AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science January 12, 1996


火星の形 ( The shape of Mars)

火星の表面では、南半球に比べ、北半球では地勢は若く、クレー ターも激しくできてはおらず、また、全 体として高度が低いのはなぜだろうか?可能な説明は、部分的 なマグマの大洋かあるいは内部マントル過 程を産み出すような、広範囲な北半球における衝撃によるとする ものである。 Smith and Zuber (p. 184; 表紙も参照のこと)は掩蔽(天体が、他の天体の影に隠れて地球 から見えなくなること)のデータを再解析 し、これらの結果とより最近の地球をベースとするレーダー測定 とを組み合わせた。彼らは、観測される 広大な半球規模の地勢変化は、火星の重心と形状の中心との3km のずれによるものと結論している。(Wt)

2次にむけて設計する (Designed to second order)

多くの無機および有機光学材料は、入射光の周波数を2倍にすること に用いることができる。これらの材料においては、結晶や分子の構造 が非対称であり、このため電子は入射光に応じて分極波を作り出し、 この波はより高い高調波として振動する。 Rosencher et al. (p. 168)は、非対称なポテンシャルを作る別の方法についてレビューして いる。ヘテロジャンクションの量子井戸は、半導体のエピタキシー技 術により、井戸が非対称になるように形成することができる。これら の構造は、大きな非線形性を産み出すことができ、新しい光学デバイ スを創造する可能性がある。(Wt)

分子を押し入れる (Push into place)

室温で走査型トンネル顕微鏡を使い、金属表面に分子でパターンを形成することは行 われてきた。Jungたち(p.181)は平面状の芳香族の核に大きな炭化水素基を結合させ 、熱拡散から分子を安定化させた。この分子と表面の相互作用はそれほど強くなく、 従ってプローブの先端で分子を制御しながら移動させることができる。(Ej)

高さを保持する (Sustaining a height)

船や氷山が、その排水によって浮かんでいるように、地球の多くの山脈は、マントル にまで達する地殻物質の根によって支えられているように見える。Wernickeたち(p.1 90)は、最新の地球物理学的、地球化学的データを示して、カリフォルニアの南シエ ラネバダは上記のような厚い地殻の根を欠いている可能性をほのめかしている。デー タによればマントルの密度の変化が高高度を支えており、過去数百万年間、山脈は沈 みつつあるのかも知れないことを示唆している。(Ej)

古代の水路 (Ancient waterways)

陸上植物そして被子植物の進化の鍵となるステップは、植物を貫通して水を通してい る穴の開いた細胞である導管の発達である。Liたち(p.188)は、被子植物の発生より 何百万年も遡る、今から2億6千万年前の二畳紀末期から、化石化した導管の発見を 伝えている。化石の茎は蔓植物の茎に似ており、大きな葉を持つ二畳紀植物のGigant opteridalesのものであろう。(Ej)

胸腺のリガンド (Thymic legand)

T細胞前駆体は胸腺に移動する前に骨髄に発生する。そこでは胸腺細胞として分裂、 成熟、そして選択を経る。その結果出てくる胸細胞は「シングルポジティブ」 (すなわち、CD4+か、またはCD8+のいずれか)T細胞である。殆ど理解されてないが、 重要な初期の胸腺内の出来事は「ダブルネガティブ」(CD4-CD8-)から「ダブルポジテ ィブ」(CD4+CD8+)胸腺細胞への分化である。Boismenuたち(p.198)は、胎胸腺外皮質で発 現さ れる分子であるCD81は、ダブルポジティブ胸腺細胞の発生に不可欠であることを示し た。CD81とpre-T細胞受容体(pre-TCR)によって促進される発生効果の類似性から、CD 81はpre-TCRのリガンドであることをほのめかしている。(Ej)

御馳走か、それとも飢餓か? (Feast or famine)

酵母にリン酸塩がなくなると、PHO4 転写因子は、分泌された酸性フォスフォターゼ であるPHO5の転写を誘発する。リン酸塩が豊富な倍地で酵母が成長したときにはPHO5 の転写は抑制される。O'Neillたち(p.209)はPHO4活性の制御を調べ、PHO4の細胞局在 が制御されていることを見つけた。即ち、酵母がリン酸塩に飢えている時にはPHO4は 核に、酵母がリン酸塩の豊富な培地で成長する時は細胞質になる。PHO4の局在化は、 PHO80/PHO85サイクリン-CDKキナーゼ複合体によるリン酸化反応に依存している。(Ej)

睡眠回路構成 (Sleep circuitry)

眠りに落ちるということはある時はいともたやすく、そしてある時には難しい。しか し、この神経細胞的メカニズムは明らかにされてなかったし、その回路構成もよくは 分からなかった。Sherinたち(p.216)は、ラットの視床下部の腹側外側視束前部(vent rolateral preoptic =VLPO )領域に存在する一群の細胞を同定した。この細胞は、睡 眠時間に比例して活性化し、日周明暗サイクルとは関係ない。更に、これら細胞は、 覚醒に関与していると言われている後部視床下部領域に関係している。このことは、 VLPO細胞が活性化したとき、覚醒促進神経細胞を抑止しているのかも知れない。これ らの発見は、VLPO領域の損傷が不眠を起こすと同時に、また、睡眠にも関与している 回路構成を描写する助けにもなった以前の発見を説明している。(Ej)

マラリアの解毒機構 (Malaria detox)

マラリアの一生の内の一定期間、マラリア寄生体は赤血球内部に存在する。寄生体は生 き 延びるためにはヘム(heme)を解毒しなければならぬが、そのためにこれを重合して不 溶性結晶のヘモゾインを作ることで達成している。この重合プロセスは一旦始まると 自発的に続くが、何がこのプロセスのきっかけになるのであろうか? Sullivanたち (p.219)の提案による一つの可能性はヒスチジンに富むタンパク質(histidinerich prote ins =HRP)を原因とするものである。精製した組み替えHRP IIと、組み替えHRP IIIは ヘムポリメラーゼ活性を持っている。更に、HRP II と HRP IV は消化液胞に局在してい る。H RPが治療の仲介者として新たな候補者であるにしても、基本的な機能は通常重複して持 っている ので、寄生体は更に別の解毒戦略を持っているかも知れない。(Ej)
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