AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science November 17, 1995


整流電流を再生 (Recovering a rectifying current)

アデノシン3燐酸(ATP)に感受性のK+電流は、細胞の代謝活動を細胞膜を隔てて保たれ ている電位に関連付けられている。すい臓のβ細胞に於て、ATPに感受性K+チャンネ ルはインシュリンの分泌の制御を助けると同時に、スルフォニル尿酸の標的でもある 。ここにスルフォニル尿酸は非インシュリン依存性糖尿病を治療する薬剤である。In agakiたち(p.1166; およびPhillipsonによる解説p.1159)はロランスフェクトした細胞内でスル フォニル尿酸受容体によって再構成される内向整流性K+チャンネルファミリーの1つをクローン化し た。これは、自然のβ細胞のと同様な、ATPに感受性K+電流である。

ガラスを通して直接に (Through a glass directly)

ガラスはアモルファスであるから、散乱法によって原子位置を決定する場合は半径方 向に平均化した原子間距離(動径平均値)しか得られない;従って、構造を得るため に巨視的なモデルやコンピュータシミュレーションが使われてきた。Van Blaaderen とWiltzius(p.1177)は蛍光シリカコロイドを用意し、これを急冷してガラスを作り、 共焦点光学顕微鏡による対象物の薄片的観察方法によって構造を決定した。その構造 は従来の理論的モデルとよく一致していた。また相関距離(原子間距離) にゆらぎの証拠は見つからなかった。

ナノチューブ電子銃 (Nanotube electron gun)

表面に垂直に配置されたカーボンナノチュープのフィルムが、薄い電子源(厚さ1mm以下)を作るために用い られた。これは、平面パネルディスプレイへの応用に用いられる可能性がある。 De Heerたち(p.1179; Serviceによる記事を見ること, p1119)は、整列させたナノチュープのフィルムの上に陽極として、薄い銅 のグリッドを配置し、数百ボルトの範囲のバイアスに対して、0.1から100mAの電子放出電流を得ることが できることが判った。そのデバイスは、空気中で安定であり、原理的には大きな面積まで拡大することが できる。

超格子の捕獲 (Superlattice trap)

層ごとのエピタキシャル成長は、一時に一層ごとの堆積を制御するためにしばしば用いられる。これは、 複雑な電子デバイスを作るための不均一構造を作成するものである。 Noh たち (p.1181; Parkinsonによる 概括を参照のこと, p.1157)は、別の層の成長方法を記述している。基本原子層は低温で堆積され、そし て、反応生成物の超格子を作るために高温で反応させる。それらは、運動の制御されたプロセス中で、 NbSe2 と TiSe2の層状構造を取り込んだ。このプロセスに固有の高温アニーリングは欠陥を減少させることが でき、これによってデバイスの質を改善しうるものである。

金属に飢えたマントル (Metal-loving mantle)

多種類の親鉄元素(siderophile)の上部マントル内の推定量は大きすぎる、つまり地 球の進化モデルをより複雑化するか、あるいは、異なった実験条件のもとに分配係数 を再計算する必要がある。WalterとThibault(p.1186)は、圧力、温度、酸素フガシテ ィーが一定の実験条件で珪酸塩成分可変の効果を考え、2つの穏やかな親鉄元素であ るMo(6+)とW(6+)について上記の再計算を行った。それによれば、Si/Mg比が低い状態 で解重合珪酸塩が多く溶けると、さらに多くのMo(6+)とW(6+)を保持することが出来 、それが上部マントルのMoやWが見かけ上多過ぎることの、解答の一つと思われる。

腸の病気 (Bowel disease)

カドヘリンは細胞膜貫通性の糖タンパク質で細胞接着の鍵となる仲介物質である。小腸 におけるカドヘリンの役割を調べるため、HermistonとGordon(p.1203)は、腸上皮細 胞の一部に陰性のカドヘリン突然変異体を発現しているマウスを調べた。このマウス は炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease=IBD)を起こし、これはCrohn症に似て いると同時に、腸腺腫にも似ている。これらの結果は、腸の健康に於て上皮の機能と しての障壁の重要性を強調しており、IBDの病因の鍵を与えるであろう。

不必要な援助者はクビ (Firing unwanted help)

目のようなある種の器官は免疫システムの炎症反応によって無用になる恐れがある。 Griffithたち(p.1189;およびStreilenによる解説p.1158)によれば、目は 免疫細胞の侵入を抑えるために、Fas(CD95)-Fasリガンド(FasL) の相互作用を利用する。FasL の目 の中での発現は、Fas 受容体を通じてアポトシス(apoptosis)を誘発し、免疫システ ム細胞に発現する。

HIVとSIVのくすり (Drugs for HIV and SIV disease)

2つの報告書がヒトと類人猿の免疫不全ウイルスの複製と戦う薬について特集してい る。Riceたち(p.1194)はHIV-1の、高度に保存された構造モチーフ,ヌクレオキャ プシドタンパク質のジンク(亜鉛)フィンガーに焦点を当ててきた。ジスルフィド 置換(二硫化物で置換)ベン ズアミドは、亜鉛がもはや結合できなくなり、その結果ウイルスの感染性が無くなるようにシ ステインチオレイトを修飾することが出来る。彼らは、細胞アッセイ (検定)において、他の抗ウイルス性薬剤といっしょにしてもよく効き、耐性のある突 然変異体を誘発しないように見える無毒性化合物を同定した。Tsaiたち(p.1197; お よびCohenによるニュース解説p.1121)は、アカゲザルのSIV感染を防いだ薬剤を同定 した。非環状リン酸ヌクレオシドPMPAがSIVに晒される2日前か、または晒された後 1日以内に与えられ、その後は4週間毎日与えられた。アカゲザル対照群と異なり、 感染は無かった。

信号遮断 (Signal shutoff)

T細胞のヘルパー細胞の2つのサブセットであるT(H)1とT(H)2は、それぞれ、インタ ーロイキン12とインターフェロンγ(IFN-γ)に特異的に応答することで両者は異なっているが 、その他のサイトカインに対してはそうではない。Bachたち(p.1215)はこの無反応性 は本来分化に直接結び付いたものではなく、むしろサイトカインに対する細胞の応答 に関連している。T(H)1を生成している間、シグナル伝達に利用されるIFN-γ 受容 体βサブユニットの発現を抑止するIFN-γが作られる。しかし、このようなβサブユ ニットの欠損は、IFN-γで処理されたT(H)2細胞でも起きる。両方のサブセットとも リガンドに結合しているα鎖を保持している。サイトカインによる受容体のシグナル 成分のダウンレギュレーション(作用物質による受容体数の負の調節)が無反応状態 を作った。
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