AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science November 28, 1997, Vol.278


スペースに関する実験(Experiments in space)

個体数に関する生態学的研究の、特に空間に関する側面については、 野外で実験するよりも、より容易にモデル化出来る。2つの論文が、 均衡を正すような力が働くことについて報告している。Maronと Harrison(p.1619)は、理論的に予測された結果を実験によって、 宿主と捕食寄生虫の相互作用が、どのようにして均一な生息地に おいて継ぎはぎの分布になるのかを例示している。Rantaたち (p.1621)は、カナダ・オオヤマネコの8つの地域の68年に渡る個体 数の記録を使い、時間、空間的にどのように個体数が変化したかを 調査した。その結果、顕著であるが不安定な、同期現象が、特に 隣接するグループの個体数に生じている。この振舞いは個体数変化 の直接的モデルによって把握でき、このことから、この現象の単純 な説明が可能なように見える。(Ej,hE)

どこにでも時計(Clocks all over)

ほとんどの動物が脳内の中心の概日性時計を持っていると思われている。 哺乳類は視交差上核にあり、トリや魚は松果体にある。Plautzたち (p. 1632;表紙とPennisiによる記事参考 p 1560)は、タンパ ク質ルシフェラーゼとPERから融合タンパク質を作成し、時計のキー部分 であるPERの発現を描出した。この構築体は、ショウジョウバエの末梢 性組織には、特に羽の縁の化学感覚細胞において、複数の独立発振器が あることを明かにした。まだ明確されていない光受容器を通して、 それぞれの独立した時計が光によって直接にリセットされることができる 。 (An)

NKT細胞と腫瘍(NKT cells and tumors)

T細胞の異常なサブセットであるナチュラルキラーT細胞(NKT)は すべて同一のT細胞受容体を持ち、すべて、あるNK細胞マーカーを 持っている;2つの論文が、これら2つは腫瘍との闘いに寄与して いることを示している。Cuiたち(p.1623)は、これら細胞は、 インターロイキン-12によって仲介される同系の腫瘍の制御には 不可欠であるように見えることを示した。このメカニズムには、 これら細胞によるインターフェロンγの産生も含まれている。 Kawanoたち(p.1626)はNKT細胞が、CD1dの関連において海洋性 海綿中に見られるガラクトシルセラミド脂質を認識することを見つ けたが、この脂質の類似体は抗原を認識する天然のリガンドになり うる。腫瘍転移モデルへのガラクトシルセラミドの添加によって、 これらの細胞を活性化させ、腫瘍の転移発生を阻止した。NKT細胞 の活性化はT細胞と類似しているが、そのエフェクター機能はNK 細胞に類似している。(Ej,hE,Kj)

STATのIceの役割(Ice role for STATs)

STAT(転写の信号トランスデューサと活性化因子)は、細胞が 多様なサイトカインと成長因子に曝露されることによって誘発 される制御転写の重要な媒介物である。Kumarたち (p. 1630; Hoeyによる展望参考p. 1578)は、この転写制御因子 の別の役割、つまりIceファミリのタンパク質分解酵素の転写の 構成的な活性化、を記述している。このタンパク質分解酵素は、 アポトーシスというプログラム細胞死に働いているが、STAT1 欠乏の細胞には、腫瘍壊死因子αに応答したアポトーシスが 起こされなかった。タンパク質分解酵素の遺伝子の構成的な転写 には、二量体化が必要ではないとみられ、STAT1に媒介された 制御転写活性化と異なっている。(An)

上部地殻に見られるマグマの痕跡 (Upper-crust magma tracers)

プラチナ族元素(PGE)はマグマの振舞いと、地球内部におけるマントル の分化のトレーサーとして利用されてきたが、PGEの相対的な増減に よってマグマが固化の過程でどの程度溶融し、混合し、岩と水の相互 作用があったかを示しているからである。しかし、多くの岩石中のPGE の濃度は10億分の1(ppb)のオーダーであり、その正確な濃度を求める ことは困難であった。Rehkaeperたち(p.1595)は、カメルーンと北部 タンザニアにおける一連のゼノリス中の白金、パラジューム、 イリジューム、ルテニュームの含有量を計測した。この、限定されては いるが正確なデータによって、北部タンザニア地殻を構成したマグマは 流体に富んだ深部沈み込み帯から抽出されたものであり、カメルーン 地殻を構成したマグマは無水状態で溶融抽出されたものであろうと彼ら は推測している。これらの結果は、このような異なった岩石の組が色々 な程度の部分溶融を経て出来たものではなく、マントルの異なった環境 によって出来たものであることを示唆している。(Ej,hE)

磁気抵抗性のCrO2フィルム(Magnetoresistive CrO2 films)

磁気抵抗性物質は印加された磁場に応じて電気抵抗を変化させるため 磁気の検出や磁性記録読み出しに応用されている。半金属強磁性体は、 その潜在的候補物質である。HwangとCheong(p.1607)は、すでに磁 気記録に利用されている物質であるCrO2を調べた。多結晶CrO2 フィルムはアニーリングによって絶縁性CrO3を沈着させることにより、 低磁場の磁気抵抗性が強調されることを示した。(Ej,hE)

乱流のなかの構造(Structures within turbulence)

乱流とは慣性力が原因となって大規模構造が次々と分解、分岐して 微小構造へと転化していく状態とみなせ、これをコロモゴルフの カスケードとよんでいる。乱流を理解する鍵の1つは、このプロセ スを画像化することである。Wrightたち(p.1609)は、拡散光写真 によって流体表面上の小さな波を画像化できることを示した。この 解析結果によれば、小構造への段階的分解過程の最中でさえも断続 的に現れる大規模構造の広範な分布が乱流状態を構成していること が判った。(Ej,hE,Nk)

IL-1情報伝達の内幕(Inside IL-1 signaling)

炎症反応の中心的なサイトカインの1つはインターロイキン-1で あるが、インターロイキン-1受容体(IL-1R)がどのようにして情 報を伝達し、転写制御因子NF-κB を活性化するのかについての 我々の知識は極めて不完全である。Muzioたち(p.1612)は、この 経路の類似成分のいくつかを明らかにした。ショウジョウバエの 相同情報伝達経路である"Toll"経路から手がかりを得ながら、彼 らは2番目のIL-1R-関連キナーゼのIRAK-2をクローン化し、 ショウジョウバエのPelleタンパク質に類似したIRAK-2とToll 自身に類似したMyD88の両方ともにIL-1R複合体の中にあること が分かった。MyD88はIRAK-2活性の上流で機能するアダプター として振舞うが、これは、受容体-サイトカイン相互作用によって キナーゼ作用を制御するためにか、或は、可能にするために作用 する。(Ej,hE,Kj)

毒素の到達(Toxin delivery)

繊維状ファージpIVのpIVタンパク質を含むタンパク質ファミリが、 鞭毛の構築システムと病原性細菌の毒素を哺乳類の細胞に配達する システムも含んでいる。Linderothたち(p.1635)は、走査型透過型 電子顕微鏡を用い、精製したpIVタンパク質をイメージ処理し、 pIVタンパク質がチャネルのような構造を構成する多重体であること を示した。(An)

JNKとT細胞(JNK and Tcells)

c-Junアミノ末端キナーゼ(JNK)は、サイトカインや環境ストレスに 反応して活性化された時にc-Junや他の転写因子をリン酸化し活性化 する。JNKの基質を探しているときに、Chowたち(p.1638)は、 これが、活性化T細胞ファミリーの核因子(NFAT)の一員である NFAT4に結合し、リン酸化することを見つけた。NFATタンパク質は 免疫系中でT細胞の応答を仲介するが、他の細胞型の中でも発現する。 NFAT4がカルシニュリンの脱リン酸によって活性化されるときに核に 運ばれる。JNKによってNFAT4がリン酸化されることで、核からNFAT 4がとり除かれ、転写活性を阻害される。その結果は、JNKの情報伝達 経路に渡ってNFAT4アイソフォームの特異的制御が存在することを示し、 また、NFAT4タンパク質そのものが複数の細胞情報伝達経路からの入力 を受け取ることを示している。(Ej,hE,Kj)

肥満とレプチン脱感作(Obesity and leptin desensitization)

ホルモンのレプチンはレプチン欠乏症のlepob/lepobマウスには驚くほど の体重減少をもたらすが、正常のマウスや肥満のマウスモデルにはそれほ どの効果はない。致死性黄色症(lethal yellow (AY/a))マウスの肥満モデ ルの場合には、レプチンの抵抗は以下の理由によって起きるものと仮定さ れている:これらのマウスの弓状核のプロオピオメラノコルチン (proopiomelanocortin)ニューロンには、遺伝的にプログラムされている 情報伝達の破壊があり、これがレプチンの作用を直接ブロックしている、と。 これに対して、Bostonたち(p.1641)は、AY/aとlepob/lepobの両方の変異 を有するマウスは外来性レプチンに完全な感受性を持っていることを示し、 この仮説に反論している。従って、AY/aモデルにおけるプチン耐性は、古典 的な脱感作(感受性がなくなること)によって引き起こされていると思われる。 (Ej,hE,Kj)

気候と人類の進化(Climate and human evolution)

およそ250万年前にアフリカが乾燥気候に変化したことが、初期の人類の 進化と哺乳動物相の変化を導いたことが、ここしばらく示唆されている。 Behrensmeyerたちは(p.1589)、ケニヤとエチオピアの間のツウルカナ 盆地で発掘された300万年前から180万年前までの大量の哺乳類の化石を 調べた。データによると、哺乳動物のおよそ78%はこの時期に変化してい るが、動物相の重要な変化は250万年前には起きておらず、その後引き続 き行われていることがわかる。(Na)

可逆な高分子(Reversible polymers)

水素結合により形成される高分子は、興味深い特性を有することがある。 たとえば、加熱や濃度変化によって重合が可逆性を示すことがある。 しかしながら、単分子ユニット間の結合強度が不十分であったり、方向性 を持っていたりするため、その進行は妨げられてしまうことがある。 Sijbesma たち(p.1601;McLeish による展望記事(p.1577)も参照のこと) は、4つの水素結合からなる自己補完的な配列を有する単分子ユニットに 対して、非常に強い方向性を有する重合が起こることを見出した。粘性係数、 分子鎖の長さ、組成は、条件を変えることにより、望みのものに調整するこ とができる。(Wt)

流れの出来事(Current events)

現在、海流はほとんど熱塩(温度と塩分濃度による)循環によって支配 されており、高密度で、冷たい、高濃度の、海水が高緯度で沈み込んで いる。今日では、ほとんど同量の深海水が北極海と南極海で作られている。 この循環パターンが変化することによると思われる気候の変化がそれほど 遠くない過去に生じている。Broecker(p.1582)は、この循環パターンと、 これが時間と共に変化する様子を見直した。最終氷期には、急激な地球規 模の気候変動が度々生じている様子が堆積記録から窺えるが、このような 急変が将来起きないとも限らない。この急変のきっかけとなるのは、地球 軌道周期に伴う極地方の日射量の位相反転かも知れないし、現在増加しつ つあるCO2かも知れない。(Ej,hE)

2次元的に溶ける(Melting in 2D)

2次元系(2D)において、融解のような相転移の物理は、バルク状態とは 異なっている可能性がある。理論によると、典型的なパッキングである 六方晶は、融解する前に中間的なヘキサティック相(hexatic phase)を 示すが、この相を観察することは困難である。ひとつの問題は、欠陥に よりパッキングが斜方晶に歪んでしまうことである。この場合について は、理論的にはスメクテック相がヘキサティック相より勝ることが予想 されている。Sikes と Schwartz(p.1604) は、高温の原子間力顕微鏡 (AFM) を用いて、脂肪酸からなる(電解質中に)支持された ラングミュア−ブロジェット膜中にそのようなスメクティック相の証拠 を与えている。(Wt)

荒天(Stormy weather)

年に数回、大規模な安定した気候パターンが形成され数週間から一ヶ月 程度持続する。Weeksたち(p.1598)は回転する円筒を使い実験し、 このようなパターンは(もっと一般的な東向きの大気の流れへの変遷も)、 地形と回転する大気との相互作用を反映することを示した。(Na)

注意の型(Types of attention)

注意という現象を神経細胞的に解釈する、2つの相反する解釈があるが、 その1つはトップダウン(動きまわるスポットライト)メカニズムで、他 方はボトムアップ(競合入力)メカニズムである。両方の解釈とも神経症 の患者や霊長類の実験、あるいは正常な人間の機能部位のイメージング手 法で支持されている。Reesたち(p.1616)は機能部位イメージ ング法と心理物理的研究を結び付け、どのようにして視覚的知覚が同時に 課される言語的課題の困難度によって影響を受けるかを述べている。言語 的課題が多大な処理資源を必要とする場合にのみ視覚的刺激の知覚に影響 が現れた。(Ej,hE)
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