AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


[インデックス] [前の号] [次の号]

・・・
Science November 3, 1995


日周期性の制御 (Control of circadian rithms)

ショウジョウバエ(drosophila)の日周期性にとって無周期(timeless=tim)と周期(per iod=per)の両方の遺伝子が必要である。3つの報告とニューズ解説(Barinaga, p.732 )がこのtim遺伝子の研究の進展について述べている。Myersたち(p.805)はtimをクローン 化 し、配列を決めた。Sehgalたち(p.808)はtim RNA がperRNAと同じパターンで日周期 性を発現していることを見つけた。この発現はPERやTIMタンパク質の存在とは独立で ある。Gekakisたち(p.811)は、PERとTIMの相互作用はPER中のPAS二量化領域によるもの であり、この相互作用は、日周期性に変化を起こす突然変異において乱されること を見つけた。このことからPER-TIM相互作用は日周期サイクルの一部の長さを制御し ていることが推測される。

すべて押し上げられて (All pumped up)

多孔性シリコンはシリコンのバルクや表面からの放射に比べてフォトルミネッセン スの放射効率が良い。この高い効率の放射を可能にするからくりは微細結晶状態や励 起への量子的束縛や表面の化学成分によるものらしい。Chinたち(p.776)は、陽イオ ンエッチングされたシリコンを多数の赤外フォトンで励起して得られたフォトルミネ センスを計測した。その結果、フォトンの周波数が表面に存在するSiHxの振動周波数 に合致する場合のみ、励起が有効であることが分かった。これから著者は、ルミネッ センスは振動の梯子を通じて電子的励起を生じさせた結果であり、表面状態が中心的 役割を演じていると結論している。

炭素の貯蔵所 (Carbon sink)

炭素の収支を推測すると、人類が生み出してきた炭素(2酸化炭素)の貯蔵場所とし て森林は重要な役割を果しているように見えるが、その重要度合や、個々の森林の寄 与の度合を決めることは難しかった。Graceたち(p.778)はブラジルの処女熱帯森で、 雨期乾期を通じての炭素の移動量を計測した。その結果、この森の生態系は両シーズ ンを通じて、正味の2酸化炭素貯蔵所として機能していることが示された。

傾斜した結晶 (Tilted crystals)

強誘電性液晶は外部電場の変化に素早く反応するためコンピュータの表示や電気光学 的装置などの工学的応用に関心が持たれてきた。これらの物質は自発電気分極を示す ため特別に興味を持たれてきたが、分極の原因はよく分かってない。PhotinosとSamu lski(p.783)は、分子の詰合せ方(パッキング)の制約によって分極が起きるのでは ないか、と報告している。このような整列の原因や意味を理解することで異なった成 分による影響を研究したり、その結果より良い強誘電性液晶装置を設計することが可 能になるだろう。

場所をわきまえて (In the wrong place)

BRCA1は遺伝性の乳癌や卵巣癌に関係するタンパク質であるが、この配列は既知のタンパ ク質 の配列とある程度類似しているに過ぎない。そのためこの細胞の機能はハッキリしな いままであった。Chenたち(p.789)によると、正常な乳房の上皮細胞において、BRCA1 は核の中に局在しているが、多くの乳癌細胞系や乳癌患者の悪性胸膜浸出液では主に細 胞質に局在している。これらの事から、BRCA1は細胞質の中で配置が不適当だと間接 的に不活性化されることを伺わせる。この不活性メカニズムは、遺伝性乳癌で起きる よりずっと少ない頻度で生じる遺伝子内突然変異を伴う散在性乳癌においてより一般 的に見られるであろう。

鎮痛みなし子オピオイド (Orphan opioid)

LC132として知られる Gタンパク結合受容体は視床下部において大量に発現する。Rei nscheidたち(p.792)は、LC132に結合する新規神経ペプチド(orphanin FQ)を同定した。L C 132の配列はオピオイド(鎮痛性)受容体の配列に類似しており、orphanin FQはオピ オピドペプチドに似ているが、後者はマウスの中で無痛覚(analgesia)をもたらさない ことが分かった。むしろ、移動活性を抑止し、痛みに対して過剰な反応を起こす ように見える。orphanin FQは、他のオピオイド族ペプチドとは異なる生理学的効果をも っている のかも知れない。

Jak3とリンパ球 (Jak3 and lymphoid cells)

トカイン受容体はキナーゼのJanus族(Jaks)を活性化することで部分的に細胞へ影響 を及ぼすと考えられている。Jaksは、Statsと言う名前で知られている転写因子をリ ン酸化し、活性化する。3つの報告が、いくつかのインターロイキン受容体族によっ て活性化されるJak3の、生物学的に決定的な役割について明らかにしている。Nosaka たち(p.800)とThomisたち(p.794)はJak3を欠くマウスについて述べている。このよう なマウスはB細胞やT細胞の数が少なく、T細胞やB細胞の機能に欠陥がある。Russ ellたち(p.797)はJak3を持たず、x染色体に関係し た重症の合併免疫不全をわずらうヒト患者について述べている。このことからJak3は リンパ球の正常な発展に不可欠であることがわかる。

あなたが見る最後の場所 (Last place you look)

「色」とか「ごちゃごちゃした注意を散乱させる物内部の動く割合」といった単一 の視覚特徴によって標的物を捕らえるに要する時間は、ほとんどこれら注意散乱物 の数には依存しない。しかし、両方の特徴を持つ 対象物を見つける場合は、注意散乱物の数に依存して時間がかかる。これは、特徴が増 え たために順番に処理する結果、時間が多く掛かったのだろうか。それとも並列処理は しているのだが、複雑さが増したため並列処理機能が低下するためであろうか?Corb ettaたち(p.802)は、2つの特徴を捜すことを課せられた被験者の大脳皮質の活性化 部位を同定する機能画像形成の研究結果を示した。これらの領域は、注意が空間的に 移動するときに活性化することで知られている領域に対応しており、どうも上記のよ うな課題は順番に(シリアルに)処理されているらしい。
[インデックス] [前の号] [次の号]


リコー
AbstractClub
ご意見ご質問は www-abs@src.ricoh.co.jp までお寄せ下さい。

お問合わせ
検  索


Copyright (C) 1995-1999 RICOH Co.,Ltd. All rights reserved.