AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science November 1, 1996, Vol.274


カリフォルニアの氷河時代 (Ice age in California)

最後の氷河化の間、周期的に北米の大氷原は不安定になり、多数の氷山を流出した。 これらの Heinrich事象は、グリーンランドの氷のコアに記録されている大気と海洋の表面温度 の急速な変化 (1000年)に関係している。Benson et al. ( p. 746)と Phillips et al.(p. 749) は、類似の 急速な気候の振動が西部のアメリカ合衆国で起こっており、Heinrich事象とほぼ同時 代であったこ とを示している。彼らは、東部のカリフォルニアの Owens Lake からのコアから推察 される、気候 変化と局所的な氷河の状態の詳細な記録を、シエラ ネバダの山の氷河の広がりの変 化とを関係付け ている。(Wt)

緩和への時間 (Times to relax)

過冷却された液体あるいは高分子が外部から摂動を与えられた時、初期の非摂動状態 への復帰に要 する緩和時間は、広い分布を持っている。この効果は、さまざまに混成した応答現象 を通して生ず る可能性がある。そして、この応答現象は、異なる時間で緩和する局所的なドメイン に付随して、 あるいは、総体としては同質な緩和現象の中に内在する固有の複雑さによるものであ る。Schiener et al.(p. 752)は、過冷却液体中の緩和現象における混成応答に対する直接的な証拠 を与えている 。彼らは、選択的に誘電損失スペクトルを修飾することにより、スペクトルの孔を生 じさせ、誘電 応答の特徴が変化しうることを示している。(Wt)

STMにより誘起された相変化 (STM-induced phase change)

走査型トンネル顕微鏡(STM)によるTaSe2の 2H相の表面の研究は、驚くべき結果を 明らかにして いる。このTaSe2は、弱い電荷密度波 (CDWs)を示す材料である。Zhang et al.(p. 7 57)は、絶 対温度4.8 °では、低電圧のパルスが、表面にナノメーターサイズの1T 相の結晶を 生ずるような 相転移を引き起こすことを見出した。この 1T 相は、強い CDWs を示すものである。 この相転移は 、100 ナノメーター以上に広がることができ、この距離はチップによる局所的な距離 よりもはるか に大きい。著者達は、Se原子の最上面の層の相関を有する運動が、 Ta 配位をプリズ ム状の三方晶 系から八面体に移行させることを示唆している。(Wt)

NO遮断剤 (NO blocker)

酸化窒素は多くの生物学的プロセスに携わる重要な分子であるが、NOは、他の神経伝 達物質と異なり小胞に蓄えることが出来ないため、その活性は、これを作る酵素であ る酸化窒素合成酵素(NOS)によって制御されている。JaffreyとSnyder(p.774)は、ニ ューロン中のNOSであるnNOSに結合し、この活性を阻害する10ダルトンのタンパク質 を同定した。この活性阻害は、活性NOS二量体を不安定化させることに起因している らしい。このタンパク質はPINと呼ばれているが、これは自然界で最も保存性の高い タンパク質の1つで、そのNOSに対する緩衝効果によって多くのプロセスを制御して いると考えられる。(Ej,Kj)

NF-κBとアポトーシス (NF-κB and apoptosis)

腫瘍壊死因子α(TNF-α)は、炎症部位に存在し、アポトーシスを通じて細胞死を誘発 させる主要なサイトカインである。BegとBaltimore(p.782)、Wangたち(p.784)、およ びVan Antwerpたち(p.787)の示すところによれば、TNF-αは核因子κB(NF-κB)の産 生も刺激する結果、ある種の細胞はアポトーシスのシグナルに対してより強い抵抗力 を持っている(Barinaga,p.724による解説参照)。NF-κB欠乏にした細胞はこの抵抗 力を失い、細胞死を起こす。NF-κBを特異的に不活性化することによって、腫瘍や慢 性炎症の治療戦略の立案に役立てることが出来るであろう。(Ej,Kj)

装置の乗っ取り (Stealing equipment)

細菌性病原体がどのようにして宿主となる細胞に侵入するかはよく解っていない。 Iretonたち(p.780)は、ヒトの食物経感染を引き起こす細菌であるリステリア菌 (Listeria monocytogenes)による細胞侵入には、宿主の酵素ホスホイノシチド3リン 酸化酵素(PI 3-リン酸化酵素)の活性化が必要であることを見つけた。PI 3-リン酸 化酵素、あるいは、その生成物がどのようにして細菌の侵入に寄与しているかは明か ではないが、この酵素が細胞骨格、食作用、そしてエンドサイトーシスの制御に関係 していると思われる。侵入細菌は、宿主細胞自身が通常は細胞内への取り込みのエン ドサイトーシスに使っている機構に指令しているようだ。(Ej,Kj)

日や季節に調和させて (Coordinating day and season)

シロイヌナズナ(Arabidopsis)の早期開花(elf)変異体は、日の長さの変化に開花を協 調出来ない。Hicksたち(p.790)はelf3突然変異体の日周期もまた乱れていることを見 つけた。葉運動と遺伝子転写の解析から、elf3突然変異体の日周期は定常な闇のなか では正常であるが、定常な明るさの中では狂うことを示した。従って、elf3突然変異 は、昼の長さと日周期を検知する両方の機構に共通する「点」を示している。 (Ej,Kj)

過敏性B細胞 (Overactive B cells)

B細胞による抗体産生は、B細胞抗原受容体と抗原との相互作用によって開始するが 、この受容体は、その後、タンパク質=チロシン=リン酸化の連鎖反応過程を停止させ る。リン酸化を経る表面糖タンパク質の1つであるCD22は、抗原応答性を制御するの に決定的な役割をしている。O'Keefeたち(p.798)は、CD22を欠くマウスの脾臓から取 り出したB細胞は、正常な抗原濃度のものより低いものに応答することを示した。彼 らによると、CD22はB細胞の負性制御因子で、これによって外来の抗原に応答し、か つ自己免疫応答を回避していることを示唆している。(Ej,Kj)

カラーチャート (Color chart)

赤緑色盲には色々な段階がある---色識別能力は殆ど正常な色弱者から極めて限定さ れた者まで。視色素をコードする個々の遺伝子の分子解析から、Neitzたち(p.801)は 、遺伝学の特定の側面が、行動結果を予測するうえで役に立つことを見つけた。鍵と なるのは、特定個人の様々な色素に対するスペクトルの感受性間にどれだけの開きが あるかである。特定の使用可能な突然変異の混合の結果であるこの開きが増えるに従 って、色の識別能力が正常に近付く。(Ej,Kj)

物理学院生を選ぶな (How not to pick a physicist?)

物理専攻の院生を選ぶには、通常、ペーパーテスト(Graduate Record Examination) が施されるが、このテスト結果が信用できないと、有名大学の教授たちが述べている (Glantz, p.710)。事の起こりは、大学院テストの平均点がアメリカ在住者が618に対 して、中国本土からの応募学生の平均点が851と大きく開いたこと。調べてみると、 これには試験勉強への取り組みなどが影響しているらしいことが分かってきた。他方 、別の観点から見ても、GREテストは、その後の研究との相関が殆どないと言う人も 多い。Harvard大学の例では、GREの点と大学院での評価の相関は0.48であると言う。 しかし代案が有るわけではなく、議論は続いている。(Ej)_
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