AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science January 30, 1998, Vol.279


コンドルールは木星起源?(Jovian origin of chondrules?)

地球上で回収されたもっとも普通的な隕石であるコンドライト (球粒隕石)は、さまざまな割合のコンドルールから構成され ている。これらは、火成岩的な組織を有し、丸くなったセンチメー トルからミリメートルの大きさの珪酸塩鉱物である。コンドル ールの中には、カルシウム−アルミニウムに富む含有物(CAI) と呼ばれる、ある難揮発性の包有物が存在する。これらは太陽系星 雲中で形成された最も初期の凝縮生成物を表していると考えられてい る。数十年間にわたり、隕石学者と天体物理学者たちはそのコン ドルールの進化を説明しようと奮闘してきた。CAIは、コン ドルールより数百万年古く、これはCAIはコンドライト内 部に「保護される」ようになる以前の長い間、原始太陽系星雲中 で生きのびてきたに違いないことを示している。また、あるコンドル ールは複雑な熱的経歴を示している。すなわち、あるものは多数 回の加熱を経験しているのに対し、他のものはたった一回の加熱 と融解でコンドルールとなっている。それらは、太陽からの ジェットの吹き出しによる衝撃波かあるいは星雲中で旋回するダ ストによって、太陽系星雲の初期段階で作られたと考えられては いるが、最終的には、正確な加熱メカニズムは判ってはいない。 Weidenschillingたち(p.681)は、これらの主たる相違を説明す る別のモデルを提出している。彼らは、CAIは、太陽系星雲中 の初期において形成され、微惑星に集積することにより隔離され たと示唆している。そして、すべての星雲のガスが逸散する以前 に木星が作られた。木星と、それ に 加えて、残された星雲塵からのガスによる抵抗により、現在の 小惑星帯領域内で共鳴現象が発生するようになる。この共鳴 によって微惑星の軌道を不安定化させ、さらなる衝突を起こ させる。衝突頻 度が増加することにより、粒子をコンドルールに溶かすのに必 要な衝撃波が発生する。その一方で、星雲塵と微惑星の衝突から 形成された粒子は、コンドライトを作るために必要な粒子を生み 出したのである。そして、同様に、微惑星が破壊されることにより、 CAIはコンドルールへ再集積して微惑星から隔離されたので ある。このシナリオはCAIとコンドルールとの年齢の相違や 加熱メカニズムそしてある種のコンドルールは多数回の加熱現 象を経てきたことを説明することができる。加えて、もしこのシ ナリオが正しいのならば、太陽系星雲中で木星が形成された年齢 を与えることができる可能性がある。(Wt,Og,Tk)

遠い銀河の高速の光子(Fast protons in faraway galaxies)

高エネルギーの光がマルカリアン501、421のような銀河 から放射されているが、これらをプラズマジェット中の電子加 速の機構で放出されたガンマ線として説明することは難しい。 Manheim(p.684、p.676のBuckleyの注も参照)は、これらの 高エネルギーの光は電子加速ではなく陽子加速によって放出さ れると提案した。このシナリオが正しいと仮定し、次に彼は、 観測された銀河系外赤外線等方背景放射 (DIRB: diffuse isotropic infrared background)に起因する エネルギーの量から宇宙の中の銀河の数を見積った。観測によ り見積もられた銀河の数からの陽子の加速により発生するエネ ルギーの寄与率はDIRBの量と一致し、観測された見積もりは 非常に正確であるといえる。Manheimのモデルは宇宙の歴史 の中で星が形成される割合が減少しているという考えを支持 するものといえる。(Na,Nk)

プラズマを用いて結晶を作る (Creating crystals with plasmas)

一成分プラズマは、中性化のための一様な背景電荷に取り 囲まれた単一の電荷種から構成されているのであるが、中 性子星のなかで発見されているような天体物理学的なプラ ズマに関連があると信じられている。「凍結された」プラ ズマ構造のキャラクタリゼーション(特徴づけ)は、十分な 大きさのプラズマの安定化と構造検出とを両立させる必要 があるため、これまで困難であった。Itano たち (p.686; Schifferによる解説(p.675)も参照のこと)は、一 成分プラズマ結晶のキャラクタリゼーションについて報告 している。1立方センチメートルあたり10^8から10^9個の 原子密度からなる、10^5から10^6のベリリウム−9のカチ オンを閉じ込めた。この密度は、クーロン反発力を遮蔽する アニオンが存在しないため、通常の結晶に比べはるかに小さ いものである。適当な条件の下では、体心立方構造(bcc) の単結晶が作られる。そしてそれらは共鳴光散乱によって観 測され、理論的な予測を確認することができた。他の場合で は、二つのbcc結晶形やbccと面心立方配置の混合形が 見出された。(Wt)

光の当て方で表情が変わる(How lighting can change a face)

金属に吸収された光は、通常数ピコ秒以内に熱に変換されるが、 これは電子的励起が非常に短時間しか続かず、特定の場所に留 められていないからである。光によって引き起こされる金属中 の構造変化は、温度によって起きる溶解や熱によって生じるひ ずみと関連付けられてきた。Ernstたちは、緑の光と赤外光で 銅の表面を照射した(p. 679)。緑の光は、系に投入された全エ ネルギーと結び付いた温度上昇は小さいにもかかわらず、表面 に段差をつけるような大規模な構造の改変を引き起こした。 同量のエネルギーの投入に対して、赤外光の場合は、構造変化 が生じなかった。従って、緑の光は、寿命の長い、空間的に限 定された核の運動と結合した電子状態への励起を引き起こすが、 赤外光ではこの状態には到らない、というわけである。(KF)

南極の氷流を見直す(Antarctic ice streams seen anew)

西南極氷床からは、いくつかの氷流(ice stream)が流出して いる。この氷床の安定性は、従来論議の対象であり、海面の高さが どうなるかを評価する際のキーになっている。Bindschadlerと Vornbergerは、最近解禁された衛星写真画像を解析し、1963年 以降の長期にわたる氷の流れの変化を評価した(p. 689)。より最近 の画像やデータと比較すると、氷流Bは、モデルが示したよりも はるかに速い分布速度で4kmも幅が広がり、流動速度が半減して いる。氷床からの流出のパターンは、今世紀の間に大きく変化して きた、というわけである。(KF,Og)

氷床を基盤に結び付ける(Connecting ice sheets to bedrock)

Laurentide氷床は、北米の中西部の大半を覆っていた。一つの 重要な疑問は、そのベースが固くて基盤にしっかりと固定されて いたのか、柔らかかったのか、ということである。ベースの性質 は、氷床の高さと地形的特徴に反映され、氷床の一時的崩壊を反 映する氷の流出を示すHeinrichイベントの起源を説明する助けに なるであろう。Fisherたちは、Laurentide氷床の残遺物である ことが示されているBaffin島にある二つの氷の掘削コアから得ら れた結果を記述している(p. 692)。酸素同位元素のデータは、掘 削コア部分のベースに保存されていた氷は、標高の高い場所に起 源をもつことを示している。このデータは、こうして、固い基盤 に乗っていたことを意味しているのである。(KF)

輸送の前に前もって集合 (Some preassembly before transport)

SNARE仮説によれば、小胞上の受容体(v-SNARE)と、標的となる 膜上の受容体(t-SNARE)が存在し、これによって細胞内の膜を通 る輸送中に生じる膜融合の特異性を保っていると推測されている。 Roweたち (p. 696)は、小胞体(ER)からゴルジ体への輸送に関わっ ているt-SNAREであるsyntaxin 5は実際には標的の膜上に存在し ているときではなく、輸送小胞上に存在する間にその機能を果たし ていることを示した。酵母を使った以前の研究では、ERからゴルジ 体への輸送は、COPIIでコートされた小胞複合体によって、直接仲 介されていると推察されていた。 syntaxin 5は、COPIIが小胞-管 状のプレ・ゴルジ中間体に融合するのに必要であるとともにゴルジ 体への輸送にも必要であるように見える。(Ej,hE,Kj)

適量の鉄を採る(Getting the right amount of iron)

鉄は複数の酵素の経路におけるキーとなる元素である。しかし、 組織内の過剰な鉄による有毒な作用を避けるために、体内での 輸送や恒常性には慎重な制御が必要である。銅酸化酵素のセル ロプラスミン(Cp)が鉄代謝に関わっており(Fe2+をFe3+に酸 化する),Cp欠乏個体には、組織内に有害な濃度の鉄が蓄積する。 Mukhopadhyayたち(p. 714)は、以前想像されていたようにCp が鉄の放出を刺激しているのではなく、その代わりに細胞による 鉄の取り込みを刺激していることを報告している。ほとんどの他 の鉄制御機構と異なり、Cpは転写後制御されているのではない。 Cpは転写レベルで制御されている(低濃度の鉄がメッセンジャー RNAを安定化させる)。臨床的な関連において解釈出来る1つの 可能性は、肝臓において鉄の蓄積が低い場合には、鉄が血漿中に 濃縮されやすく、これがCp転写を刺激し、つまるところ鉄の制御 機構となっている。(Ej,hE,Kj)

活性化補助因子と転写制御因子 (Coactivators and transcription factors)

アデノウイルスE1A腫瘍性タンパク質のようなウイルスタンパク質 が正常な細胞の分化と増殖を抑制できるが、その研究によって、転 写制御因子に相互作用する活性化補助因子というタンパク質が同定 された。複数の細胞過程に役割を果すいくつかの転写制御因子が活 性化補助因子CBP(CREB結合タンパク質)とp300に特異的に相互作 用する。Kurokawaたち(p. 700)は、試験管内と生体内分析を用い、 活性化補助因子中の多様な領域が異なっているクラスの転写制御因 子に相互作用することを示している。CBP刺激した転写と比較する と、STAT-1(転写1の信号誘導物質であり活性化因子である)がシス テインとヒスチジンを富む(C/H3)CBP領域を必要とする。この領 域は、E1AがSTAT-1を抑制する部位でもある。一方、RAR(レチノ イン酸受容体)には、C/H3領域が必要ではなく、E1AによるRARの 抑制はCBP核内受容体の活性化補助因子複合体の構築の抑制によっ て行われている。Korzusたち(p. 703)は、多様な転写制御因子が ヒストンアセチル転移酵素(HAT)活性を含む因子との相互作用にお いて、特異性を現すことを示している。この研究は、転写制御因子 と活性化補助因子との相互作用および多様なHAT活性の必要性を説 明している。(An)

PKBリン酸化酵素の情報伝達(PKB-kinase signaling)

多くの細胞表面の受容体が、ホスファチジルイノシトール(4,5) 二リン酸[PtdIns(4,5)P2]のリン酸化によってPtdIns(3,4,5)P3 を生成するホスホイノシチド-3リン酸化酵素を活性化する。最近 まで、PtdIns(3,4,5)の生成がどのように細胞の情報伝達に影響 するかがわからなかった。報告の2つは、この情報伝達の経路と それがインシュリンと成長因子の活性を制御することを明かにし た(Downwardによる論評参考p 673)。タンパク質リン酸化酵素 PKBがイノシトールリン脂質による複雑な制御の標的であると認 められている。PtdIns(3,4,5)P3がPKBに結合することが、他の タンパク質リン酸化酵素がPKBをリン酸化し、活性化するために 必要である。Stephensたち(p. 710)は、このようなPKBリン酸化 酵素のファミリを単離し、特性づけた。PKBリン酸化酵素がPtdIns (3,4,5)P3にも結合し、PtdIns(3,4,5)P3によって活性化されるこ とを発見した。PtdIns(3,4,5)P3の生成がPKBの転位置を起し、 膜にリン酸化酵素を活性化することによって、PKBの活性化を促進 するとみられる。インシュリンあるいは成長因子が自分の受容体に 結合することによって、p70リボゾームのタンパク質S6リン酸化酵 素(p70s6k)が活性化され、それからタンパク質合成機構の必須の 成分をコードするメッセンジャーRNA転写物の翻訳を増強する。 この制御と他のインシュリン効果を起したのは、リン脂質とタン パ質リン酸化酵素との複雑な配列の活性化によることである。 p70s6kタンパク質自体が、複数の部位におけるリン酸化によって 制御されている。Pullenたち(p. 707)は、ホスホイノシチド依存タ ンパク質リン酸化酵素1(PDK1)というPKBリン酸化酵素もp70s6k 活性の制御に重要であることを示している。PDK-1の活性化は、 インシュリンに誘発されたp70s6k活性化に必要であるとみられて いる。(An)

セルロースの合成(Cellulose synthesis )

セルロースの多数の使用法にもかかわらず、セルロースの 合成がよくわかっていない。Arioliたちは(p 717; Carpita による論評参考 p 672)、高温でセルロースを合成できない シロイヌナズナの変異を分析し、セルロース合成酵素の触媒 作用サブユニットとなるRSW1タンパク質をクローン化した。 制限温度では、変異体植物がセルロースを合成できず、セルロー ス合成部位と思われている形質膜の多サブユニットロゼットが分 解される。(An)

遺伝子とヒトの禿の関係(Genes and human baldness)

発毛の段階は説明されているが、発毛プロセスや禿になる要素を 制御している遺伝子については殆ど知られていない。Ahmeaたち は(p.720)、遺伝的でまれな形態の禿であって、頭皮全体、及び 体の他の部分から完全に毛がなくなる全身性脱毛症 (alopecia universalis)について研究した。マウスの無毛遺伝子 のヒトの相同体のミスセンスな突然変異がヒト家系のこの症状に 関連している。この遺伝子の効果を理解することは、発毛の可能 性に導く道を照らし、より一般的な形態の禿に対する治療的な介 入の可能性を指し示すだろう。(Na)

天文ニュース:天体爆発現象への仮説(p.651) (Exploding Stars Point to a Universal Repulsive Force)

スーパーノヴァと呼ばれる遠方の爆発している星の研究から、 宇宙は大規模な反発力によって満たされているのかも知れない と言われている。この力の源となるエネルギーとして考えられ ているのは、宇宙定数とよばれる何もない空間の量子力学的な ゆらぎから、X物質とか第五元(quintessence)と呼ばれる未 知の物質にまで及んでいる。(Ej)

彗星雨の衝突でも生物への影響なし(p.652) (Comet Shower Hit, But Life Didn't Blink)

1980年代、恐竜を絶滅させたような大量絶滅は、小天体の 衝突によって3千万年毎に地球を破滅させるかもしれないと 示唆されていたが、これに対する証拠はほとんど見付かって いなかった。しかし、少なくとも1つの彗星雨があったこと が地質学的な証拠として見つかったが、生物への明確な影響 は見れらてない。昨年秋のアメリカ地質学会総会(サンフラ ンシスコ)で、地球化学者は海底堆積物中に3500万年前の 高濃度の彗星塵を見つけ、約200万年の間、内太陽系には彗 星が群れていたことを示した。この研究によると、少なくと も2回の大きな天体衝突が地球にあったときに、この彗星雨 を伴っていたことを示した。しかし、1980年代に心配され ていたような生物への深刻な影響は見られなかった。(Ej)
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