年代と同時期であ る。このように、大規模で集中的な農耕集落はこの地域で、従来考 えられていたように、何世紀もかけて徐々に発展したのではなく、 急速に発展したことがわかる。(Na)

ヘール-ボップの中のもっと多くの重水素 (More deuteruim in Hale-Bopp)

水素に対する重水素の比率(D/H)は、変成作用を受けなかった (原始)物質に対する変成作用を受けた物質の含有量を追跡するこ とにより、実験室中の星塵や宇宙における彗星のような物質の起 源をより確実に判断するのに用いることができる。今まで測定さ れたD/H比は、ハレー彗星と百武彗星だけであるが、以前のヘー ル・ボップ彗星中の水のD/H比3X10^-4 は、それらと一致して いた。Meierたち(p.1707) は、ヘール・ボップ中のシアン化水素 (HCNとDCN)を測定し、D/H比は 2.3x10^-3であること を見出した。このD/H比の相違は、ヘール・ボップが変化して いない(初期の)星間物質を保存していることを示唆している。これ は、もしHCNとH2Oという分子の種類が、太陽系星雲中の豊 富なH2ガス(D/Hの最大推算値は4x10^-5である)と、Dを交換 する時間があったのであれば、両方の比はもっと低い値になり、 相互の一致はもっと良くなったであろうと考えられるからである。 これらの測定は、彗星の氷は星間雲の中で形成された初期の物質で あり、おそらくは初期太陽系星雲の冥王星-海王星領域の近くで形 成されたのであろうこと示している。(Wt)

マントルの境界(Mantle boundaries)

上部マントルと下部マントルの境界である660±30kmにおける 地震波の急激な上昇の一因は、上部マントルの主要鉱物相である スピネルがペロヴスカイトやMgOペリクレースに変化することに 起因していると思われてきた。Irifuneたち(p.1698)は、シンク ロトロン放射と高圧の複数アンヴィルの装置を用いて、純粋のケ イ酸マグネシウムを端点とする鉱物の相変換の生じる圧力と温度 を見積もった。相境界は、21ギガパスカルで1600℃に生じたが、 これは約600kmの深さにしか相当しない。著者たちは、実測の深 さとの違いについて色々推測はしているが、この実測値との違い は大きく、未解決の問題となっている。ところで、核とマントル の境界(CMB)、および、この境界の上部の構造は、小振幅の圧縮 性音波(compresional sound wave)を用いて決定されているが、 この波は、高振幅のマントル-外核の1次音波相(PKP)に比べて、 マントルと外核を、より高速に、かつ、わずかに回折した経路を 通る。WenとHelmberger(p.1701)は、PKPに対して相補的な、 短周期で長周期の前兆波(precursor)についての西部太平洋底の CMBのデータを採取し、利用してた。長周期の前兆波から推測で きることは、CMBからの高さが60から80kmで、幅が100から 300kmのガウス分布の超低速帯(ULVZ;約7%の速度低下)が存在 することである。短周期の前駆波から、これらULVZには、CMB における小規模の対流や熱的不安定性から作り出された、部分溶 融帯が存在していることが推測される。(Ej,hE)

粘っこい泡(Viscous bubbles)

通常、泡というものは、界面活性剤によって安定化された液体の 膜からなる泡やシャボン玉のようなものを考える。しかし、非常 に粘度の高い液体もまた泡の形成を、少なくともしばらくの間は 助けるのである。シリコーンゴムとホウケイ酸ガラスの融解物は、 水よりもおよそ100万倍も粘度の高い液体であるが、Debreas たち(p.1704)は、これらから作られる気泡の排水過程と破裂過程 について研究した。その系は非常にさまざまな緩和挙動を示すが、 それらは比較的単純な水力学的なモデルで記述できる。(Wt)

選択的なセラミックの膜(Selective ceramic membranes)

よりポーラスなアルミナに支持されたアモルファス・シリカ の膜は、孔の径が(2ナノメートル以下)大きな浸透率を持 つようになり、工業的に重要な小分子を分離するのに利用さ れる可能性を持ってきている。このような物質は、再現性の ないことや、パーフォーマンスを低下させるような欠陥を持っ ていることから、実用性に欠けるかも知れない。De Vosと Verweij(p.1710)は、浸漬コーティング法によって作られ たこれらの膜が、クリーンルーム環境で作られるなら、メタ ンから水素を分離するのに高い再現性が達成されることを示 した。(Ej,hE)

界面のリン光体(Interfacial phosphor)

新無機物質を組み合わせ法(combinatorial method)で 探索するときにはしばしば対象物質の析出のために、通 常、不活性な基板(サブストレート)が利用される。 Wangたち(p.1712)はフォトルミネッセンスの新物質を 探す過程で、用意されたシリコンのサブストレート上に ガドリニウム・ガリウム・オキサイドの効率的な青発光 物質を見つけた。しかし、この物質をLaAlO3上に析出 する場合は、発光は見られなかった。彼らは、シリコン との界面効果が発光に寄与していることを示した。 (Ej,hE)

tRNAsを漸加(Recruiting tRNAs)

メッセンジャーRNAを認識するアンチコドン領域の型を複数もつ 転移RNA(tRNA)分子が同一の主体性、つまり同一のアミノ酸を受 容すること、をもち、イソ受容体tRNAグループを構成することが できる。従来のtRNA進化モデルは、同一の主体性のtRNAの全て が共通の祖先からきたことを示唆している。最近の研究結果による もうひとつのモデルは、アンチコドンとアミノアシルtRNA合成酵 素との相互作用によって、イソ受容体グループを変化させ点突然変 異が主体性も変化させることが可能であることを示唆している。 Saksたち(p. 1665)は、大腸菌系統においてUGUアンチコドンをも つ必須のスレオニンtRNAを不活性化し、UCUアンチコドンをもつ アルギニンtRNAがUGUへの点突然変異を起し、特異性をスレオニン へ変化したことを示した。(An)

酸化を減少する(Reducing oxidation)

酸化が細胞に損傷を与えうる。酸化剤の存在下で、大腸菌がOxyRの ような転写制御因子の作用によって抗酸化物遺伝子を活性化する。 Zhengたち(p 1718;Dempleによる注釈参考p 1655)は、分子内ジス ルフィド結合の形成によって、OxyRが過酸化水素によって特異的に 活性化され、ジスルフィド結合がグルタレドキシン1によって還元さ れることを示している。OxyRによるグルタレドキシン1の制御によっ て、防御機構の自己調節ループが生じうる。(An)

脳と脳をつなぐ(Connecting brain to brain)

発生初期には神経筋の接続は過剰に進行し、その後で、発生が進むに 従って一部が刈り取られる。Nguyenたち(p.1725)は、標的筋肉細胞 中での神経栄養性因子であるGDNFの過剰発現は、刈り取りのプロセス を遅くすることを示した。生後数週間の遺伝子組換えマウスによる実 験では、筋肉に正常レベル以上の神経支配が見られ、ある種の異常な 震えが観察された。この両特徴とも、枝刈りが進むにつれて衰退し、 マウスは成熟した。このことから、GDNFは神経筋の接続点形成に生理 学的に関係する栄養性因子なのであろう。(Ej,hE)

ORC複合体と細胞複製(ORC complexes and cell replication)

起点認識複合体(ORC)は、6つのタンパク質サブユニットの複合体で あり、DNA複製の開始を制御する。DillinとRine(p 1733)は、細胞 分裂周期の分裂期およびS期(DNAの複製が実際に起きる期)における ORCの役割の証拠を提出している。ORCサブユニットOrc5pにおける 変異をもつ酵母細胞がM期の初期あるいはG1-/S期の境界に静止する ことを発見した。M期中に不活性なOrc5が結合すると、その後、野生 型Orc5タンパク質を導入しても、G1-/S期境界の細胞の静止を克服 することができなかった。従って、複製が起きる前のM期には、ORC が不可逆的に形成されるとみられる。不活性なORC複合体が核内の抑 制性信号を生成し、この信号は、野生型ORCが結合される起点におい ても、複製開始を防止できるようである。(An)

ガンマ・デルタT細胞の役割(Role of gamma delta T cells)

最近まで、多様な解剖学的部位においてガンマ・デルタT細胞の レパートリが限られていることにはたいした重要性はなく、また それらは淘汰のせいではない、という議論が行われてきた。 Mallick-Woodたちは、このたび、そうではないかもしれない、 ということを示した(p. 1729)。彼らは、Vγ5遺伝子を欠いた マウスとVγ5-Vδ1 T細胞受容体(TCR)のイディオタイプ("形") を認識するある抗体とを用いた。皮膚のT細胞にはVγ5-Vδ1受 容体はなかったが、それらのT細胞は同じ形を作る他のTCRを用い て、抗体によって認識された。この結果は、これらの細胞が何らか の自己抗原によって選択され、ある種の生理的目的に役立っている ことを強く示唆している。ヒトの腸のT細胞は、大部分ガンマ・デ ルタT細胞で、それらは、そのT細胞受容体の一部としてVδ1を発 現する。T細胞のレパートリが限られていることによって、T細胞は、 腸管上皮の損傷や感染に対する応答として発現された自己タンパク 質の見張り役として働くのに理想的なものになっている、という提 案がなされた。それらの局在している場所は、熱ショック・プロモ ータを含みストレスに応答して発現される非古典的なクラスI主要組 織適合複合体分子MICAとMICBの位置に対応する。Grohたちは、腸 のガンマ・デルタT細胞を分離し、それらが、抗原のプロセシングと は独立に、MICAとMICBを認識することを示した(p. 1737)。こうし てみると、それらは腸を守るプリミティブなT細胞による「防衛最前 線」であるのかもしれない。(KF)

感覚の表現(Sensory representation)

入ってくる感覚性の情報をコードする脳の部分は、高度に可塑的で あることが知られている。つまり、入力の特定の側面を減少させた り、増加させることで、表現(すなわち、これを表現する脳の領域) は消滅したり拡大されたりすることになるのである。Kilgardと Merzenichは、基底核への電気的刺激と、聴覚性入力とを結びつけ ることでラットの聴覚皮質が性質を変え、用いられた特定の周波数 に対応した領域での表現が増加し、それ以外の領域では表現が減退 するということを発見した(p.1714;Julianoによる注釈p.1653参照 のこと)。彼らは、コリン作動性基底核からの出力がこの刺激によっ て誘発される可塑性を仲介すること、また皮質の性質の変化は、入 力に行動性の内容がなくても明らかに生じうること、を示唆してい る。(KF)

カルシウムのセンサー(Calcium sensor)

グルタミン酸受容体の代謝調節型ファミリーは、脳の神経伝達 グルタミン酸と結合し、シナプスの伝達性や可塑性に影響を与 える。Kuboたちはこのたび、その受容体が細胞外のカルシウム ・イオンのレベルにも応答することを示したが、これはシナプ スの可塑性を変調するさらなる方法を提供するものかもしれな い(p. 1722)。(KF)
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