AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science March 28, 1997, Vol.275


ヘール・ボップ彗星:来るべきものの形 (Comet Hale-Bopp: The shape of things to come)

一連のレポートはヘール・ボップ彗星に焦点を当てている。それらには、極度の明るさ 、その増加する活動度、そして太陽に近づくにつれて変化し、ダスト性の噴出現象に対 する傾向等の議論が含まれている(Cruikshank p.1895 による展望を参照のこと)。ハ ッブル望遠鏡からの詳細な画像は(Weaver たち, p.1900)、その彗星の核が非常に大 きい(直径 27km から 42km)ことを示している。地球を周回する赤外衛星天文台( Crovisier たち,p.1904)と、地上に設置された望遠鏡(Hayward and Hanner, p.1907) からの、熱的な赤外観測は、彗星が火星の軌道の内側に動いてくるにつれ、核から離脱 してきたダスト粒子は、多分、結晶性あるいは非晶質の珪酸塩であることを指示してい る。可視光による観測(Rauer たち, p.1909, 表紙と Wagner and Schleicher p. 1918 を参照のこと)は、氷の多いダスト粒子は、太陽 から非常に離れた距離にあった時でさえ氷質ダスト粒子から 主に水とシアンから成るガスを大量に昇華させていたことを示している。測光観測もまた( Schleicher たち, p. 1913)、ガスの生成率は、観測されたいかなる距離において も、また他のいかなる彗星よりも、20倍から100倍大きいことを示唆している。電波観 測では(Biver たち, p.1915)、ヘール・ポップ彗星が太陽に接近するにつれて生ずる 、気体状の分子の放出の速度と時間的変化を追跡した。また、そのダスト性の尾からの 昇華が彗星核本体からの昇華に変化するにつれての変化を追跡した。彗星の科学者達は、この彗星が、 異常に長い期間にわたり、いかにして物理的に噴出,回転し、化学的に分化している かを解明し始めたところである。(Wt,Og,Nk)

ナノチューブ中の電子輸送(Electron transport in nanotubes)

一つ一つの電子は、計算における究極の「ビット」を表している。そして、たった一個 の電子の帯電による変化に対して、コンダクタンスが変化するような構造を作るために 多く大な努力がなされてきた。Bockrath たち(p.1922; Kouwenhoven による展望 p.1896 も参照のこと)は、高度に秩序だった単層の壁面からなるカーボンナノチューブ の束、すなわち、「ロープ」の輸送特性を測定した。これらのナノチューブを、リソグ ラフィーによって、200〜500ナノメーターごと、分離された金属のコンタクトに付着し た。絶対温度10K かそれ以下では、低バイアスの電位に対して、抑止されたコンダクタ ンスの領域がある。束の中の電子の数がバイアス電位の変化と共に変化するにともない 、コンダクタンスの大きなピークが、観測されている。個々のナノチュープを通しての 単一の電子の共鳴トンネル効果により、これらの結果を説明できるように見える。(Wt)

腸の免疫反応(Gut immune reaction)

腸は、病原体に曝されている主要な部位であるのみならず、この部位は粘膜表面 として存在し、病原体に対する弱い障壁でもある。Wangたち(p.1937;および Shanahanによる展望を参照p.1897)は、腸の免疫防御について現在知られている複 雑さや柔軟性について、新たな制御系の存在を追加した。彼らは、腸の上皮細胞と、その 隣接リンパ球の間における視床下部-下垂体-甲状腺軸(連携)(hypothalamus- pituitary-thyroid axis)の神経内分泌ホルモンによって仲介される調節性相互作 用について報告した。 腸の免疫系ネットワークでその制御系が存在しない状態においては、末梢でなく 、腸内部におけるT細胞の型の範囲が減少した。この免疫系ネットワークは、腸のT細胞 発生を明らかにするうえで重要かもしれない;また、これは、腸の機能を考える上で重要な性 質である、極めて柔軟で 局在化した免疫活性の制御の存在を示唆しているようである。(Ej,Kj)

脳癌の遺伝子(Brain cancer gene)

グリア芽細胞腫は、ヒトの脳癌のもっとも致死的な形態であるが、この分子レベ ルでの病因はほとんど知られていない。Liたち(p.1943;およびPennisiによるニュー ス解説p.1876)は癌抑制遺伝子の候補、PTEN、を同定したが、これは、テストされ たグリア芽細胞腫の系統株、異目間移植細胞、および原発腫瘍のうちの1/3で変異して いた。PTENタンパク質は、チロシン脱リン酸酵素や、細胞表面情報伝達部位のア クチンフィラメントと結合するタンパク質であるtensinと相同の配列を持ってい る。PTENにおける変異は、前立腺や乳ガンの試料からも、より低い頻度であるが 見つかっている。(Ej,Kj)

GRPを入手して(Getting a GRP)

ホスホイノシチド(PI)3-リン酸化酵素は細胞表面の多くの受容体に応答して活性 化される。この酵素はホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸[PtdIns(3,4, 5)P3]の形成を触媒するが、引き続いて、この経路を通じて行われる情報伝達のス テップについては、よく分かっていなかった。Klarlundたち(p.1927;および Hemmingsによる展望P.1899)は、PtdIns(3,4,5)P3に結合する、GRP1と彼らが呼ん でいるタンパク質を同定した。GRP1は、PI 3-リン酸酵素のcelluler effectを仲 介する他のタンパク質と相互作用しているように見える。GRP1は、インテグリン との相互作用を通じて細胞接着を制御しているのかも知れない、そして、GRP1の グアノシン トリフォスファターゼARFとの相互作用が、タンパク質選別と膜輸送 の制御を可能にしているようだ。(Ej,Kj)

核の外で(Out of nucleus)

免疫応答に決定的な役目をする遺伝子転写は、転写制御因子NF-ATによって制御さ れている。NF-ATのカルシウム依存性脱リン酸によって、転写制御因子の核内部へ の移入が起きる。Bealsたち(p.1930)は、NF-ATの、もう一つ別の 制御系統に ついて述べている。この場合、NF-ATはタンパク質キナーゼ グリコーゲン合成酵 素キナーゼ-3(GSK-3)によってリン酸化され、そして搬出される。このようにして、 GSK-3はNF-ATのカルシウムに依存した活性化と反対の作用をしている。発生時、 パターン形成の制御におけるGSK-3の効果は、少なくとも部分的には、NF-ATの調 節の結果であろう。(Ej,Kj)

急速な進化(Evolving rapidly)

自然界における進化の速度はどのくらいであろうか?Reznickたち(p.1934;および Morrellによるニュース解説p.1880)は、グッピーの集団を、多くの捕食者がいる 環境から、捕食者のいない環境、例えば、滝の上流へと移住させた。この結果、 体長のような生活史を特徴付ける形質に、短期間で変化が生じた。このことは、 人間が引き起こした環境変化以外においても、進化は自然界において急速に生じ ることを示している。(Ej,Kj)

微粒子の流れ(Granular flow)

我々の周りには、砂丘、サイロ、砂時計、川底の砂、など、多様な粒子の流れ 現象が存在するが、よく分離された粒子は、衝突から次の衝突へと、ほとんど ランダムな速度分布を持って飛ぶことがわかった、とMenonとDurian(p.1920) は報告している。それによれば、衝突間の時間よりも10^3から10^4も長い時間 のスケールで、ゆっくりとした拡散性のcollective rearrangementが生じている。(Ej)

SiO2の高周期の2重項(High-frequency doublet in SiO2)

アモルファスSiO2(αSiO2)の高周波数振動は、Si-Oの伸びたモードに対応して おり、中性子スペクトルに明瞭に現われる。このスペクトルに合致する計算 結果が、第1原理密度関数理論(first-principles density function theory) によってえられた、と、Sarntheinたち(p.1925)は報告している。これは 長い間疑問であった中性子の2重項ピークに解決を与えるものである。(Ej)

小脳の役割(A role of cerebellum)

小脳は、長い間運動に関係すると信じられてきた。また、運動と関係して 他の認知の機能も果たしていると言う研究も発表されている。では、この 認知の機能は、運動と独立しているのであろうか、それとも関連を持って いるのであろうか? Allenたち(p.1940)は、磁気共鳴画像を利用して 運動と認知が独立に行なわれ得ることを示した。(Ej)
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