AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science September 29, 1995


化学的振動反応をプログラムする (Programming of chemical oscillations)

複雑な化学の系が振動現象を示すことがある;化学的な波の進行が反応系の 不均一状態によって影響を受ける(例;BZ反応)。この現象は生物系におい て、その細胞の特性故に、特に重要である。Steinbockたち(p.1857)は、こ の化学的振動反応における、規則的あるいは不規則的な不均一性の効果を研 究するために、インクジェットプリンタを利用した。彼の方法はいろいろな 系へ応用することが可能で、波の伝達の大局的な振舞いがどのような局所的 な影響を受けているかを探求することを可能にする。

C-H結合の酸化 (Oxidizing C-H bonds)

酸化は、通常では不活性な炭素水素単結合(carbon hydrogen sigle bond)を 活性化する1つの方法である。Gardner and Mayer(p.1849;およびLabingerに よる解説記事p.1833)は、水や無機溶媒中の過マンガン酸塩イオンによる トルエンの酸化メカニズムを研究した。水中では、トルエンはH-種を搬送す るが,純粋のトルエン では、H原子が運ばれる。H-O結合生成エネルギー理論によって酸化 速度を予測し、金属酵素や酸化金属表面によるC-H結合の酸化を理解するのに 役立つであろう。

嫌われ者の旅行者 (Unwanted travelers)

リンデン(lindane=γBHC)やDDTのような有機塩素化合物 は殺虫剤として広く使われている。これらのいくつかは、カルシノ ーゲン(calcinogen)やエストロゲン(estrogen)と似た働きをする事 から、多くの国で使用を制限したり禁止使用としている。しかし、大気の運搬 により地球規模の分布が生じ、北極のような遠隔地にもこれら化合物の汚染が 起きている。Simonich and Hites(p.1851)は22種の有機塩素化合物について世 界中の樹木の皮のサンプルを分析し、その結果、化合物の蒸発のしやすさ が分布に関係していることを示した。このよう なデータは、有害物質の将来の使用制限に不可欠である。

弾性の画像化 (Elastic images)

物質中の局所機械的な反応のパターン化は波の伝達を理解する上で重要である が、このような方法はほとんど存在しなかった。Muthupillaiたち(p.1854)は、 磁気共鳴を使って、ゲル中の機械的励起に反応した変位量の空間的分布を定量 的に画像化することに成功した。この方法を使うと、組織サンプル の機械的性質の分布を地図化する事が出来る。この方法に よる解像度は200ナノメートル以下であり、超音波や医学的な画像作成に応用さ れるであろう。

選び抜かれて (Sorted out)

内在性膜タンパク質は、細胞質領域 (不可欠のチロシン残基を含む4ー6の残基の配列)にある シグナルを選別し最終目的地に標的を合わせる。Ohnoたち(p.1872)は、酵 母のtwo-hybrid法を用いて、チロシンに基づくシグナルと相互作用するタンパ ク質を得るために200万以上のクローンをスクリーニングした。クラスリン 関連の(clathrin-associate)中程度の鎖のタンパク質複合体(AP-1のμ1とAP-2 のμ2)は、内在性膜タンパク質のチロシンシグナルや独立したヘキサペプチド シグナルと特異的相互作用することがわかった。この中程度の鎖はクラスリン依 存性ソーティング装置中(clathrin-dependent sorting appatatus)のシグナル 結合成分(signal-binding components)として機能しているようだ。

毒性になくてはならぬ (Vital for virulence)

リーシュマニア原虫(Leishmania)は多宿主性の寄生虫だ:一生のある時期には 脊椎動物の血液中や組織の中で過ごすが、また別の時期には吸血非脊椎動物の 腸に住む。伝染サイクルは表面の複合糖質(glycoconjugate)、たとえばリポフ ォスフォグリカン(lipophosphoglycan=LPG)、によって制御され、この分子の発 現の制御には現在強い関心が持たれている。Descoteauxたち(p.1869)は、ゴル ジ膜タンパク質をコードする新規な遺伝子LPG2について報告 している。LPG2は細胞内区画化(compartmentalization)やLPGその他毒性に関す る複合糖質の組立てにのみに関わっている。酵母ではLPG2の相同体(homolog)が ゴルジの機能に一般に必要なので、これは進化の過程における特殊な活動を示すもので ある。

複製にフォーカス (Foci on replication)

真核細胞中で、DNAの複製はいろいろな核内部の場所から開始するが、この場所 の事をフォーカス(focus,foci;複数)と呼ぶ。このフォーカスは300から1000に及 ぶDNAループの集団を含んでいる。一本鎖DNA結合タンパ ク質RP-Aは、DNA複製の開始に必要であるが、複製開始に先だってフォ ーカスに会合(be associated)している。Yan and Newport(p.1883)は、RP-Aとフ ォーカスが会合するときに必要となる「フォーカス形成活性1」(focus-forming activity 1=FFA-1)と呼ばれるタンパク質を分離した。フォーカスの他の成分と 共同して、FFA-1はRP-Aのための結合サイトを作っているのであろう。

分子がほどける (Molecular foldout)

転写因子の ets 遺伝子ファミリーの構成メンバーはウイング付き (winged helix-turn-helix DNA-binding domain)領域を持っている。その中の多く のメンバー(ets)はDNA結合領域に影響を及ぼす阻害配列 によって負に制御されている。Petersenたち(p.1866)はEts-1のDNA結合時に 起きるコンフォメーション(立体配座,conformation)の変化を調べた。Ets-1の DNA結合領域の二次構造 はDNA存在下でも不変であったが、阻害領域のα螺旋はほどけてしまった。螺旋 がほどけることは転写因子制御の一つの手段を表している。特定のDNA配列であ っても、非特定の配列であってもどちらでもコンフォメーションを変えることが 出来、従って、認識に先立ってほどけたコンフォメーションのEts-1の選択が 行なわれる。

ICEを凍らせる (Freezing out ICE)

バキュロウイルス(baculovirus)にコードされたp35タンパク質は多細 胞生物の感染防御機構であるアポトシス(apoptosis=プログラム化された細胞 死)を阻止することができる。Bumpたち(p.1885)はp35の組替体(recombinant form)を使って、このタンパク質がインターロイキン-1β変換酵素(interleukin-1 β converting enzyme=ICE)とその3つの相同体のタンパク質分解活 性を止めることが出来ることを示した。この酵素はこの酵素自体のプロ体(proform=反 応 後の形) を切断することによって自触媒的に作用する。p35はアポトシスのいくつかの 経路を阻止できるからICEや それに関連するタンパク質はアポトシスの中心的な役割を演ずるかも知れない。
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