AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science December 20, 1996, Vol.274


変装している癌の前駆細胞?(Premalignant cells in disguise?)

他の癌細胞と同様に、乳癌は、良性の過成長細胞に始まって最終的には浸潤癌に 至る様々な識別可能な形態的変遷をたどると思われている。Dengたち(p.2057)は、 形態的には正常に見える細胞からも乳癌は生ずるのではないかと仮定している。 彼らは浸潤癌に隣接する正常な乳房組織を調べ、いくつかのケースにおいて正常 な組織に遺伝子異常(異型接合性の欠如)が含まれていることを見つけた。これ 等の異常は、以前は明瞭な前悪性組織、あるいは悪性組織のみに検出されていた ものだ。これら正常組織の遺伝的変化の存在が腫瘍の再発の予測となるものかど うかについては研究の余地がある。(Ej,Kj)

火星人最新情報(Martian update)

McKay たち は、以前の記事の中で、 PAH(高分子の芳香族炭化水素)が出現したことと、火星か らの隕石ALH84001の組織的また鉱物学的特徴は、過去に火星上に原始生命体が存在したこととつじ つまの合うこと示唆している。 p.2118から始まる一連の技術的なコメントと返答では、非生物学 的な過程によってこれらの特徴が生みだしうるものかどうかについて議論されている。(Wt)

緑の化学(Greener chemistry)

二つのレポートでは、環境的に厄介なものである溶媒や反応副生成物の使用を最少化する方法に焦 点を当てている(Kaiserによる解説記事 p. 2012 を参照のこと)。 Mark たち(p. 2044) は、 広い範囲のアルコールを、酸素やあるいは空気を用いてさえ酸化しうる、銅を基本とする触媒を合 成した。この結果、オキシダントとして金属酸化物や過酸化水素を用いなくともすむこととなる。 McClain たち(p. 2049) は、非イオン性の界面活性剤を開発した。これにより、有機高分子の 溶媒として超臨界のCO2を用いることができる。そして、ワックスや重油やあるいは他の分子量の大 きな高分子を用いるプロセス用途において、この置換溶媒である超臨界CO2を使うことができる。 (Wt)

フィルムの中に捕らえられて(Caught in films)

脂質や、極性を有する頭部グループと長い尾を持つ他の分子は、単分子層の(Langmuir) 膜を水の 表面に形成することができるが、多層膜を作るには固体の基板上へ移さねばならない。Kuzmenko たち(p. 2046) は、小さな基本となる分子を合体させて、酸性の頭部グループを持つ長鎖高分 子間の相互作用を安定化させることにより、空気と水との界面上に多層膜を形成した。構造に関す る研究から、圧縮下で形成される多層膜の種類は、二つの分子の相対的な右手系左手系の相違に依 存していることが示されている。もし、両方が右手系であれば、結晶性のセグメントを持つ三重層 が形成されるが、もし、二つの分子が異なる掌系である場合は、がさがさに鎖がパッキングされた非 晶質の二重層が作られる。(Wt)

プリオンの鋳型(Prion templates)

動物やヒトの遺伝性で感染性の海綿状脳症を起こす物質として疑われて いるプリオンタンパク質はホストタンパク質の異常コンフォーマー(配座異性体) である。正常なホスト型(PrPC)は、高いαらせんの含有量を持っているが、プリ オン型(PrPSc)は主としてβシートから成っており、タンパク質分解酵素抵抗性を 有する、異なるサイズの断片の、異なるアイソフォームであると想像されている。 Tellingたち(p.2079; および、Gradyによるニュース解説p.2010)の示すところに よれば、プリオンに関連する病気のヒト患者の脳からの抽出物は、 トランスジェニックマウスに神経変性を誘発し,ヒト型のPrPを 発現する。更に、タンパク質分 解酵素抵抗性の断片はヒトの患者に特徴的なサイズを持っていた。これらの結果から、 PrPSc 型の存在がPrPの折り畳みを変えさせ、異なる系統のこれらタンパク質がどの ように出来て、伝播するかを説明するのに役立つことが示された。(Ej,Kj)

リン酸化酵素がカリウムチャネルに出くわす(Kinase meets potassium channel)

カリウムチャネルは、筋収縮やニューロン統合のプロセスに関わり、電気生理学的および生 化学的研究によれば、この活性はセリン=スレオニン キナーゼによって変調を受 けている。Holmesたち(p.2089)は、ヒトのKv1.5カリウムチャネルは Src homology 3(SH3)ドメインの2つの繰り返しを含んでいることを記述している。彼らは、 天然およびクローン化したこのチャネルは、ヒト心筋のSrcチロシンキナーゼに直 接付随していることを示した。リン酸化酵素のv-Srcによる活性化は、チャネルの チロシンリン酸化とチャネル流量の抑制を行っている。(Ej,Kj)

脂肪細胞の運命(Fat cell fates)

脂肪細胞の分化は,上皮増殖因子や線維芽細胞増殖因子のような細胞成長因子によって 阻害されている。Huたち(p.2100)は、脂肪生成の転写調節におけるキー成 分の1つであるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体g(PPARg)は、異なる成長 因子で刺激された細胞中のマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼによって リン酸化されることを示した。リン酸化されることのない ようにしたPPARg変異体を発現する 細胞は、インシュリンのようなシグナルによって脂肪生成の誘導を受け易い。( Ej,Kj)

クラスの交差(Class crossover)

T細胞受容体(TCR)は、クラス1、あるいはクラス2の主要組織適合複合体(MHC) タンパク質と複合体を形成する外来ペプチドを「識別」する。ナチュラルキラー( NK)細胞はTCRを発現しないがクラス1MHC分子に結合する活性化および阻害性受容 体を持っている。Mandelboimたち(p.2097)は、NK細胞活性化受容体(NKAR1)を発現 するT細胞クローンについて研究した。これらT細胞はNK細胞クローニング中に 単離され、応答がMHCクラス2に制限されていた。 これらT細胞の,スーパー抗原に対する増殖は,NKAR1受容体がクラス1に結合出来る ような状況において、300%から 900%に増加した。クラス1タンパク質によるこの同時刺激は、 微量の抗原しか 存在しない時、T細胞が免疫応答を引き起こすのを助ける。(Ej,Kj)

下部マントルでのMgSiO3粒界成長(Grain Growth of MgSiO3 under Lower Mantle)

下部マントルの動きは、レオロジーが支配すると考えられているマントルの物理 的性質を知る基礎となるもので、かねてより情報の乏しい所であった。東京大学 の山崎たちは(p.2052)MgSiO3ペロウスカイトとペリクレーズの集合体の粒界成長 が25ギガパスカルの高圧、および1573から2173度Kの条件下で求められた。この 実験によって求められた粒界成長によれば、平均粒径Gのn乗は、時間とエネルギー に比例しており、各々、G^10.6 = 1×10^-57.4×t×exp(-320.8/RT), 及び、G^10.8 = 1×10^-62.3×t×exp(-247.0/RT)で表せる。これらの知見は、下部 マントルのレオロジーに関する情報決定にいずれ寄与するであろう。(Ej)

木星の衛星、Europaにも大洋?(Does Europa's ice hide an ocean?)

先週、惑星探索機Galileoが送ってきた木星周辺のイメージは極めて鮮明であり、 もしかしたら生命が存在するかも知れない、と、Kerrは解説している(p.2015)。 このイメージには、平行する氷の割れ目が見られ、これが地球の海嶺のように、 氷の割れ目から液体の水を噴出している構造に似ている、と言うのだ。木星との 相互作用による強い潮汐力を源にした熱源は可能だから、このような割れ目には 閉じ込められた小量の液体の水が存在してもおかしくない。液体の水があれば、 生物の存在だって考えられる、と。(Ej)
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