AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science May 23, 1997, Vol.276


初期の地球を暖めたもの( Warming the early Earth)

40億年前の地球の大気は、酸化でも還元でもない状態であったと考えられており、当時の太陽光エネル ギーの見積もり値から予想すると、当時の平均表面温度は零度前後または零下であり水は凍結してい たであろう。しかしながら、38億年前には地球表面にはメタン生成菌が発生した証拠があ り、液体の水のある暖かい天体となっていたとも考えられている。SaganとChyba(p.1217 、Kastingによる展望p.1213も参照)は初期の地球の大気は現在より還元状態であり、メタン などのガスが温室効果をもたらした、と仮定することで、このパラドックスを解決しよう と試みた。メタンが光分解して、上空に有機物からなる霞を作り出し、低空のアンモニアが 紫外線によって光分解されることを防いでいる、というのである。(Na,Og,Nk)

3次の努力(Third-order efforts)

対称性の効果により、2次の高調波信号(周波数倍増のような2つのフォトンの結合による)を生成しうる 材料は限定される。このような制限は3次の効果には当てはまらない。そして、この効果もまた光学分野 で重要な用途がある。しかし、3次の効果に必要とされる、多くの材料の2次の超分極率γは通常非常に 小さなものである。Garito と共同研究者達は、有機分子においてγを増加させる方法について示唆して きたが、Marder たち (p. 1233; Service による解説記事(p.1195) も参照のこと)は、これらのアイデ アを実験的に調べてきた。直線形の共役分子では、分子内の電荷移動がますます強まるにつれ、その3フォ トン共鳴も強まる。(Wt)

煙のシグナル(Smoke signal)

野火が自然の原野を焼き尽くすときには、もとの植生は完全に破壊されるかも 知れ ないが、通常は予測されるパターンの新しい植生がすぐに取って代わる。 KeeleyとFotheringham(p.1248;およびMalakoffによるNewsStory;p.1199)は、カリ フォルニアの茂みに典型的な1年生植物の発芽について研究した。高温によって発 芽が刺激される火事跡の植物と異なって、Emmenantheの種子は煙の中の化学物質に 刺激される。煙が新鮮であろうと古かろうと、Emmenantheの発芽を誘発する活性化 成分は窒素酸化物である。(Na,Ej)

エウロパ、その内側と外側(Europa, inside and out)

惑星探査機ガリレオはエウロパと1996年12月19日(E4)と1997年2月20日(E6)の2度近接遭 遇をしていた。Kivelsonたち(p.1239)は、E4の間に木星の磁気圏の錯乱を分析して、エウ ロパが木星の磁気圏に対して傾いた、 約240ナノテスラの双極子モーメントを持っており、た ぶんそれが中心(核)にあるダイナモ(発電機構)に関連していると示唆している。Andersonたち (p.1236の表紙参照)は、E4とE6の間に得られた外部重力場を分析して、エウロパ は氷の表層から内側では液体の水になる100ー200km厚 の外殻と、外側は岩石質で中心は金属質の核を持つと示唆している。 金属の核はもしエウロパが磁場を持つというならば、好ましい結果である。 (Ht,Nk)

Rabの役割(Rab role)

細胞内のタンパク質の輸送は、一つの区画から分離し、別の区画を特異的に認識し、 これと融合する 小胞において起こる。認識は、t-SNAREと呼ぶ標的膜内のタンパク質と相互作用する 小胞タンパク質(v-SNAREと呼ぶ)によって仲介されている。Rabと呼ぶ小さいな グアノシントリホスファターゼは、この過程において必要であるが、 正確な機能は不明である。 LupashinとWaters(p. 1255;Rothmanによる展望記事参考,p. 1212)は、 酵母の細胞における過程を研究し、t-SNAREは、Sly1pと呼ぶ別のタンパク質によって v-SNAREと結合できない不活性な状態に 保持されている証拠を得た。Rabタンパク質は、 t-SNAREと一過性に相互作用して、Sly1pの抑制性の効果を無効にし、 t-SNARE-v-SNAREの複合体の形成とその後の膜の融合を可能にする。 (An)

簡単にはごまかされない(Not easily fooled)

時にして学習には、何の努力も要らないように見えるが、どうしてこんなことが起 きるのか?Bernsたち(p.1272)は、ある文法規則に従った数字列によって被験者を訓練 し、続いて、ほんの少しだけ変化した文法(変化は極めて僅かであり、違いは殆ど 意識されないほど)を提示された場合の脳の活性化領域(複数)を画像化した。そ の結果、これら領域の1つ(腹側線状体)の活性化は、最初の文法の学習中にピー クを示し、第2の文法の訓練中に、更に高いピークを示した。他の研究から、線状 体は確率的な見込みに対して信号を認識するらしいと言われているが、これらの結 果から、無意識の内に新規な ものを検出するという過程を通してであることを示している。(Ej,Nk)

疲れたネコ(Tired cats)

我々はなぜ寝付くのか。Porkka-Heiskanen ら(p. 1265)の示したところは、 ネコの場合には、アデノシンは目覚めている時間が長くなる場合に眠たくな るのを助長している。 細胞外のアデノシンの濃度は、覚醒の持続時間に 比例して増加し、次の回復睡眠時期に減少する。覚醒を支援するニューロンの回路は、 脳波電位の測定によれば、代謝性の活性の副生物であるアデノシンによって抑制されている。 (An,Nk)

細胞のプロフィール(Cell profiles)

癌細胞と正常細胞の違いを理解することは、癌に対する基礎知識を増やすだけでな く、診断を助ける新しい治療法やマーカーを提供することが可能となる。 Zhangたち(p.1268)は、以前開発した遺伝子発現連続分析法(SAGE)を利用して、 45,000の遺伝子由来の300,000個以上の転写物を調べた。その結果、正常細胞に比べ て胃腸の腫瘍から得られた新生物細胞において、500以上の転写物は、有意に異なっ たレベルに発現されていた。(Ej,Kj)

毎日、毎日、窒素を中へ、酸素を外へ(Day in, day out, nitrogen in, oxygen out)

群生の海洋のラン藻Trichodesmiumは、普通は嫌気性反応である大気窒素の固定を、昼間の光合成で 酸素を生成しながら同時に行うという特異な能力のため、 海洋生物学者に謎としてみられている。Capone (p.1221)らは、海洋中の制限的な栄養分である 生物が利用できる形態の窒素を供給するこの重要な生物体 に関する我々が理解している現状を概観している。ラン藻の昼行性の窒素固定パターンは、 内在性のリズムを持つ簡単な生物体として重要な例である。 (An,Nk)

角度を改良して(Improving the angles)

タンパク質の核磁気共鳴による研究では、ボンドベクトル間の角度は、通常、スカラー結合定数を測定し、経験 的に得られた曲線でそれらを校正することにより決定される。しかしながら、この方法は隣接するボンド( すなわち、ねじれ角)に制限され、これを満たす可能な解が複数存在する。Reif たち(p.1230) は、異なる2つ のボンドに関与する4つの核の間の双極性の結合に対する交互相関を有する緩和率を測定することにより 、この曖昧さを減少しうることを示している。経験的な校正は不用であり、ボンドは隣接している必要が ない。(Wt)

柔らかいダイヤモンドと強い金属(Soft Diamonds and strong metals)

ダイヤモンドアンビルセルは,地球の深部マントルやコアでの圧力に相当する 数百ギガパスカル下での物質,特に岩石の特性を知るための高圧実験に,ルーチン的に 使用されている。このような高圧下では,試料を圧縮するダイヤモンドと金属ガスケットの状態に 関心が持たれる。Hemley(p.1242)らは,セルのいくつかの異なる方向で放射光X線を観測できる方法を 開発することにより,ダイヤモンドとガスケットの応力ー歪の3次元分布を得た。 彼らは、この情報によりタングステンと鉄が200〜300ギガパスカルといわれる理論値を超 えてもっと高い降伏強度を示すことがわかった。 (Ht,Tn)

酸素拡散と溶融構造(Oxygen diffusion and melt structures)

溶融岩石中での酸素の拡散係数は、岩石の動力学特性の鍵となる粘性に関連してい る。圧力に伴う、溶融構造と粘性の変化の測定は難しいが、地球のマントル内の溶 融物の移動度や動きを理解する上で重要である。Poeたち(p.1245)は、圧力上昇が粘性に 与える影響を推測するため、いくつかの高圧下のケイ酸塩溶融物中での酸素拡散係 数を測定した。その結果、重合したアルミノシリケイト溶融物中の酸素拡散係数 は、溶融構造の変化に対応して、5から8ギガパスカルの間で最大値をとる。(Ej)

過失の訂正(Correcting Mistakes)

タンパク質の合成において、tRNA合成酵素が、アミノ酸に対応するtRNA分子に付着する 過程がアミノアシル化とよばれている。類似の構造を持つアミノ酸間の弁別が困難なため、 tRNAのアシル化の間違いを起すことが有りうるが、この間違いは翻訳編集反応に よって訂正される。 Hale(p.1250) らは、一連のキメラtRNAを作成し、アミノアシル化に関っているtRNAの ヌクレオチドが翻訳の編集に必要なヌクレオチドとは異なっていること示している。 (An)

小さく分ける(Dividing into sets)

細胞分裂における最も決定的な場面は、染色体が分割した各々の娘細胞に等分割さ れることである。さらに複雑なことに、減数分裂によって、遺伝子補足の組換えと 分離によって単相体のセットになる。これらの出来事が失敗すると、ヒトのダウン 症候群のように、染色体の不分離となる。Conradたち(p.1252)は、相同的酵母染色体の 相互作用を促進することで染色体の組換えを許しているしているらしい、酵母中の タンパク質である「不分離1タンパク質(Ndj1p)」を同定した。Ndj1を欠く酵母細胞 は、減数分裂中、染色体を効率よく等価な集団に分割することが出来ない。 Ndj1は染色体のテロメアに豊富に存在する。(Ej,Kj)

プロモータと結託して(Ties to promoters)

転写開始の最初のステップの1つには、2本鎖DNAが1本に分離するステップが あり、これによってDNAテンプレートがRNAポリメラーゼに接することが出来 る。MarrとRoberts(p.1258)は、後期遺伝子プロモータPR’の転写開始に関与しているタン パク質-DNA相互作用を調べた。大腸菌RNAポリメラーゼは、転写開始点の10 塩基下流(ー10)に中心をもつ、非テンプレート鎖の塩基配列と特異的に結合し ていた。このー10にある配列エレメントか、あるいは大腸菌サブユニットである σ因子70個の内の保存領域2のいずれかにおける変異原性がポリメラーゼのプロモー タに対する結合親和性を減少させた。(Ej,Kj)

柔軟なポーリン(Pliable porins)

三価鉄enterobactin受容体であるFepAは、鉄や抗菌薬が、グラム陰性菌の外膜を通 過して運ばれる孔の役目をする。試験管での実験によれば、ポーリンに似た FepAは強固な動かないチャネルを形成することが推測される。しかし、 Jiangたち(p.1261)は、部位特異的なスピン標識と電子スピン共鳴スペクトル分析を利用 して生体細胞中のFepAを観察し、分子が異なるコンフォメーションの間をシフトす ることを見つけた。(Ej,Kj)
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