AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science January 19, 1996


超伝導材料の対称性 (Superconductor symmetry)

銅の酸化物超伝導体におけるペア対称性を決定する実験は、強くd波におけるペア対称 性を示唆し ているが、しかし、s波状態の可能性を否定するものではない。 Tsuei et al. (p. 329 ; Cleryに よる表紙と解説を参照のことp. 288)は、タリウム−バリウム・銅酸化物の3重に結晶化 したフィル ムにおけるペア対称性を決定した。彼らは、自発磁化の半整数量子フラックスを、3つ のグレイン の交点に置いてのみ観測した。この結果は、 dx2-y2対称性とつじつまのあうものである 。(Wt)

海水の変化 (Sea change)

地中海はほかの大洋と同様に垂直な温度と塩分による(熱塩)対流がある。アドリ ア海では、深水は少なくとも今世紀の初めに形成された。Ruetherたち(p.333)による 最近の調査報告によれば、このパターンが1987年以降変わった。エーゲ海の深水は現 在新たに形成されつつあるが、これは表面水の塩分濃度が上昇したためと思われる。(Ej )

導きの光 (Leading lights)

非線形光学特性の一つである電気光学効果を示す材料は、それらの屈折率を印加された 電界に応じて変 化させ、光ファイバーネットワークにおける信号の処理に用いることができる。 Ahlhei m et al.(p. 335)は、強い電子吸引性のアクセプターを有する、共役なドナー−アクセプター発色体 を含む高分子を 合成した。発色体を整列する過程の後には、これらの材料の一つは、1.3μmにおいてリ チウムナイオ ベイトの2倍の電気光学係数を持っていた。この波長は、通信にて用いられる波長であ る。(Wt)

銀河の形 (Galactic shapes)

天文学者は、遠い天体の2次元的なイメージを作ることができるだけで、この過程では 、形の情報の多 くを失ってしまう。楕円銀河は、それらは偏円、偏長あるいは3軸異なる事がありうる ため、特別の挑 戦課題となっている。 Merritt (p. 337)は楕円銀河中で、星の軌道がどうなるかをモデ ル化し、カオ ス的軌道は3軸異なる平衡へ向かう進化を妨げることを見出した。その様な銀河の多く は、偏長または 偏円である軸対称系らしい。(Wt)

フロンの分解 (CFC destruction)

クロロフルオロカーボン(CFC)は回収されて、より環境に優しい代替物に替えられて いるが、問題はこの回収された不活性なガスをどのように処理するかだ。Burdeniuc と Crabtree(p.340)は、CFCを蓚酸ナトリウム(Na2C2O4)の熱床の上を通して、これら を塩(NaCl,NaF)、炭素、そして炭酸ガス(CO2)に変換することをしめしている。同様な プロセスによって、飽和フロロカーボンは芳香族に変わる。(Ej)

体内の補佐剤 (Adjuvant internal)

抗体のように獲得された免疫応答生成物は、しばしば食作用(phagocytosis)の様な生 来の免疫メカニズムを増強することによって効果を発揮する。Dempseyたち(p.348)の 報告によると、C3dの補体成分(complement component) C3d はアジュバント(補佐剤 )の様に作用する--これがタンパク質抗原に付くことで、抗体の応答性が最大10,000 倍に増強される。この発見はペプチドやタンパク質ワクチン開発に有用であることが 分かるであろう。(Ej)

Madのような抑制 (Suppressing like Mad)

ヒト膵臓癌の約90%で染色体18qに対立遺伝子の欠失が観察されるが、この知見は腫瘍 抑制遺伝子の存在を強く示唆する。Hahnたち(p.350; O'Braienによる ニュース解説参照、p.294)は、かなりの割合の膵臓癌で欠失または突然変異を起こ している18q21.1に抑制遺伝子の強力な候補となるものを同定した。(膵臓癌での欠 失の原因である)DPC4遺伝子はショウジョウバエのMad遺伝子と配列が似ており、Mad 遺伝子の突然変異は中腸の形態、成虫盤の発達、および背部-腹部のパターン化に異 常を生じる。Mad遺伝子はトランスフォーミング増殖因子-β様のシグナル伝達経路に 関与している。(Ej)

パターンを制する (Putting down patterns)

骨形態発生タンパク質(BMP)は哺乳動物の軟骨と骨の形成を誘導する。BMP-1は金属 プロテイナーゼ活性をもち、ショウジョウバエの形態発生パターン化を制御するタン パク質と似ている。Kesslerたち(p.360)は、ヒトBMP-1がプロコラーゲンC-プロテ イナーゼ(PCP)と同一のものであることを報告している。PCPはプロコラーゲンを切 断してコラーゲン原繊維を形成するモノマーに変える酵素である。 BMP-1はトランスフォーミング増殖因子-βファミリーのメンバーであるその他のBMP を活性化する役割を果たすと推定されているが、これに加えてBMP-1は細胞外マトリ ックスの蓄積を制御することによってパターン形成に影響を及ぼすのかも知れない。(Ej )

エンドサイトーシス・アダプター (Endocytosis adaptor)

ある種の受容体はリガンドと結合した後インターナライズされる。β2-アドレナリン 受容体(β2AR)の場合、これはシグナル伝達に関わっている受容体ファミリーの1つ であるが、 リガンドとの結合によって、受容体が引き続きシグナル伝達するのを不活性化するか ら、受容体を再活性化するにはインターナリゼーションが起きなければならない。Fe rgusonたち(p.363)は、このプロセスの中で、β2ARと相互作用するタンパク質である β-アレスチンの役目を調べた。このタンパク質はこの反応に欠失している突然変異体 受容体のインターナリゼーションと再活性化を刺激する。従って、エンドサイトーシ ス機構の構成要素でない細胞質ゾルタンパク質は、インターナリゼーシ ョンを特異的に調節することが出来る。(Ej)

亜鉛とてんかん (Zinc and epilepsy)

脳の中で、神経細胞の興奮と抑止は注意深く均衡を保ってなければならない。抑止効 果が少ないと過度興奮やてんかんとなる。逆説的であるが、側頭葉てんかんの動物モ デルに於て、ガンマアミノブチル酸(γ-aminobutyric acid=GABA)受容体によって仲 介された抑止は減少するどころか、増加したように見える。Buhlたち(p.369)は、こ のGABA受容体は正常な動物からのものに比べてより亜鉛に感受性であることを見つけ た。亜鉛は、もし亜鉛が存在しなければ側頭葉のGABA受容体によって仲介される神経 伝達の抑止を増加させる働きを止めることが出来る。亜鉛はまた、てんかん症患者の 脳から見つかった樹状繊維の中に放出されている。(Ej)
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