AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science August 9, 1996


薬剤、受容体そして高血圧(Drugs, receptors, and hypertension)

α2-アドレナリン受容体(α2AR)の刺激は血圧の病気を引き起こし、これらの受容体 に作用する薬剤は高血圧を抑えるために広く使われている。しかし、3つのα2ARの サブタイプ(α2a, α2b, α2c)の役割と、α2ARアゴニストの生理学的効果におい て他の受容体の果たすであろう役割については良く解ってない。Linkたち(p.803)お よびMacMillanたち(p.801)は、α2ARサブタイプの1つを欠失するように作られた遺 伝子操作マウスの研究によって明らかにされたα2ARサブタイプ特有の役割に付いて 述べている。それによると、α2aサブタイプは主にα2ARアゴニストの血圧降下作用 に効いているが、α2bサブタイプはこれと反対の好ましくない過敏な効果をもたらす 。α2a受容体のみに作用するように設計された薬剤は、高血圧治療に、より効果的で あろう。(Ej,Kj)

チューブ状の微細孔をフィルムなどから作る(Nanopores in tubes and through films)

準多孔質(mesoporous)材料は、平行なナノスケールの円筒状のポーラスネットワーク から出来ている。今週は2つの報告が、どうしてこの様な材料を使ってミクロスケー ルの空洞構造が形成できるかについて述べている。LinとMou(p.765)は、mesoporous な珪酸アルミMCM-41を、円筒状空洞が小管と同軸となるような1ミクロン径の小管を 作った。Schachtたち(p.768)は、オイルと水の界面においてmesoporousなフィルムを 作り、ミクロンサイズの繊維や球だけでなくシートさえも作った。孔は一般的にフィ ルムに垂直な方向に並んでいる。(Ej,Kj)

アメリカの起源(American origins)

北アメリカの東縁は先カンブリア紀に隆起によってイアペトス(Iapetus)海が出来 た時に形成された。この海の囲いの形成に伴ってAppalachian-Ouachita山脈が出来上 り、引き続く囲いの開裂が大西洋を形成した。この歴史的な経過の結果、北アメリカ のオリジナルな断片は他の大陸にくっついている(最初、ゴンドワナ大陸に、そして これが分裂して南アメリカ大陸に残された)。Thomas と Astini(p.752)は最新 の地質データを合成し、元々はOuchitas地域から出来たこのような断片の一つが、現 在では南アメリカ西部にあることを示した。この関連を追跡することによって、 Iapetus海の形成と過去の大陸地形の時間的関係をより良く理解できる。(Ej,Og)

太陽系の起源(Solar system origins)

初期太陽系の出来事を再構成するための鍵は、隕石中の短寿命放射性同位元素が生成 した同位元素(daughter isotope)の認識にかかっている。このような重要な同位元素 の一つに26Al がある。これは半減期73万年で26Mgに変わる。Rusellたち(p.757)は、 もともと存在していたであろう26Alをコンドルールやカルシウム=アルミニウムに富 むインクルージョン(CAI)の中に探した結果、初期の太陽系星雲で出来、その後、原 始隕石とでも言える通常のコンドライトに取り込まれたCAI粒子とAlに富むコンドル ールをそれぞれ2つずつ見つけた。このCAIは26Mg濃度が最も高いが、あるコンドル ールではその濃度がより低く、また、あるコンドルールでは原始26Alの存在の証拠が 全くなかった。太陽系星雲では5百万年以上コンドルールの生成が続いたようである 。(Ej,Nk)

配達システム(Delivery system)

ほとんどの神経細胞タンパク質は細胞本体内で合成される。シナプスで必要なタンパ ク質は軸索(多くの場合、低速軸索輸送として知られていている方法で)に沿って輸 送されなければならない。Teradaたち(p.784)は生きた神経細胞の軸索に沿うニュー ロフィラメントタンパク質の輸送を調べた。彼らの見つけたところによれば、ニュー ロフィラメント サブユニットの輸送は軸索微小管に沿って行われ、その輸送のため に予め存在するニューロフィラメントの道を必要としないようである。(Ej,Kj)

信号を送る(Sending a message)

沢山の神経伝達物質が多数の受容体を活性化し、これがまた次の多数の第2のメッセ ンジャーと結合するのであるが、結果的にどのようにしてシグナルが多数の細胞間の 煩雑な事務処理に打ち勝つのであろうか? Brezinaたち(p.806)はアメフラシの口部 の筋肉の動きの組合せ制御モデルについて述べている。このシステムでは、行動環境 についての神経筋に関する出来事を知覚するには、比較的少数の同定された神経細胞 だけでこと足りる。著者たちは、いくつかの神経伝達物質の放出によって引き起こさ れる細胞の変化を、予想し、実験的に確認することが出来る。これによって、例えば 、なぜ口に合わない食物が来たときはゆっくり食べ、むさぼり食べるときは筋肉の弛 緩速度を増加させるのかを説明できる。(Ej,Kj)

膜の回りを動き回る(Free to move about the membrane)

ゴルジ複合体は偏平な嚢の重層構造から出来ている。膜の激しい分泌経路の往来にも 関わらず、どのようにしてゴルジ体の形態や、各嚢に特異な膜成分が出来上り、かつ 、保たれているかについて多数の理論が提出されてきた。Coleたち(p.797)は、生き た細胞のゴルジ膜タンパク質に蛍光で標識を付け、側方移動度について調べた。驚い たことに、調べた全てのタンパク質は非常に速い動きを示した。これによって、膜成 分の拡散が側方に限られていることが特定のゴルジ膜タンパク質の分布が特定のゴル ジ嚢に限定していることを説明しているようには思えない。(Ej,Kj)

天然痘の戦略(Pox strategies)

天然痘のウイルスのうちで2つだけがヒトに感染することが知られている---痘瘡 を引き起こす痘瘡ウイルス(variola virus)と、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)であり 、これは通常、無症候の皮膚丘疹を作るがAIDSのヒトには日和見感染をする。 Senkevichたち(p.813)はMCVゲノムの配列を決定し、ホスト感染、ヌクレオチド生合 成、そ して細胞増殖に関与する遺伝子の間の重要な違いを見つけた。この研究は、これらの ウイルスがホストの免疫システムを侵略するための種々の異なる戦略を理解する遺伝 学的基礎を与えてくれるだけてなく、薬剤治療の鍵を与えてくれる。(Ej,Kj)

なぜストレスは脳に悪いか(Why stress is bad for your brain)

ストレスは沢山の病理学的な効果をもたらす。このような効果を仲介する分子の一つ にヒト糖性皮質性ステロイド(glucocorticoid = GC)がある。これはエピネフリン(ア ドレナリン)と共に急激な身体的ストレスを切り抜けるために不可欠の物質である。 しかし、長期間では逆効果になる(例えば、応募結果を待ち続けるような場合)と、 Sapolsky(p.749)は最近の研究をまとめている。鼠類に長い期間GCを与えると、学習 を司る 海馬に悪影響を及ぼす。例えば、数日間では、海馬の神経細胞の生存を危うくし、数 週間では神経細胞を退化させ、数カ月では永久に破壊してしまう。類似の現象が、類人 猿でも報告されていたが、最近、初めてヒトでも観測された。(Ej)
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