AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science July 7, 1995


熱帯の氷の記録 (Ice records in the ropics)

後氷河期(LGS,15000年以上前)からの気候変動の記録は稀にしか存在しない。氷冠 は極地に比べて小さく掘削アイスコアが得られたとしてもせいぜい数千年に過ぎない。 Thompsonたちは(p.46,表紙、及び、p.32のMlotによる解説を参照)LGSに遡る掘削 アイスコアをPeruのHuascaranから採集した。氷の中の安定な同位元素変化は、熱帯 の大西洋がLGSのころ、現在よりも摂氏5ー6度低かったことを示している。


組立用格納庫 (Assembly hanger)

フェリチンタンパク(鉄を含むタンパク)は数千個の鉄原子を入れることの出来る大 きな空洞を持っている。Douglasたちは(p.54)この空洞を利用してナノスケールの硫 化鉄粒子を制御し、500と3000個の鉄原子からなる粒子を得た。その内、前者 は異常酸化状態を示した。


かき混ぜられないイオン (Unscrambling ions)

炭化水素は一般に不活性である。しかし、酸性の触媒中で陽子を付加すると高い活性 のカルボニウムイオンを形成する。最も単純な例はCH(5)+で、安定な平衡構造を持っ ていないように見える;すなわち、水素原子は常にかき混ぜられ、その結果振動スペ クトルは、このプロセスを何も見せてくれない。Booたちは(p.57)、このイオンとガ ス状態の中性水素分子で溶媒和を作るとCH(5)+が安定化することを見つけた。その結 果得られた振動スペクトルは分子の力学的シミュレーションでうまく説明できた。


設計者ペプチド (Designer peptides)

微生物はリボゾームペプチドの合成だけでなく大きなマルチドメインペプチド合成酵 素を利用していろいろな小さなペプチドを作ることが出来る。アシル化やグリコシル 化によって直線上、分岐状あるいは環状のペプチド構造にあらかじめ修飾しておいた アミノ酸をこの酵素がつなぐ。Stachelhausたちは(p.69)lipopetide surfactinを作 るバクテリアBacillus subtilisから得られる合成酵素を、Bacillus brevisや菌Peni cillium chrysogenumから得られる類似の合成酵素由来のドメインをコードする遺伝 子で置換することによって遺伝子操作した。


水中の信号 (Signals in the water)

断層上の滑り運動が地震の原因であるが断層帯の流体の圧力がこれをしばしば加速す ることがあるらしい。しかし、反対に地震の前触れとなる地核中の割れ目が極地的な 水利現象に影響を及ぼす。TsunogaiとWakita(p.60),およびIgarashiたちは(p.61, Ki ngたちによる展望p.38)によれば、以下のようないろいろな物理的信号が1995年 1月1 7日の神戸地震の前触れとして観測されたと言う。即ち、塩素の増加、硫酸塩、地下 水中のラドン濃度の増加が観測された。


STATs のスタート (Start of STATs)

沢山の成長因子とサイトカインはSTATsと言う転写因子を活性化して転写を制御する 。STATsはJaksと呼ばれるプロテインキナーゼによってチロシンをリン酸化すること で活性化される。STATsの活性化は癌タンパクの発現で悪性転換した細胞やウイルス によって感染された細胞中に観察される。Yuたちは(p.81)Srcチロシンキナーゼ癌タ ンパクによる細胞の悪性転換がStat3を活性化したことを見いだした。ヒトT細胞白 血病ウイルス1(HTLV-1)に感染した細胞は、成長するためにもはやinterleukin-2を 必要としない。Migoneたち(p.79)の報告によるとJak-STAT 信号経路はそのような細 胞の中で構成的要素で活性化されるという。サイトカインがない状態での成長促進信 号の活性化は、T細胞がHTLV-1で変化する機構の一部であるように見える。


変わるポンプ (Changing pumps)

Bacteriorhodopsin(bR)は光の刺激がある時細胞膜を通過して陽子を外側に押し出す 。同じタンパク質のHalorhodopsinは、光に反応して塩素イオンCl-を膜の内側に押し 入れる。Sasakiたちは(p.73)アスパルテートaspartate根基(配位置85)をbR中のトレ オニンで置換し、これを光に反応する塩素イオン搬送者に仕立てた。レチノール発色 団のスペクトル変化から突然変異のbRや野生のhalorhodopsinも同じメカニズムを利 用して塩素イオンを運んでいるのであろうと思われるし、発色団と根基85が基盤特 性をコントロールしているようだ。


活動的なつれあい (Active partners)

TATA結合タンパク質(TBP)は3つのRNAポリメラーゼ(Pols)の転写に不可欠である。St argellとStruhl(p.75)は、Pol I やPol III による生体中での転写では正常であるが 、酸性型の活性化タンパク質によって仲介されるPol II 転写を行うには欠点がある と思われる突然変異TBPを単離した。この突然変異TBPは普通の転写因子TFIIAとうま く相互作用しないことからTFIIAとTBPとの相互作用が生体内の酸性活性剤による転写 活性には必要であることが想像される。


部屋から部屋へ(Cell-to-cell cervice)

タンパク質は細胞膜から別の細胞膜へ移動することが出来るだろうか?Kooymanたち( p.89)によれば、少なくとも細胞膜に共有結合でくっついたglycosyl phosphatidylin ositol(GPI)には、この現象が起きている証拠を示した。トランスジェニックマウス の血球細胞のみで発現されるGPIがくっついたタンパク質は管内皮細胞の機能的なか たちに変換される。この様な変換が生理学的な機能として作用するか否かは良く分か らないが、タンパク質を管内皮細胞に変換する方法が治療に利用され得る可能性がある 。


成長すべき場所をわきまえて (Knowing where to grow)

ニューロン突起(軸索)は遠くにある目標物に向かって成長するすべを知っている。 しかし何がきっかけで成長が起きるかは良く分かってない。ほ乳類の目のニューロン 突起は目と反対側の脳の方向に伸び、視神経十字で互いに交差する。Sretavanたちは (p.98)免疫学的な方法を使ってマウスのニューロンが将来成長して視神経十字となる 部位から胚ニューロンを除去した。そうしたところ、軸索が脳の途中で交差しなくな ったことから、このような初期に生成されたニューロンは正常な発達に不可欠である ことが分かった。


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