AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science January 26, 1996


引き裂かれて ( Torn Apart)

粘着性のフィルムによって結合された2つの表面が引き離された時、分子レベルでは何 が起きているの だろうか。その答えは、粘着性のもののタイプや状態、温度、表面の引き離される速さ 、そして、表面 と粘着性のものとの間の結合の強さに依存している。もつれた粘着性の分子は破裂に耐 え、エネルギー が増強されることとなる。そして、そのエネルギーは高分子の状態に依存して様々に散 逸される。 Baljon and Robbins(p.482) は、この過程における個々の高分子の変化を追うために、 分子動力学計算 を実行した。そして、破裂の間の3種のエネルギー散逸のメカニズムを特定した。この メカニズムは、 商業的な粘着剤において観察される、巨視的な現象と類似性が見られる。(Wt)

ランダムな磁性 (Random magnetism)

鎖構造を含む材料は、1次元的なシステムを近似することが有りうる。電子間の磁気的 結合のような、 この材料の特性は、3次元システムにおいてみられるものから全く異なっていることが 有りえる。 Nguyen et al.(p.489)は、化合物、Sr3CuPt0.5Ir0.5O6について記述している。この材料 は、強磁性体 Sr3CuPtO6と反強磁性体Sr3CuIrO6の固体の溶体である。この中間的化合物は、ランダム な量子的スピン チェインの常磁性体を形成する。チェインにそった交換相互作用を通してのスピンの結 合は、ランダム に強磁性的あるいは反強磁性的な特性を示す可能性がある。(Wt)

酵素は、生物界分化の時を刻む (Enzyme clocks for kingdom divergence )

ほとんどのタンパク質突然変異は長い期間でみればランダムな事象として起きる。従 って、原理的には、異なる生物の同じタンパク質の配列を解析することによって、共 通の祖先から、いつ分化が始まったのかが推測できる。実際、異なるタンパク質は異 なる割合で突然変異をするし、機能的に類似したタンパク質が異なる先祖を持つかも 知れない。Doolittleたち(p.470;Morellによるニュース解説参照p.448)は、主要な生 物学的グループすべての生体から得られた57の異なる酵素の分化の時間を解析した 。この大きなデータセットの解析から、真核生物と真正細菌は約20億年前に共通の 祖先を持ち、植物と動物の分化よりも2倍も昔であることを示唆している。(Ej)

大気中の酸素と燐との連鎖 (Linking atmospheric oxygen and phosphorus)

地球の大気中の酸素レベルは、明白に数十億年の間、生命が持続できるレベルに維持さ れて来た。その システムを本質的に緩衝する制御機構はまだ明らかではない。Van Cappellen and Ingal l(p.493; Kump and Mackenzie,p.459による展望も参照のこと)は、鍵は燐のサイクルであることを示唆 している。燐は 、大洋の生成と呼吸を駆動する鍵となる栄養素であり、大気のわずかな成分であり、そ してそれの埋蔵 (堆積貯蔵)は、大洋の酸化状態に極端に敏感である。過去の燐の埋蔵の解析は、水が 酸素中に少ない時は、より僅 かな燐が埋蔵されるだけであることを示している。(Wt)

HIVの動力学 (HIV dymanics)

HIVに感染して最初の数週間は血ショウ中のウイルス濃度は上昇するが、その後減少 する。Phillips(p.497)は、初期HIV感染の進行をモデル化し、この減少がHIVに特異 な免疫応答によるものではなく、HIV 複製における個体数変化によるものであると提 案した。未感染細胞の供給は急速に減少するから、ウイスル産生が減少する。(Ej)

古代の酵素 (Ancient enzymes)

祖先遺伝子のDNA配列は予測可能であるが、タンパク生成物の酵素機能はそうはいか ない。Chandrasekharanたち(p.502)は現存のチマーゼ(extant chymase)遺伝子配列を 使って酵素の祖先の形を予測し、その酵素を発現させ、アンジオテンシンIをアンジ オテンシンIIに変換させる反応を速度論的に解析した。祖先形はこの反応に極めて特異 的か つ効率的である。実際、現代のいくつかのチマーゼは、この祖先形よりも基質特異性 が少ない。(Ej)

G型肝炎ウイルス (Hapatitis G virus)

ある種の肝炎においては病因となるウイルスが知られておらず、このことから、まだ 同定されていない肝炎ウイルスがいくつかあることが推察される。Linnenたち(p.505 )は、C型肝炎にも感染している患者からの免疫反応性相補的DNAクローンを解析する ことで、G型肝炎ウイルス(HGV)であるRNAウイルスを同定した。HGVの病因はまだ同 定されてないが、これは急性肝炎にも慢性肝炎にも関係しており、血液供給者の中に 存在している。(Ej)

過剰活性の酵素 (Overactive enzyme)

家族性筋萎縮外硬化症(FALS)患者の約20ー25%は、銅-亜鉛スーパーオキシドジ スムターゼ(過酸化物不均化酵素)(CuZnSOD)をコードする遺伝子の中に突然変異を 持っている。Wiedau-Pazosたち(p.515;およびMarxによるニュース解説参照p.446)が 示したところによると、突然変異体CuZnSODは、野生型のモデル基質の酸化触媒作用 よりも活性が高い。そして、この強化された活性は銅キレート剤で阻害される。FALS の細胞培養モデルでは、銅キレート剤が、CuZnSODの突然変異体によって起こされた 細胞死を阻害した。 CuZnSOD突然変異体によって触媒される異常酸化反応は、FALS内の神経病理的変化の 元になっており、銅キレート剤は、あるFALS患者には治療的価値があるかも知れない。( Ej)

アポトーシスとの関係 (Apoptosis links)

典型的にはアポトーシスによって起こされるプログラム化された細胞死(PCD)は、多 細胞生物には正常な機能である。しかし、非制御なPCDは、神経性変調疾患や癌と言 った様々な疾患を来す。いくつかの研究が示唆するところによれば、Ca2+がアポトー シスの中で役割を演じているらしい。Vitoたち(p.521)は、アポトーシスを仲介するA LG-2とALG-3と言う2つの遺伝子を同定できる選別システムを開発した。ALG-2遺伝子 は、いくつかのアポトーシス経路に必要なCa2+結合タンパク質をコードし、ALG-3遺 伝子は、アルツハイマー病遺伝子STM2に相同である。(Ej)
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