AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science September 15, 1995


南半球からの気候の信号(Climate signals from the Southern Hemisphere)

最後の氷河期の最大氷河時期とそれに続く氷河の退潮に関しては北半球で詳細な 記録が得られており、この時期、北半球ではYounger Dryasのような急激な気候の変動 も 知 られているが、南半球での影響の度合はあまり知られてない。両半球でのこの 出来事の比較、相関関係は氷河退潮の原因理解や地球の気候を制御する上に不可 欠である。Lowellたち(p.1541)は、氷河の前進と後退に関する詳細な放射性炭素 による年代測定データと、チリ、アンデスの同年代の動物相の変化データを示し た。更にニュージランドのデータを加え、その中で、全世界的と思われる氷河進 行は8回あり、それに同期して、何回かの短期間の大量海氷流出時期が北半球であった こ とを彼らは確認した。これらの気候変動は地域的なものではなく、地球規模の大 気の兆候を反映しているらしい。


今や両用(Both ways now)

チオフェンのオリゴマーで出来た有機の薄膜トランジスター(TFTs)は、いまでは 低価格、低消費電力の表示用素子として有力視されている。この素子は通常p-チ ャンネルのトランジスターとして働くが、Dodabalapurたち(p.1560)はp, n の両 方のモードで働く電界効果型素子を作った。これは、今までより寿命が長いだけ でなく消費電力も抑えるような構造になっている。p 型と n 型の物質としてそれ ぞれ、α-hexathienylene(α6T)とC60を使ったが、これ以外の物質でも可能である ことを指摘している。


炭素原子のワイヤ(Atomic carbon wires)

個々の炭素ナノチューブは低電圧で働く、電子の電界放射線源として働く。Rinzlerた ち(p.1550)は、レーザーによる蒸発、あるいは、酸化エッチング処理によって一端 を開いたナノチューブを作り、これが80ボルト以下のバイアス電圧で電界放射を することを見つけた。この放射には面白い現象がある:放射は炭素結合の2重壁で 囲まれたナノチューブそのものからではなく、2重になったチューブ壁をつないで いる炭素原子が存在する端点から、細い炭素原子ワイヤ(鎖)が伸びているらしい。 電界放射がこのワイヤを脱離する。


窒素を封じ込めた(Getting N to it)

非炭素原子をフラレーンの篭の中に封じ込めることによって、この物性を変え、有 機電子用材料や超電導物質を作れる可能性がある。窒素原子をC60やC70に取り込ませ た気相化合物の報告はなされているが、目的化合物だけを独立に取り出すことは難 しかった。Hummelenたち(p.1554)は、気相イオン化学をまね、液相で(C59N)2 を合 成した。


初期のリサイクルの努力(Early recycling efforts)

地球の初期数十億年、どのようにして大陸が出来、成長し、保持されて来たかはよ く分かってなく、議論の多いところである。主要大陸のコアに、初期の大陸の名残 りが始生代のクラトンとして保存されている。Bowring と Housh(p.1535)は、これ らのクラトンの同位体元素や月のサンプルの証拠から、大陸地殻のリサイクルは初 期大陸にとって重要であり、初期の大陸は拡大していったと推測している。


つがい行動の反応について(Following the mating response)

saccharomyces cerevisiae の受容体へのフェロモン結合は、タンパク質キナーゼ系 列を活性化するシグナル伝達経路を活性化する。同様な、マイトジェン活性化タン パク質(MAP)キナーゼのカスケードは、哺乳類細胞にシグナルを伝達する。 heterotrimeric グアニン ヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)のβγサブ ユニットは受容体に結合してMAPキナーゼ カスケードを活性化する。Whiteway たち(p.1572)はGタンパク質のβサブユニットは、Ste5p として知られている分子状 の骨格タンパク質に結合することを示した。Ste5pの特定の領域がMAPキナーゼカス ケードのいろいろな酵素に会合している。Ste5p結合を通じて、Gタンパク質がMAP キナーゼカスケードの他のタンパク質に局在化して会合していることが、活性化さ れた受容体からのシグナル伝達を可能にしているのかも知れない。


成長のチェック(A check on growth)

インテグリンは細胞外マトリックスに細胞を接着させたり、細胞内部のシグナル 伝達経路を活性化したりする。インテグリンβ1サブユニットは様々にスプライシング されたβ1c という形態で存在することが知られている。Meredith Jr. たち(p.1570)は、β1c は、β1サブユニットと異なる細胞内局在をしていると報告 している。β1cの発現は細胞分裂周期(cell cycle)を通じての細胞分裂の進行を阻 害する。この成長阻害効果は、β1cサブユニットの変化した細胞質領域による シグナル発生によって起きるらしい。


伝達の専門家(Transmission specialist)

数年前提案されたSNARE仮説によると、各標的になったものが融合する時に、融合 する2つの細胞膜はSNAREを持つ。このSNAREとは小胞(vesicle)と標的の細胞膜を 結合する融合受容体である。神経細胞の信号伝達が行われている間、神経小胞は 神経細胞原形質膜と融合する。Skehelたち(p.1580)は、標的細胞膜SNAREの一種で ある新奇なt-SNAREを同定したが、これは標的となる神経細胞の小胞が神経細胞原 形質膜と融合するための鍵となる成分であろうと思われる。このタンパク質はア メフラシの中枢神経系に限定されており、新しいt-SNAREを認識する抗体を前シプナス に 注入したら神経の伝達を阻害した。 


性差別を乗り越えて(Overcoming sex discrimination)

主要組織適合性(H)遺伝子座が適合する男性ドナーの器官や骨髄を移植される女性は、 男 性組織 に存在するわずかなH-Y抗体によって移植の拒絶反応が起きる。Wangたち(p.1588; ニュース記事p.1515)によれば、微細毛管液体クロマトグラフィーと電子(イオン化) 噴霧質量分析機を利用して、クラス1主組織適合性複合体分子HLA-B7によって提示され る されるヒトH-Y抗原を同定した。この11-残基からなる抗原は、Y染色体上の保存遺伝子 か ら得 られたタンパク質であるSMCYに由来し、これはX染色体上の同種SMCXと類似している。


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