AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science March 1, 1996


結合しているlacリプレッサーにおけるコンフォメーション変位 (Conformational shifts in lac repressor binding)

遺伝子調節の重要なモデルに大腸菌(Escherichia coli)のラクトースオペロンがある。 ラク トーズオペロンリプレッサーは、ラクトースを欠く時、オペレータDNAに結合し、いくつ かの構造lac遺伝子の転写を阻止する。Lewisたち(p.1247;表紙、およびMatth ewsによる「展望」参照,p.1247)は、このタンパク質、21塩基対のオペレータと結合した タンパク質、そして 誘導物質分子に結合しているタンパク質、の3つの結晶構造を示した。これらの構造 の比較から、遺伝子が制御される段階に伴って生じるコンフォメーションの変化に対 する洞察が得られる。

崩壊によるダイヤモンド (Diamonds by decay)

ナノメーターサイズのダイヤモンドが、ロシアからのウラニウムの豊富な石炭様の堆積 物から見つかった 。 Daulton and Ozima (p. 1260)は、高分解能の透過型電子顕微鏡を用い、この20億 年の古さのダイヤ モンドについて明らかにした。これらは、恐らくはウランの放射性崩壊により、炭素物 質が照射された結果とし て形成されたものであろう。放射能照射は、この非常に古い非常に小さなダイヤモンド 形成の最も確から しいメカニズムに見える。しかし、これが、黒ダイアモンドの形成に対するただひとつ のメカニズムではない。 この黒ダイアモンドは、代表的には比較的大きなダイヤモンドを大量に含んでいる。(Wt )

入り江には繋がれず ( Not kept at bay)

Chesapeake Bayの南側の終端の下に埋没しているのは、衝突による構造である。これは 、恐らくは、大西 洋からテキサス程度まで西側に分布している、テクタイトと呼ばれるガラス質で空気の 力学的な作用で形 作られた石片が振りまかれている領域を産み出したのであろう。 Koeberl et al. (p. 1 263)は、重力異常 マップと、この複雑な噴火口からドリルで取り出した中心核のサンプルを用いて、その 大きさ、年令、噴 火口の成分と、北アメリカにおけるある種のテクタイトの面積的広がりや年令・成分と の相関を取ってみ た。その結果、北アメリカのテクタイトは、 Chesapeake Bayにおいておよそ3500万 年前に生じた、衝 突による構造に由来するものであることを示していた。(Wt)

環の中の珪酸塩 ( Silicates in the round)

ナノメーターサイズの空孔を持つ珪酸塩の分子篩は、骨格として働く界面活性剤の鋳型 分子と合体させる ことにより合成することができる。この骨格は、しかしながら、通常は構造を維持する ために残しておか ねばならない。 Tanev and Pinnavaia (p. 1267)は、中間的な空孔を持つ材料を創製す る、一段階の合成 方法を報告している。 彼らは多層の小胞の互層領域内の中性シリコンアルコキシド前駆 体を交差結合させた。 このプロセスは、小胞の形を維持し、かつ、鋳型除去が可能な、多孔質で、多層の 壁面を持つ珪酸塩を作り出す。その材料は、高い熱的安定性を持ち、柱状粘土と同程度 の吸収特性を有し ている。(Wt)

起源とタイミング (Origins and timings)

哺乳類におけるDNA複製の起点に関する解析は、複製の開始が、ジヒドロ葉酸レダク ターゼ(還元酵素)(DHFR)遺伝子座のなかのように特定の領域に局在しているのか、そ れとも、損傷を受 けた核や裸のDNAが検定される時のように、多くの部位で起きるのか、観察では紛ら わしかった。WuとGilbert(p.1270)は、たぶんどちらの場合も有り得ることを見つけた 。セルサイクルのG1フェーズの初期段階にCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞から核を抽 出 した時、DHFR遺伝子座内で、誘導された複製開始は非局在であった。しかし、核が G1フェーズにまで進展すると、誘導された複製開始は、DHFR遺伝子座の特定部位からに 限られた。

アネルギーとキナーゼ (Anergy and kinases)

付属細胞由来の共起刺激シグナル(costimulatory signal)が存在しない状態でT 細胞抗原受容体が刺激を受けたとき、細胞は活性化されず、抗原に反応もしない。そ のようなアネルギー(遅延型過敏性)細胞は、成長因子であるインターロイキン-2(I L-2)を合成することが出来ない。Liたち(p.1272)は、ERKとJNK酵素が活性化し、しか もその他の経路が完全に機能していても、これら酵素の経路がアネルギーT細胞にお いてブロックされていることを示した。また、Fieldsたち(p.1276)は、ERK/JNK経路 に必要なRasの活性化が、アネルギーT細胞においてブロックされていることを示し た(Williamsによるニュース解説参照;p.1234)。

H2-Mの役割 (The role of H2-M)

非古典的な主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)分子、例えばヒトではDM,マウスではH2 -M、 は、抗原の提示に重要な役割を演ずることが試験管内研究で推察されているが 、完全に理解するためには生体内の解析が必要である。Fung-Leungたち(p.1278)は、 H2-Mを欠くマウスのフェノタイプ(表現型)について記述している。予想されるように 、ほとん どの発現されたMHCクラスII分子は、CLIPとして知られているペプチドに結合してい る(H2-MはCLIPを取り去り、一連の抗原ペプチドを結合させると思われている)。興 味深いことに、CD4+細胞は、突然変異マウスの胸腺の中でプラスに選択され、末梢T 細胞は野生のマウスに比べて数は少ないが、野生の同系の抗原-提示細胞に強く反応 する。

培養された突然変異体 (Cultured mutants)

多量の点変異体を免疫グロブリンV遺伝子に制御導入する、体細胞のハイパーミュ ーテイション(Hypermutation)は、より高いアフィニティーの抗体を生産するための 、免疫系の特別な戦略である。この過程を理解することは、in vitro(試験管内) での同様な系を再現することが出来ないため、妨げられてきた。しかし本号で、Kaellbe rgた ち(p.1285)は、抗原受容体との結合にともない、活性化Tヘルパー2細胞からB細 胞へのシグナル伝達を含むin vitroシステムについて述べている。

シプナスの強度 (Synapse strength)

脳内の長期間の活性刺激と長期間の抑圧性刺激は、神経細胞間の接合を強めたり、弱 めたりするが、これは学習や記憶に重要な働きをしていると思われている。これらの 生理的なベースは論争項目であった。Olietたち(p.1294)は、活性、あるいは、抑圧 シプナスにおける量子の大きさ(量子=quantum=神経伝達物質の単位パケットへの反 応)は、神経細胞伝達物質受容体クラスのレベルに応じて増加したり、減少した りすることを示した。機械論的に言えば、2つのプロセスは機能的に逆相のように見 える。
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