AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science December 6, 1996, Vol.274


遺伝子発現と脳における記憶(Gene expression and memory in the brain)

脳において異なる部位は、異なる型の記憶を司る---つまり、場所に関する記憶の ような明示的記憶には海馬とそれに関連する内側頭葉構造が要求され、他方、条 件づけされた恐怖記憶のような潜在的記憶にはへん桃体を必要とする。特定の遺 伝子がどのように記憶形成に影響しているかを研究するためには、脳内における 遺伝子発現のタイミングと部位を制御出来ることが必要である。Mayfordたち( p.1678)は、前脳に特異的なプロモータとtetracyclinトランス活性化因子システ ムを併用して、カルシウム-カルモジュリン依存性リン酸化酵素II(CaMKII)の発現 型の発現を制御した。 マウスでこのようなCaMKIIの優性な変異体型を発現させると、海馬の長期増 強(5-10Hzの信号に反応して)や海馬依存性(空間的)記憶課題を弱める働きを する。これら の弱める働きは導入遺伝子の抑制によって逆転させることができる。外側へん桃 体(?)と線条体内とだけにおける導入遺伝子の発現は、恐怖の条件づけを弱め るが、より後のステージで逆転させることも可能である。(Ej,Kj)

チベットの下の隆起と融解(Uplift and melting under Tibet)

インドとアジアの現在も続いている衝突は、ヒマラヤと チベット高原の劇的な隆起を引き起こした。この領 域の動的な力学挙動を理解するためには、深い所の 衝突帯の俯瞰図が必要である。この号の5つの一連の レポート(p. 1684から始まる)の中で、ある国際的な 研究者グループは、チベット高原の下に横たわる地殻の 地球物理学的な調査結果を報告している。種々の地震や 電気的な方法による観測から、おそらくは、チベット の大部分の地下では、中間層の地殻は部分的に融解した 領域を含んでいると考えられる。この融解の発生 は、衝突の結果による加熱として説明できるであろう。 また、これは、チベット高原と隣接する領域のいく つかの興味深いダイナミクスを説明することに役立つであろう。(Wt)

屈曲を取り巻いて(Around the bend)

岩床基盤や地殻構成あるいは気候を含むいくつかの 要因の相互作用により、川の水路は支配される。Stern と Abdelsalam(p. 1696)は、レーダー像と地質地図の 作成により、北スーダンにあるナイル川の Great Bend の起源について調べた。西方への屈曲は、北方 へ流れる支流を反映しており、前カンブリア時代に作られ た岩石組織に左右されている。一方、東西の支流は、新生代 の断層に伴っている。この領域の最近の隆起もまた 、ナイル川の西方への偏りを招いた可能性がある。こ れは、大きな屈曲を形成している。(Wt,Og)

珪酸塩上に成長したナノチューブブラシ(Nanotube brushes grown on silicates)

カーボンナノチューブは、グラファイトのシートの 同心の外皮から成っており、その直径はナノメーターの 範囲にある。長さや直径、あるいはその配列性のいずれ においてもコントロールされたナノチューブを作成 することは、潜在的な応用に対しても、また、詳細な それらの特性の特徴把握に対しても重要なことである 。Li たち(p.1701)は、チューブを成長させるために、 メゾスコピック範囲の多孔質であるシリカの中に 鉄の粒子を埋めこみ、それを触媒として用いて、正確 に定められた長さと直径を持つ整列したナノチューブ を作成する方法を報告している。これによれば、30nm の直径と50μmの長さの正確に配列されたチューブを 成長させることができ、また、整列したチューブを 保持したまま基板から除去することができる。(Wt)

タンパク質泥棒(Protein piracy)

ヘルペスウイルスのようなある種のDNAウイルスは宿主細胞の遺伝子を獲得するこ とが知られている。カポジ肉腫付随性ヘルペスウイルス(KSHV)は、ヒト免疫 不全症ウイルス1(HIV-1)に同時感染 する場合も、そうでない場合も、カポジ肉腫の原因となる可能性が高い。 Mooreたち(p.1739)は、2つのヒトのマクロファージ炎症 性タンパク質(MIP)ケモカイン、インターロイキン-6、及び、インターフェ ロン制御因子、に類似した4つのウイルスタンパク質をコードするKSHV遺伝子の 配列を決定した。ヒト型と同様にウイルスでコードされるMIP-1は、CCR5補助受 容体に依存するHIV-1系統の複製を抑制する。このようなウイルス性遺伝子産物 は宿主細胞の防御機能を妨害するらしい。(Ej,Kj)

経口自己抗原と糖尿病(Oral autoantigens and diabetes)

関節リュウマチのような自己免疫疾患に対抗する最近の手法の1つに、自己抗原 の経口投与によって、CD4+T細胞中に耐性を誘発する方法がある。Blanasたち(p. 1707)は抗原をマウスに経口投与し(この場合、抗原はインシュリン依存性糖尿病の実験 的モデルに於ける「自己」抗原である卵白アルブミンであるが)、自己免疫性糖 尿病の開始に寄与し得る段階である膵臓の島細胞を破壊する細胞障害性CD8+T細 胞反応を生じ得ることを見つけた。これらの結果から、経口による免疫寛容化を 他のヒト自己免疫疾患へと広げる場合には、最初にこのような潜在的細胞障害性 反応を考慮しなければならないことを示唆している。(Ej,Kj)

栄養富化した草原(Overfed grasslands)

肥料や洗剤のような限定的栄養分が環境に加わると、生体系を脅かす可能性があ る;例えば、湖のリン富栄養化がある。ここ10年間は大気中から大量の窒素が 降積したが、WedinとTilman(p.1720)によるミネソタでの長期実験によれば、これ は草原にとってマイナスの効果があると考えられる。生物種の減少は、野生の緩 成長草の減少(C4種からC3種への変化)、窒素の増加分に対する炭素の正味蓄積 量の減少、土壌中の窒素保持閾値の減少と関係がある。(Ej)
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