AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science July 25, 1997, Vol.277


インシュリンABC (Insulin A,B,C's)

ヒトのインシュリンが、連接ペプチド(Cペプチド) に連接されているA鎖とB鎖 から成るより大きいプロインシュリン分子の部分として、合成されている。 Cペプチドの生物活性はあったにしても少ないと思われている。 Idoたちは(p. 563),Cペプチドが糖尿病性ラットにおける血管と神経の機能障害を 防ぐことあるいは減弱することができることを示している。 この作用は、非キラル相互作用(LとDアミノ酸は効力の等しい)によって仲介され ているため、受容体や結合部位を関与しないと見られている。 Cペプチドが糖尿病における異常性を訂正する能力は、Cペプチドが糖尿病合併症の 治療で利用しうることを示唆している。 (An)

二通りの制御(Doubly controlling)

プロトオンコジーンのタンパク質リン酸化酵素B(PKB)が成長因子受容体によって、 細胞の情報伝達に関与している。 ホスホイノシチド3-リン酸化酵素(PI3K)活性の増加によって、PKBが活性化されていることが 知られているが、どのように制御されているかが不明であった。 Stokoeたちは(p. 567)、PI3K酵素の生成物であるホスファチジルイノシトール3,4,5 三リン酸[PtdIns(3,4,5)P3="PIP3"]がPKBを二通りの方法で調節していることを報告している。 まずPKBをリン酸化し、活性化するリン酸化酵素を刺激し、その後PKBに結合する ことによって、活性化するリン酸化酵素に適した基質を生成する。 この複雑な調節機構によって、細胞内の妥当な位置でPKBを精密に制御していると思われる。 (An,SO)

C型肝炎クローン(Hepatitis C clone)

肝炎や硬変を生じさせる、C型肝炎ウイルス(HCV)は、世界中の人口の1%に 感染している。このウイルスの研究には、遺伝的な研究を行える均一な サンプル患者が必要だが、実際は不均一なサンプルが多く、障害になって いる。Kolykhalovたちは(p570)、チンパンジーにおいて感染性でかつ病状を引き起こす ウイルスの全長クローンの共通配列を特定した。この感染力には、これ 以外に余分な配列や因子を必要としない。分子的に特定された物質により 感染させることが出来るのでウイルス性変異と免疫選択の研究を促進する。 (Na)

磁気抵抗効果を操作する(Manipulating magnetoresistance)

磁場をある種の材料に印加すると、その抵抗値が変化する。このような磁気抵抗効果(MR) は磁場の センシングに用いることができる。 Ramirez と Subramanian は、典型的なCMR材料では達成 不可能なほどまで、ピロクロール化合物 Tl2Mn2O7 の巨大MR効果(CMR) を扱っている。典型的な 材料は、ペロブスカイト構造を持つ亜マンガン酸塩である。彼らは、Tl(タリウム)をSc(スカンジウム) で置換するすることにより、本質的には磁性は変化しないが Tl-O 格子上の電子伝導は影響を受けることを示している。これは、 顕著にCMR効果を増強させる。(Wt)

搬出コード(Export codes)

細胞内におけるタンパク質の選り分けは、輸送されるタンパク質の中の特定の配列と 輸送小胞の被膜タンパク質との相互作用によるものである。 NishimuraとBalchは、膜貫通のタンパク質VSV-G(水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質) の中の特定の配列を同定した。この配列は、小胞体(ER)から搬出するタンパク質COPIIで 被覆した小胞へ、VSV-Gを指示している。 Asp-X-Glu(アスパラギン酸-X-グルタミン酸)配列は、VSV-Gの搬出に必要であり、 普通には搬出されないタンパク質にのせて、ERから搬出できるようにする可能性がある。 (An)

酵母の有糸分裂を見る(Seeing yeast mitosis)

細胞分裂周期に関する最近の発見は、発芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の遺伝的な分析によって もたらされている。しかし、紡錘(体)や染色体移動に関する研究は、顕微鏡観察や形態的観察がより 容易な動物や植物の細胞で行われてきた。Straightたち(p.574)は、緑色の蛍光性タンパク質 によって酵母の染色体や紡錘を標識づけ、生きた酵母細胞中での有糸分裂を可視化すること が出来た。彼らによる研究結果から、染色体分離と紡錘の伸長において、最初は速く、次には遅い 相があること、そして、テロメアの分離の前にセントロメアの分離があること、 中期プレートで染色体が整列に失敗すること、染色体の極方向への移動は微小管に 依存していること、などを明らかになった。(Ej,hE,Kj)

ポリマーによる光の増幅(Gaining light with polymer)

光屈折率材料(photorefractive: PR)は2ビーム結合の機能を果たし、 一つのレーザービームのエネルギーがもう一つに伝達される。このプロセスで、 光学的な利得を生じるため、この材料は光トランジスターとして機能する。 通常無機のPR材料は高い利得率を示す、しかしGrunnet-Jepsenたちは (p549、p530のAndersonの展望も参照)、薄いPRポリマーフィルムを透明な 電極の上に積層することで利得率が1以上最大5までを達成することを示した。 それは又、光学的キャビティを構成し、一本のビームで自励発振を生じさせる。 この立体配置は時間的に逆転したイメージを生ぜさせ、光学経路を反対に走らせ、 導入された歪みの全てを除去する用途に用いることが出来る。(Na)

宇宙の記録(Cosmic markings)

宇宙進化の核種の過去の量の記録を用いることにより、太陽や地球のダイナモ効果の歴史を推測す ることが可能となる。Bard (p. 532)による展望記事の中で議論されているように、年代の算定の ためには、炭素14のような宇宙進化を記録する核種を用いる必要がある。Plummer et al.(p.538) は、モリネズミの糞塚の中に保存されているモリネズミの尿中の塩素から、過去4万年に渡って、一つの宇宙 進化上の同位体である塩素36の生成の歴史を推測している。この塚は、低緯度におけるその生成 の有用な記録を与えている。そして、これによると、更新世の終わりにおいて、生成割合が突然減 少したこと示唆している可能性がある。(Wt)

大量のエネルギーを与えられたプレート(Supercharged plates)

カンブリア紀の初期、今からおよそ5億4千万年前は、動物が爆発的に増えたと 見られる時代であった。これはおそらく地球の大気や海洋を構成する物質の種類 の変化に伴って、あるいはそれに引き続いておきたことであろう。 Kirschvinkたちは、複数の大陸について得られた古磁気データをまとめ、 この時代がまたプレートテクトニクス理論の面からも普通でない時代であった、 ということを示唆している(p.541)。 データが示しているのは、カンブリア紀の初期および中期の間、すべての主な 大陸プレートが急速に回転、移動していた、ということである。たとえば、 オーストラリアは3千万年の間に、明らかに緯度にして90度ほども移動した。 著者たちは、この運動は、地球のマントルおよび岩石圏の急速な回転によって 説明できると示唆している。(KF)

おあつらえの細孔(Pores to order)

メゾポーラスな珪酸塩材料は、ナノメートルのスケールの幅を持つ細孔のネットワークを含んでい る。McGrath たち(p.552) は、テンプレートとして離液系列L3相を用いることにより、どの ようにして細孔の直径を広範囲にわたり調整するかを示している。L3相は、水を二つの部分に分 割するような多重に連結した二重層である。そして、その細孔の大きさは界面活性剤の濃度ととも に連続的に変化する。その材料は大きな、光学的に透明な一枚材料を形成した。そして、その細孔 に近づくために界面活性剤を取り除く必要はない。可能な応用としては、フィルターや光学材料あ るいはナノメートルサイズの合成物などがある。(Wt)

電子的共有地の悲劇(Tragedy of the electronic commons)

インターネットの利用者は、自分がネット上で利用した時間やバンド幅の量に 対応して課金されるわけではない。この状況が、貪欲な振るまいや、ウェブの 資源への需要が過剰に引き起こされることにつながっている。「パケットの嵐」 と呼ばれる極端な局所的渋滞が幾例も観察されるようになってきたが、これは、 インターネットのノードが、データのストリームであふれさせられることである。 HubermanとLukoseは、渋滞に関する観察結果について報告し、この種の渋滞の 性質をモデル化している(p. 535、またp. 477のSeifeによるニュース記事を 参照のこと)。こうしたモデル化は、ネット上の資源をどう割り当てれば負荷の 均一化やバンド幅の管理を達成できるか、を考えていく際の助けとなることで あろう。(KF)

スタートの遅れ(Delayed start)

ヒトにおける最も一般的な運動ニューロンの病気は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、 別名リー・ゲーリッグ病である。このヒトの病気の、マウスにおけるモデル、つ まりマウスが銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼの変異を有する場合について、 Kosticたちは、プロトオンコジーンbcl-2を過剰発現している他の動物と当該の マウスとを掛け合わせることで、運動ニューロンの損失を防ごうと試みた (p.559)。その子孫では病気の開始は遅れ、神経変性も少なかった。 この結果が示唆するのは、ALSに関連する症状を改善するには、細胞死への道筋を 妨害する治療的アプローチが有効である可能性がある、ということである。(KF)

エコロジー特集(Special issue on ecology)

生態学者たちは、従来人間活動の及ばない、純粋な自然状態を 研究対象としてきたが、今やそのような環境を見つけることは 不可能になってきた。むしろ、人間とのかかわりあいによる 自然の理解がより重要であると考えられる。その意味で、今回 編集者に、法的規制の重要性を認識している政治家が加わって いるのは意味がある。以下は、その目次である。(Ej)
Human-Dominated Ecosystems; News
--------------------
Human-Dominated Ecosystems
Richard Gallagher, Betsy Carpenter
p. 485 (see also: p. 486, 489, 491, 494, 500, 504, 509, 515, 522, 528)
ECOLOGY: Extinction on the High Seas
David Malakoff
p. 486 (see also: p. 485, 489, 491, 494, 500, 504, 509, 515, 522, 528, 487)
ECOLOGY: Seas Yield a Bounty of Species
David Malakoff
p. 487 (see also: p. 486)
ECOLOGY: 'No-Take' Zones Spark Fisheries Debate
Karen F. Schmidt
p. 489 (see also: p. 485, 486, 491, 494, 500, 504, 509, 515, 522, 528)
ECOLOGY: Brighter Prospects for the World's Coral Reefs?
Elizabeth Pennisi
p. 491 (see also: p. 485, 486, 489, 494, 500, 504, 509, 515, 522, 528)

Human-Dominated Ecosystems; Articles
--------------------
Human Domination of Earth's Ecosystems
Peter M. Vitousek, Harold A. Mooney, Jane Lubchenco, Jerry M. Melillo
p. 494 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 500, 504, 509, 515, 522, 528)
Biotic Control over the Functioning of Ecosystems
F. Stuart Chapin III, Brian H. Walker, Richard J. Hobbs, David U. Hooper, John H. Lawton, Osvaldo E. Sala, David Tilman
p. 500 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 494, 504, 509, 515, 522, 528)
Agricultural Intensification and Ecosystem Properties
P. A. Matson, W. J. Parton, A. G. Power, M. J. Swift
p. 504 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 494, 500, 509, 515, 522, 528)
The Management of Fisheries and Marine Ecosystems
Louis W. Botsford, Juan Carlos Castilla, Charles H. Peterson
p. 509 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 494, 500, 504, 515, 522, 528)
Hopes for the Future: Restoration Ecology and Conservation Biology
Andy P. Dobson, A. D. Bradshaw, A. J. M. Baker
p. 515 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 494, 500, 504, 509, 522, 528)
Forests as Human-Dominated Ecosystems
Ian R. Noble, Rodolfo Dirzo
p. 522 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 494, 500, 504, 509, 515, 528)

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Science July 25, 1997, Vol.277


インシュリンABC (Insulin A,B,C's)

ヒトのインシュリンが、連接ペプチド(Cペプチド) に連接されているA鎖とB鎖 から成るより大きいプロインシュリン分子の部分として、合成されている。 Cペプチドの生物活性はあったにしても少ないと思われている。 Idoたちは(p. 563),Cペプチドが糖尿病性ラットにおける血管と神経の機能障害を 防ぐことあるいは減弱することができることを示している。 この作用は、非キラル相互作用(LとDアミノ酸は効力の等しい)によって仲介され ているため、受容体や結合部位を関与しないと見られている。 Cペプチドが糖尿病における異常性を訂正する能力は、Cペプチドが糖尿病合併症の 治療で利用しうることを示唆している。 (An)

二通りの制御(Doubly controlling)

プロトオンコジーンのタンパク質リン酸化酵素B(PKB)が成長因子受容体によって、 細胞の情報伝達に関与している。 ホスホイノシチド3-リン酸化酵素(PI3K)活性の増加によって、PKBが活性化されていることが 知られているが、どのように制御されているかが不明であった。 Stokoeたちは(p. 567)、PI3K酵素の生成物であるホスファチジルイノシトール3,4,5 三リン酸[PtdIns(3,4,5)P3="PIP3"]がPKBを二通りの方法で調節していることを報告している。 まずPKBをリン酸化し、活性化するリン酸化酵素を刺激し、その後PKBに結合する ことによって、活性化するリン酸化酵素に適した基質を生成する。 この複雑な調節機構によって、細胞内の妥当な位置でPKBを精密に制御していると思われる。 (An,SO)

C型肝炎クローン(Hepatitis C clone)

肝炎や硬変を生じさせる、C型肝炎ウイルス(HCV)は、世界中の人口の1%に 感染している。このウイルスの研究には、遺伝的な研究を行える均一な サンプル患者が必要だが、実際は不均一なサンプルが多く、障害になって いる。Kolykhalovたちは(p570)、チンパンジーにおいて感染性でかつ病状を引き起こす ウイルスの全長クローンの共通配列を特定した。この感染力には、これ 以外に余分な配列や因子を必要としない。分子的に特定された物質により 感染させることが出来るのでウイルス性変異と免疫選択の研究を促進する。 (Na)

磁気抵抗効果を操作する(Manipulating magnetoresistance)

磁場をある種の材料に印加すると、その抵抗値が変化する。このような磁気抵抗効果(MR) は磁場の センシングに用いることができる。 Ramirez と Subramanian は、典型的なCMR材料では達成 不可能なほどまで、ピロクロール化合物 Tl2Mn2O7 の巨大MR効果(CMR) を扱っている。典型的な 材料は、ペロブスカイト構造を持つ亜マンガン酸塩である。彼らは、Tl(タリウム)をSc(スカンジウム) で置換するすることにより、本質的には磁性は変化しないが Tl-O 格子上の電子伝導は影響を受けることを示している。これは、 顕著にCMR効果を増強させる。(Wt)

搬出コード(Export codes)

細胞内におけるタンパク質の選り分けは、輸送されるタンパク質の中の特定の配列と 輸送小胞の被膜タンパク質との相互作用によるものである。 NishimuraとBalchは、膜貫通のタンパク質VSV-G(水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質) の中の特定の配列を同定した。この配列は、小胞体(ER)から搬出するタンパク質COPIIで 被覆した小胞へ、VSV-Gを指示している。 Asp-X-Glu(アスパラギン酸-X-グルタミン酸)配列は、VSV-Gの搬出に必要であり、 普通には搬出されないタンパク質にのせて、ERから搬出できるようにする可能性がある。 (An)

酵母の有糸分裂を見る(Seeing yeast mitosis)

細胞分裂周期に関する最近の発見は、発芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の遺伝的な分析によって もたらされている。しかし、紡錘(体)や染色体移動に関する研究は、顕微鏡観察や形態的観察がより 容易な動物や植物の細胞で行われてきた。Straightたち(p.574)は、緑色の蛍光性タンパク質 によって酵母の染色体や紡錘を標識づけ、生きた酵母細胞中での有糸分裂を可視化すること が出来た。彼らによる研究結果から、染色体分離と紡錘の伸長において、最初は速く、次には遅い 相があること、そして、テロメアの分離の前にセントロメアの分離があること、 中期プレートで染色体が整列に失敗すること、染色体の極方向への移動は微小管に 依存していること、などを明らかになった。(Ej,hE,Kj)

ポリマーによる光の増幅(Gaining light with polymer)

光屈折率材料(photorefractive: PR)は2ビーム結合の機能を果たし、 一つのレーザービームのエネルギーがもう一つに伝達される。このプロセスで、 光学的な利得を生じるため、この材料は光トランジスターとして機能する。 通常無機のPR材料は高い利得率を示す、しかしGrunnet-Jepsenたちは (p549、p530のAndersonの展望も参照)、薄いPRポリマーフィルムを透明な 電極の上に積層することで利得率が1以上最大5までを達成することを示した。 それは又、光学的キャビティを構成し、一本のビームで自励発振を生じさせる。 この立体配置は時間的に逆転したイメージを生ぜさせ、光学経路を反対に走らせ、 導入された歪みの全てを除去する用途に用いることが出来る。(Na)

宇宙の記録(Cosmic markings)

宇宙進化の核種の過去の量の記録を用いることにより、太陽や地球のダイナモ効果の歴史を推測す ることが可能となる。Bard (p. 532)による展望記事の中で議論されているように、年代の算定の ためには、炭素14のような宇宙進化を記録する核種を用いる必要がある。Plummer et al.(p.538) は、モリネズミの糞塚の中に保存されているモリネズミの尿中の塩素から、過去4万年に渡って、一つの宇宙 進化上の同位体である塩素36の生成の歴史を推測している。この塚は、低緯度におけるその生成 の有用な記録を与えている。そして、これによると、更新世の終わりにおいて、生成割合が突然減 少したこと示唆している可能性がある。(Wt)

大量のエネルギーを与えられたプレート(Supercharged plates)

カンブリア紀の初期、今からおよそ5億4千万年前は、動物が爆発的に増えたと 見られる時代であった。これはおそらく地球の大気や海洋を構成する物質の種類 の変化に伴って、あるいはそれに引き続いておきたことであろう。 Kirschvinkたちは、複数の大陸について得られた古磁気データをまとめ、 この時代がまたプレートテクトニクス理論の面からも普通でない時代であった、 ということを示唆している(p.541)。 データが示しているのは、カンブリア紀の初期および中期の間、すべての主な 大陸プレートが急速に回転、移動していた、ということである。たとえば、 オーストラリアは3千万年の間に、明らかに緯度にして90度ほども移動した。 著者たちは、この運動は、地球のマントルおよび岩石圏の急速な回転によって 説明できると示唆している。(KF)

おあつらえの細孔(Pores to order)

メゾポーラスな珪酸塩材料は、ナノメートルのスケールの幅を持つ細孔のネットワークを含んでい る。McGrath たち(p.552) は、テンプレートとして離液系列L3相を用いることにより、どの ようにして細孔の直径を広範囲にわたり調整するかを示している。L3相は、水を二つの部分に分 割するような多重に連結した二重層である。そして、その細孔の大きさは界面活性剤の濃度ととも に連続的に変化する。その材料は大きな、光学的に透明な一枚材料を形成した。そして、その細孔 に近づくために界面活性剤を取り除く必要はない。可能な応用としては、フィルターや光学材料あ るいはナノメートルサイズの合成物などがある。(Wt)

電子的共有地の悲劇(Tragedy of the electronic commons)

インターネットの利用者は、自分がネット上で利用した時間やバンド幅の量に 対応して課金されるわけではない。この状況が、貪欲な振るまいや、ウェブの 資源への需要が過剰に引き起こされることにつながっている。「パケットの嵐」 と呼ばれる極端な局所的渋滞が幾例も観察されるようになってきたが、これは、 インターネットのノードが、データのストリームであふれさせられることである。 HubermanとLukoseは、渋滞に関する観察結果について報告し、この種の渋滞の 性質をモデル化している(p. 535、またp. 477のSeifeによるニュース記事を 参照のこと)。こうしたモデル化は、ネット上の資源をどう割り当てれば負荷の 均一化やバンド幅の管理を達成できるか、を考えていく際の助けとなることで あろう。(KF)

スタートの遅れ(Delayed start)

ヒトにおける最も一般的な運動ニューロンの病気は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、 別名リー・ゲーリッグ病である。このヒトの病気の、マウスにおけるモデル、つ まりマウスが銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼの変異を有する場合について、 Kosticたちは、プロトオンコジーンbcl-2を過剰発現している他の動物と当該の マウスとを掛け合わせることで、運動ニューロンの損失を防ごうと試みた (p.559)。その子孫では病気の開始は遅れ、神経変性も少なかった。 この結果が示唆するのは、ALSに関連する症状を改善するには、細胞死への道筋を 妨害する治療的アプローチが有効である可能性がある、ということである。(KF)

エコロジー特集(Special issue on ecology)

生態学者たちは、従来人間活動の及ばない、純粋な自然状態を 研究対象としてきたが、今やそのような環境を見つけることは 不可能になってきた。むしろ、人間とのかかわりあいによる 自然の理解がより重要であると考えられる。その意味で、今回 編集者に、法的規制の重要性を認識している政治家が加わって いるのは意味がある。以下は、その目次である。(Ej)
Human-Dominated Ecosystems; News
--------------------
Human-Dominated Ecosystems
Richard Gallagher, Betsy Carpenter
p. 485 (see also: p. 486, 489, 491, 494, 500, 504, 509, 515, 522, 528)
ECOLOGY: Extinction on the High Seas
David Malakoff
p. 486 (see also: p. 485, 489, 491, 494, 500, 504, 509, 515, 522, 528, 487)
ECOLOGY: Seas Yield a Bounty of Species
David Malakoff
p. 487 (see also: p. 486)
ECOLOGY: 'No-Take' Zones Spark Fisheries Debate
Karen F. Schmidt
p. 489 (see also: p. 485, 486, 491, 494, 500, 504, 509, 515, 522, 528)
ECOLOGY: Brighter Prospects for the World's Coral Reefs?
Elizabeth Pennisi
p. 491 (see also: p. 485, 486, 489, 494, 500, 504, 509, 515, 522, 528)

Human-Dominated Ecosystems; Articles
--------------------
Human Domination of Earth's Ecosystems
Peter M. Vitousek, Harold A. Mooney, Jane Lubchenco, Jerry M. Melillo
p. 494 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 500, 504, 509, 515, 522, 528)
Biotic Control over the Functioning of Ecosystems
F. Stuart Chapin III, Brian H. Walker, Richard J. Hobbs, David U. Hooper, John H. Lawton, Osvaldo E. Sala, David Tilman
p. 500 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 494, 504, 509, 515, 522, 528)
Agricultural Intensification and Ecosystem Properties
P. A. Matson, W. J. Parton, A. G. Power, M. J. Swift
p. 504 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 494, 500, 509, 515, 522, 528)
The Management of Fisheries and Marine Ecosystems
Louis W. Botsford, Juan Carlos Castilla, Charles H. Peterson
p. 509 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 494, 500, 504, 515, 522, 528)
Hopes for the Future: Restoration Ecology and Conservation Biology
Andy P. Dobson, A. D. Bradshaw, A. J. M. Baker
p. 515 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 494, 500, 504, 509, 522, 528)
Forests as Human-Dominated Ecosystems
Ian R. Noble, Rodolfo Dirzo
p. 522 (see also: p. 485, 486, 489, 491, 494, 500, 504, 509, 515, 528)

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