AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science November 10, 1995


リンパ球の恒常性 (Lymphocyte homeostasis)

免疫反応は適正な抗原特異性を持つ少量のリンパ球の選択と大量増殖に依存している 引き続いて生じる応答の下方調節 (down-modulation of the response) によって、大量の活性化リンパ球の生成を阻止する。活性化と異なり、下方調節 の理解は分子解析では手に負えなかった。今や、Waterhouseたち(p.985;All isonによる解説,p.932)によると、T細胞表面のCTLA-4分子が負の制御に決定的な役 割を果していると推察している。CTLA-4を欠くマウスはひどいリンパ増殖異常を患 い、生後数週間以内に死亡する。すなわち、これらの動物のT細胞は自発的に増殖す る。さらに面白いことにCTLA-4は、刺激に関与していると言われている表面受容体CD 28と相同の配列を持つ。

プレートで遊ぶ (Play at the plates)

地質学的な出来事や特徴の原因を解釈する上でプレートの拡大している淵(リッジ) における詳細な磁気異常から、プレートの動きを復元することは極めて重要である。 多くのプレートの動きを復元する鍵となる領域は南太平洋にあり、ここでは南極プレ ートと太平洋プレートが広がっている。Candeたち(p.947)は、この今までほとんど調 査されてない地域での磁気異常を解析し、過去6500万年間のこれらのプレートの広がっ ていく歴史を復元した。太平洋プレートと南極プレートの相対的な動きのうち大きな 変化は600万年前に起きた。

チューンアップと調整 (Tune-up and alignment)

強い2次非線形反応を示す有機分子は、光学や電子への応用が期待されている。この 反応は分子固有の性質だけに依存しているのではなく、物質中での特殊な分子配列に も依存している。Kauranenたち(p.966)は、有機分子を螺旋の骨格にくっつけること によって、望みの配列にさせることが出来た。この超分子的手法は物質の非線形反応 を増強し、他の化合物の2次非線形反応を最適化するのに役立つであろう。

プラスチック オシレータ (Plastic oscillator)

ポリマーのトランジスターや論理回路は大量生産の安価な電子応用機器には望ましい が、実用品を作るためには、その信頼性はシリコンと同程度でなければならぬ。Brow nたち(p.972)はポリマーの電界効果型トランジスターを開発した。これは、より複雑 な回路をつくるのに必要な電圧増幅作用を持つ。複合ポリマーの溶液処理によって製 造を可能にした。5段のリングオシレーターを作ることで、ポリマートランジスター が連続するゲートを駆動できることを示している。

PCB処理 (PCB processing)

ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、いったん環境中に放出されると、長寿命の汚染物質 になりうる。これらの安定な芳香族化合物に2つの水酸基グループを加え、修飾した芳香環 を分割することで、ある種の微生物はこれを分解し、より生物分解を容易にする生成物を作る ことができる。Hanたち(p.976)は、この分割反応を触媒する金属酵素の結晶構造を示 した。これは、修飾したPCBを鉄原子で配位し、塩素化された基質であっても微生物に処理さ せる可能性を示している。

量より質 (Quality, not quantity)

詳細な細胞分裂パターンが発達中の細胞の運命を決定するのかも知れない。細胞の 正当な運命を確保するために必要な、決定基(determinants)が適正に分布されなければなら ないが、そのために細胞分裂が必要なように見える。De NooijとHariharanは(p.983; Roughによるニュース解説p.916)、ショウジョウバエの目が正当な運命を持つために 2次分裂波の必要条件を調べた。2次分裂波をヒトサイクリン依存性キナーゼ阻害剤 p21による発現で防いだ後、適当数の前駆細胞がないにもかかわらず、各々の細胞型 は特異化されたままになっている。このことから、目の中での正常な細胞分裂と、細 胞の運命は関連してないようだ。

良性HIV-1株 (Benign HIV-1 strain)

すべてのHIV-1株が免疫不全を起こすわけではない。Deacon たち(p.988;およびCohen によるニュース解説p.917)は血液提供者からのHIV-1と、感染しているにもかかわら ず10年から14年間もHIVを発病してない6人の受血者のHIV-1を配列決定した。その結 果、nef遺伝子と、ロングターミナルリピート(Long-terminal repeat)のU3領域に欠 落が見つかった。病気の進行が無いのはホストの免疫系原因があるのではなくウイル ス自身に原因があ、と見られるので、この様なHIV株を生ワクチンとして利用できる 可能性がある。

DNA転写の原点がシフト (Shifting origins of replication)

ある種のウイルスゲノムでは、DNA複製の起源(起点)は特定のDNA配列によっ て決められている。しかし、より高等生物においてはDNA複写の起源定義は素直には いかない。Hyrienたち(p.994)は、アフリカツメガエルのリボゾームRNA遺伝子の研究 をしているとき、核DNA複製開始点は、細胞の発生段階によって調節されるらしいこ とを示した。発生初期は、胚はほとんど転写を行わないで急速な細胞分裂を繰り返す 時期であり、リボゾームRNA遺伝子クラスター内でのDNA複製は特定のRNA配列によら ずに開始する。しかし、胞胚(blastula)中期トランジションの後は複製開始位置は遺 伝子間リボゾームDNAスペーサーに限定される。

衝突を避ける昆虫の飛行 (Low impact insect flight)

動物の飛行には、移動する力だけでなく対象物を見つけたり天敵から逃れる能力が必 要である。では例えばどうやって昆虫は、大きさや速度が異なって近付いてくる対象物との衝突を避 けているのだろうか? Hatsopoulos たち(p.1000)は、バッタが対象物の視角の逆指 数関数に比例して角加速度を増加させる、視覚神経による計算の解析結果を示した( 即ち、目から物体を見込む角度の増加加速度をパラメータとして利用する:訳者注)。この関 数は物体に近付くに従って増加するが、衝突の前に最大値に達するから、衝突を避け る十分な時間がある。

プラックホールの衝突の幾何学 ( Geometry of a Black Hole Collision)

Richard A. Matzner, H. E. Seidel, Stuart L. Shapiro, L. Smarr, W.-M.Suen, Saul A. Teukolsy, J. Winicour p.941

一般相対性理論におけるEinsteinの方程式を数値的に解くことにより、ブラックホールの衝突 と結果として生ずる重力波輻射について研究するために、プラックホールの連星系を形成した 。正面衝突におけるプラックホール表面の位置が詳細に決定され、ここではそれについて記述 されている。明らかになった幾何的な特徴が、重力相互作用しているブラックホール領域に内 在する時空の曲率の点からの解析と説明とともに、与えられている。この曲率は、ブラックホ ール表面に付随する事象の地平の形成と進化において、直接的で重要な、かつ、解析的に説明 可能な役割を演じている。

磁場により誘起される一次相転移 (A First-Order Phase Transition Induced by a Magnetic Field)

H. Kuwahara, Y. Tomioka, A. Asamitsu, Y. Morimoto, Y. Tokura p.961

外部磁場により発生する電子的な一次相転移(金属から絶縁体へ)を、Nd1/2Sr1/2MnO3におい て発見した。ある定まった温度において、外部磁場の増加と減少の間に、明瞭な履歴が観察さ れた。履歴現象領域は、温度に精密に依存し、また、温度の減少とともに激烈に拡大すること が認められた。これは恐らくは、一次相転移に対する熱的揺らぎ効果の抑止の結果であろう。 この現象は滅多にはみられないものの、これは絶対温度0度近傍の低温における一次相転移の 一般的な特徴と考えられる。
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