AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science July 19, 1996


惑星のごった煮 (Planetary potpourri)

この号中の4件の論文では、外惑星とそれらの衛星の 研究に焦点が当てられている。Cho と Polvani ( p. 335 )は、浅水モデルを用いた、数値シミュ レーションについて述べている。この計算では、巨大な惑 星の謎めいたジェットと渦、そして強い帯状の大気 の流れを捕えた。これらの結果は、 Gierasch ( p. 320 )による展望記事の中でさらに議論されている。 Kivelson たち(p. 337)は、ガリレオ探査衛星から の結果について記している。木星の月であるイオに は強い磁場があって、これは、多分、地球や水星と同 様のダイナモ活動によって引き起こされたのであろう。 これらの結果は、大きな、おそらくは、鉄の豊富 なイオのコア( Science, 3 May 1996, p.709)が存在 するという、重力データを通してのより以前の観測を 補うものである。最後に Noll たち(p. 341)は、 ハップル宇宙望遠鏡を用いて、木星の月 である ガニメデ の表面の氷の中に捕らえられているオゾン を検出したことについて報告している。(Wt)

超伝導ギャップ( Superconducting gap)

銅の酸化物中の高温超伝導のメカニズムはまだ判っ てもいないし、これらの材料の常伝導状態の特性も判明 してはいない。Loeser たち(p. 325)は、ビスマス- ストロンチウム-カルシウムのカプレイト(cuprate) 化合物は、常伝導状態で、エネルギーギャップが存在す ることを示す電子光放出のデータを与えている。Ong が、付随する展望記事(p.321)の中で描いているよう に、これらの結果は、超伝導性の開始に先立って、単 極のスピンが対を作るという描像と一致するかもしれない。(Wt)

ストレスを感じる(Feeling stressed out)

筋肉とか、色々な感覚器が、自分自身が引き伸ばされたり変形されたり しているのをどのように知覚するか、そのメカニズムはよく理解されていない。 Liuたち(p.361)は、腺虫 (Caenorhabditis elegans)に見いだされた推定上の ナトリウムチャネルが、細胞外基質と の相互作用を通じて、どのように機械的感覚を得ているか、その鍵を与えるかも知れ ないことを示した。チャネルが細胞外基質に固着していることによって、イオンが例 えば伸びた筋肉に流れ、その結果筋肉が刺激されて収縮する、と言うプロセスの物理 的な基礎を与えている可能性がある。(Ej,Kj)

もはや縁には立ってない(No longer on the fringe)

繊維芽細胞成長因子と腫瘍成長因子ファミリーである分泌タンパク質の2つのファミ リーは、発生中のアフリカツメガエルの中胚葉形成の中心的役割を演じているものと して知られている。Wuたち(p.355)は、異なるタンパク質ファミリーに属しながら、 発生初期の中胚葉を誘発する2つの分子を更に同定した。これは、lunatic(気違い )Fringeおよびradical(過激)Fringeと名付けられており、この遺伝子は、ショウ ジョウバエの羽の形成に重要なFringeファミリーに類似している。(Ej,Kj)

複雑な光学系(Complex optics)

極めて複雑な光学部品を通常の方法で作ることは大変難しいことが多い。Xiaたち (p. 347)は、特定形状の光学的表面の鋳型をエラストマーのマスターで作る 方法に付いて述べている。まず、強固なマスターの上に作られたパターンが エラストマー表面に複製される。次に、これが圧縮されたり、曲げられたり、 伸ばされたりして変形される。この変形パターンが紫外線や熱硬化性の有機 ポリマーを用いて複製される。この手法によって、他の方法では不可能な 複雑な形状のパターンを作ることが出来る。(Ej)

植物1:もっと情報伝達(Signaling more)

小さなペプチドは動物の種々生理学的プロセスに寄与することが知られているが、植 物についてはあまり良く解ってはいない。Van de Sande たち(p.370)は、結節形成に 反応するマメ科植物中の遺伝子でコードされるオリゴペプチドを同定した。タバコで の関連遺伝子の研究によって、このオリゴペプチドは植物ホルモンへの応答を変化 させることが示唆している。(Ej,Kj)

植物2:欠乏に耐えて成長(Growing with less)

うまく機能している光合成には、光を使って電子のエネルギーを励起するために、2 つの色素タンパク質複合体(光化学系I と II )が連続して機能することが必要であ ると長い間思われていた。Leeたち(p.364)は、光化学系I を欠く藻類、コナミドリム シの突然変異体が、好気性大気中で光独立栄養的に成長することが出来ることを示した 。 これらの藻類では、もしかしたらより高等な植物でも、フォトンエネルギーを取り込 む複数の経路があるのかも知れない。また、関連記事(p.310)参照。(Ej)

液体-気体の動力学( Liquid-gas dyanamics )

多くの化学のプロセスにとって主要な気体-液体 界面の直接的研究を、実験的に進めることは強く望まれて いる。気体分子が、液体表面に当たる時に、いくつか のプロセスが発生しうる。すなわち、 「分子の」散乱、捕獲、 反応あるいは「脱離」などである。Klassen と Nathanson (p. 333)は、単一エネルギービームの蟻酸 の単量体および二量体と、硫酸表面との 相互作用について研究した;彼らは、熱 的な脱離に続く非弾性散乱と捕獲とは、散乱分子の 飛行時間(TOF=time-of-flight)法によるスペクトル中では 見分けられることを示している。水素添加と水素結合の破壊に ついて言えば、補足された分子はほとんどいつも、熱的脱離に先 立って十分な溶媒和効果を受ける。(Wt)

ペストを逃れる(Rid-a-pest)

腺ペストは、前胃(前腸)が多量の桿菌ペスト菌でブロックされた、空腹の蚤に咬 まれて伝染することで知られている(注)。この桿菌ペスト菌がなぜブロックする のかの分子的、遺伝子的メカニズムはよく解ってなかった。Hinnenbusch たち (p.367)は桿菌ペスト菌の突然変異体を使って、蚤の前胃で桿菌ブロックが生じる ためにはヘミン貯蔵(hms)座位遺伝子に依存することがわかった。この遺伝子が ノックアウトされた変異体では、明らかに粘着性が減少しており、効果的に蚤の 中胃(中腸)に流し込まれ、伝染しない。(Ej,Kj) --- (注)蚤の前胃に溜まったペスト菌は、蚤が動物を噛むときにしばしば吐き戻 されこれによって感染すると考えられている。

巨大原子は長い影を作る(Giant atoms cast long shadow)

巨大原子は長い影を作る(Giant atoms cast long shadow) 世界最大の原子が作られた。Amato(p.307)は、量子力学と古典力学をつなぐ役目を持 った原子として、様々な応用を含め解説している。Smithたちによって作られた巨大 原子は、最大、通常の原子の10,000倍の直径を持ち、寿命は数ミリ秒である。電子が 核から遠距離にあるため、電子は弱く拘束されているに過ぎない。ここまで遠方にな ると、外核電子は、確率で定義される電子雲でなく、軌道を公転する惑星のように 局在化した電子が公転していると考えられている。そのため、外核電子は、周辺の 環境の微妙な影響を受け易い。外核電子の振る舞いを観察することによって、弱い 電場や化学反応の検出に利用できることが期待されている。さらに、量子力学と古 典力学の間にある領域のサイズの研究に利用できるかも知れない。原子の光吸収の 研究をした19世紀のスウェーデンの科学者にちなんで Rydberg 原子と呼ばれて いるこの巨大原子は、原子の外核電子軌道をレーザーで遠方に押しやって作るこ とが出来る。(Ej)
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