AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science May 9, 1997, Vol.276


友軍への情報伝達(Signaling to friendly troops)

3つの戦利品を利用した奇妙な相互作用 を植物が利用している。つまり、ある種の 昆虫に攻撃された植物は、この昆虫の 天敵に信号を送る。Albornたち(p.945; Farmerによる展望、p.912)は、イモムシ からの化学的な信号に誘発されて、傷ついた トウモロコシ実生は、イモムシの天敵のスズメバチ を引き寄せるような、揮発性 の情報を発生しているとして、このイモムシの化学物質を同定した。この 初期信号はvolicitinと言い、エイコサノイドおよび プロスタグラジンの前駆物質に似ているし、多分 オクタデカノイド情報伝達経路の一部であろう。(Ej,Kj)

メゾポーラス材料(Mesoporous materials)

二つのレポートはメゾポーラス材料に焦点を当てている。 これは、数nm直径の中空を有し、分離や触媒作用 に対する潜在的な応用が存在する。Feng たち (p.923) は、メゾポーラス珪酸塩の内側を機能性有機膜で コートすることができた。コーティングはチオール基 を含み、メゾポーラス材料は、水性あるいは有機性の溶 液の両方からの水銀や他の重金属の効果的捕捉剤となっ た。多くのメゾポーラス材料は、アモルファスな壁面 構造を持つ絶縁体である。Tian たち (p. 926) は、 結晶性のメゾポーラスなマンガン酸化物を合成した 。そして、それらは半導体的あり熱的に非常に安定である。(Wt)

カイパーベルト内の炭化水素(Hydrocarbons in the Kuiper belt)

カイパーベルトとは、海王星の軌道のわずかに外側に存在する多数の天体の帯であるが、この5年間にカイパ ーベルトに対する我々のイメージは、およそ40個の天体の直接観察により、よりクリアなものとなってきた 。これらの遠く離れた天体の検出は、そのサイズが小さいことと成分が判らないことにより、これまでは不可 能であった。Brown たち (p.937) は、Keck I 望遠鏡を用いてカイパーベルトの天体 1993SC の近赤外 スペクトルを観測し、1993SC の表面は炭化水素の氷から成っていると推論している。1993SC と、冥王星や トリトンのスペクトルの類似性は、これらの天体に対してカイパーベルトの起源を示唆している。(Wt)

彗星のX線と太陽風(Comet x-rays and the solar wind)

近年の百武彗星のX線放射が観測されるまでは、彗星は強いX線源であるとは考えられていなかった。 Haeberli たち(p. 939)は、太陽風と彗星のプラズマとの相互作用のモデルを作成した。3次元一流体近 似による磁気流体力学的なモデルは、X線放射のエネルギーと形を再現した。このX線は、太陽風と彗星のプ ラズマ中の中性の分子あるいは原子との電荷交換による励起により引き起こされる。(Wt)

カボチャで始まった(Started with squash)

最近の放射性炭素による年代測定によれば、北米の農業は、トウモロコシや マメその他の作物を使って6,000年前に始まったと推定されているが、以前 から、農業の起源は10,000前にさかのぼると言う提案もある。Smith は(p. 932; Roushによるニュースストーリー, p.894) 、メキシコOaxacaの Guil Naquitz洞窟から発掘された、カボチャ(Cucurbita pepo)の種、花柄、そして、果物の 皮の破片を分析し年代測定した。種は野生型より大きく、他の特徴とともに これら種や破片が栽培植物からのものであることを物語っている。種や 破片から得られた放射性炭素による校正された年代測定値は、最大、10,000 年前にまでばらつく。(Ej)

めずらしく速い(Uncommonly fast)

オロチジン5'一リン酸 (OMP)を対応するウリジンヌクレオチ ドに転換させる触媒を する酵素であるOMP脱炭酸酵素は、この反応速度を数桁も加速する。 この異常な加速 は金属とか補助因子が存在しないとき起きるが、その原因はよく分かって ない。 Lee と Houk (p. 942)は、量子力学的計算を基礎として、基質のプ ロトン化は脱 炭酸に呼応して、 極めて安定化したカルベンを中間体として起きるこ とを提案 している。このプロトン化は、酵素の活性部位にとって特別有利な無極性 の環境でしか生じない。(Ej,Kj)

チロシンリン酸化酵素の抑制(Inhibiting tyrosine kinases)

タンパク質チロシンリン酸化酵素の活性は細胞増殖を刺激し、癌細胞の 無制御な増殖に寄与するが、このような酵素の阻害剤は治療に役立つであろう。 Mohammadi たち(p. 955)は、oxindoleグループを基礎にした比較的特異的な 阻害剤を利用して、線維芽細胞 成長因子受容体1のチロシンリン酸化酵素領域の結晶構造を示した。 これらの阻害剤はアデノシン三リン酸結合部位に結合し、この点においては、 いろいろなキナーゼと 類似しているが、これらはある種のキナーゼを優先的に抑制する。研究の 結果、 この特異性が構造面から理解できる基礎を提供し、更に効果的な阻害剤の 開発が可能になるかも知れない。(Ej,Kj)

対照的結果(Contrasting result)

視野の全体的なコントラストレベルは大きく変化するにもかかわらず、我 々の 視覚は急速に順応する。限られたコントラスト感度しか持ってない我々の 皮質 ニューロンは、適当な時間内にどうやって適応するのであろうか。 Helmholtzは19世紀、この現象の心理物理学を研究している(Barlow, p.913, による展望参照)が、細胞外電極による生理学的研究によって、コン トラスト のゲイン制御理論が導かれた。Carandini と Ferster (p. 949) は、細胞内 記録によるデータによって予想外の解釈を示した;すなわち、慢性興奮性 入力を用いて 、最新のコントラストの平均値にニューロンのレベルを調整している。 このメカニズムは、よく知られた視覚の変化を符号化する膜電位の ゆらぎとは独立に機能する。(Ej,Kj)

偏ったブラウン運動(Biasing Brownian motion)

液体中に懸濁している微粒子はブラウン運動をし、平均的には正味の粒子 移動 はない。論説の中で、Astumian(p.917)は、非対称電場や化学ポテンシャル のような 非平衡のゆらぎによって、ブラウン運動が1方向の運動をどのように作り出すかを議 論している。このような効果はミクロな生物的モーターやポンプに生じてい るかも知れないし、さらに粒子分離に応用される可能性がある。(Ej)

氷上のタンパク質のNMR(Protein NMR on ice)

核磁気共鳴 (NMR) 分光によるタンパク質の構造決定は通 常溶液法で行われる が、液体中でゆっくりとしか回転しない非常に大きなタンパク質や、膜に くっつ いているタンパク質では、固体NMR法が大切な代用となる。Hallた ち(p.930)は、固体 法において、窒素酸化物-フリーラジカルの不対電子からマイクロ波 照射した 核スピンに至る信号を動的分極伝達を使って増強する方法について述べて いる。凍った水ーグリセリン溶液中のアルギニンとT4リゾチームについて 、模範実験がなされた。(Ej,Kj)

放出される氷床(Discharging ice)

グリーンランドの氷床はバランスがとれているのか、あるいは縮小してい るのか 成長しているのかを見積もることは困難であった。第1に、重量は氷山の 分離 や放出によって減少していると思われてきた。Rignotたち(p.934)は衛星レ ーダー干渉を 利用してグリンランド最北端の氷床が浮遊を始める境界線を同定し、この 情報から氷床の重量バランスを評価した。そのデータによると、ほとんどの氷 は、氷床が浮遊を始める基線の所で解けてなくなるらしい。(Ej)

細胞分裂の低速化(Slowing cell division)

細胞分裂の促進や、その他の生物学的過程は、リン酸化や、分裂促進因子 活性化タンパク質(MAP)キナーゼのカスケードによるタンパク質キナ ーゼの活性化 によって起きる。このようなシグナルは、脱リン酸や、MAPキナーゼ キナーゼMEK の不活性化によって平衡がとられているが、多分、脱リン酸酵素タンパク 質 2A (PP2A)によっている。Hericheたち(p.952)は、PP2A が制御されるか も知れない新しい メカニズムについて述べている。成長因子によって刺激されていない休止 細胞において、PP2A は、以前、キナーゼカゼインキナーゼ2(CK2)タ ンパク質の触媒性サブユニットとして報告されていたタンパク質に付随した。 CK2サブユニットの過剰発現は、MEKとMAPキナーゼの分裂促進因子によって 刺激される活性を抑制し、グアノシントリフォスファターゼRasの発 癌性の型による細胞の癌化を抑制した。このような、CK2サブユニットに よるPP2Aの制御は、無制御な細胞増殖を起こすSV40ウイルスの小さな腫瘍抗 原による仲介とは正反対のように見える。(Ej)

HIV 薬の成績(HIV drug performance)

ヒト免疫不全症ウイルス-1型 (HIV-1)に対して作用する強力な薬の組み合わせ の存在を決定するには、血中のウイルスレベルを測定することは大切である。 しかし、これら薬剤が、ほとんどのウイルスが生産されているリンパ組織で どのように働いているかを評価すること も重要である。Cavertたち(p.960)は、24週間に渡るウイルス性タンパク 質分解酵素と逆転写酵素阻害薬の3重の組み合わせ処置を通じて、 HIV-1 血清陽性個体の扁桃腺の組織診断による ウイルス負荷を計測した。いくつかの感染した単核細胞は依然として残ったが この処置によりリンパ組織から99%以上のウイルスが除かれた。(Ej,Kj)

進化と共に、頭脳も体も大きくなっているか?

人類学や、古生物学において、一般的な知識は、人類が進化するに従って 脳の容積が大きくなるし、体も大きくなっていると言うものであった。 Harvard大学のS.Gouldによれば、それは、大きな誤解であると言う。 Gibbon(p.896)の解説記事によれば、人類誕生の180万年前から、5万年 前まで、つまり、ネアンデルタール人の頃までは、この単調な、脳と 体の増加関係は続いたが、それ以降は、脳も体も縮小傾向にある。 ある種のネアンデルタール人は、今までで最大の脳と体をもっていた らしく、平均の身長は1.85m, 体重は71kgに達した。では、なぜ、減少 し始めたのか。生活環境が安定し、大きな体が有利ではなくなったためかも 知れないと言う。(Ej)
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